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選び方と比較

ボイスレコーダー・ICレコーダー・ボイスメモ——言葉の違いと、選ぶときに効く違い

呼び名の違いは、ほとんどが歴史的な事情で中身に差はありません。一方で「AIレコーダー」だけは別物で、そこには実際の違いがあります。言葉の整理と、買うときに本当に見るべき4つの違いを分けて書きました。

録音する道具を探すと、呼び名がいくつも出てきます。ボイスレコーダー、ICレコーダー、ボイスメモ、ハンディレコーダー、リニアPCMレコーダー、AIレコーダー。このうち、中身が本当に違うのは1つだけです。残りはほとんど歴史と文脈の違いなので、まずそこを片づけます。

この記事の内容(18項目)
  1. ボイスレコーダーとICレコーダーの違い——呼び名の整理
  2. 4つの言葉の関係を、1枚に整理する
  3. 店頭とネットで、呼び名が変わる理由
  4. ICレコーダーは、形で3つに分かれます
  5. 「録音アプリ」という言葉も、ときどき見かけます
  6. 「文字起こし」という言葉も、2つの意味で使われています
  7. AIレコーダーだけが、構造的に別物です
  8. 買ってから気づく4つの差
  9. 「何時間録れるか」の数え方が、製品で違います
  10. 録音形式の呼び名も、整理しておきます
  11. モノラルとステレオも、呼び名の話です
  12. 英語での呼び名
  13. いま新品で買えるものは、減っています
  14. 買うときに本当に見る4つ
  15. 用途から逆算する
  16. スマートフォンで代用できる境目
  17. よくある混同を、一覧にします
  18. この記事から分かれる話

ボイスレコーダーとICレコーダーの違い——呼び名の整理

呼び名何を指すか
ボイスレコーダー音声を録る機械の一般名
ICレコーダー同じもの。テープ式と区別するために付いた名前
ボイスメモiPhoneに標準で入っているアプリの名前
ハンディレコーダー音楽・環境音向け。外部マイクをつなげるものが多い
リニアPCMレコーダー同じく音楽向け。非圧縮で録れることを示す呼び名
AIレコーダー録るだけでなく、文字起こしと要約まで担う

ボイスレコーダーとICレコーダーは、同じものです

いちばん多い疑問がここです。中身に決まった違いはありません。

「IC」は集積回路のことで、この呼び名はカセットテープに録る機械と区別するために付きました。テープではなく半導体のメモリに録る、という意味です。当時は意味のある区別でしたが、テープの製品がほとんど無くなったいまでは、同じものを2つの言葉で呼んでいる状態になっています。

家電量販店の売り場でも、メーカーによって表記が揺れています。製品を選ぶときに、この呼び名の差を気にする必要はありません。

メーカーが使っているカテゴリ名も、割れています

呼び名が揺れているのは売り場だけではありません。作っている側の分類も、メーカーによって違います。2026年9月3日時点の公式サイトで、カテゴリ名はこうなっています。

メーカー公式サイトのカテゴリ名
OM SYSTEMICレコーダー/リニアPCMレコーダー
ソニーICレコーダー/集音器

同じ「ICレコーダー」を先頭に置きながら、後ろに並べているものが違います。OM SYSTEMは音質の高い録音機を隣に置き、ソニーは録音しない道具を隣に置いている。

集音器は、録音のための機器ではありません。周りの音を大きくして聞き取りやすくする道具で、目的が「録る」ではなく「聞く」です。ソニーが同じカテゴリに並べているのは売り場の都合だと思われますが、検索の結果として混ざって出てくることがあります。「録音できる集音器」を探しているつもりで、録音機能の無い製品ページを読んでいることがあるので、仕様の「録音」の欄を先に見てください。

テープと区別する必要が、もう無くなりました

ICレコーダーという呼び名が生まれた背景を、もう少しだけ書きます。

かつて音声を録る道具はカセットテープを使うものでした。テープには物理的な制約があり、頭出しに時間がかかる、伸びる、繰り返し使うと劣化する。半導体のメモリに録る方式が出てきたとき、その違いを示す言葉が要りました。それが「IC」です。

いま、この区別は意味を失っています。テープの製品がほぼ無くなったので、わざわざ「ICのほう」と言う必要が無いからです。それでも呼び名が残っているのは、メーカーが製品名やカテゴリ名として長く使ってきたからで、中身の違いを示すものではありません。

同じことが「デジタルカメラ」にも起きました。フィルムと区別する必要があったから「デジタル」を付けたのであって、いまカメラと言えばデジタルです。呼び名は、それが新しかった時代の名残として残ります。

ボイスメモは、道具ではなくアプリの名前です

ボイスメモはiPhoneとiPadに標準で入っているアプリの名前です。つまり「ボイスメモはボイスレコーダーの一種」という関係になります。同じ位置づけのアプリはAndroidにもあり、Pixelでは「レコーダー」、Galaxyでは「ボイスレコーダー」という名前が付いています。

比較されることが多いのは、専用機を買うか、手元のスマートフォンで済ませるかという問いのほうです。判断の材料はiPhoneで足りるかどうかに、機種まで含めた選び方はボイスレコーダーはどれを買うかにまとめました。どの端末にも標準の録音機能が入っているので、比べる出発点はそこになります。

ハンディ/リニアPCMは、音楽向けです

ハンディレコーダーとリニアPCMレコーダーは、音楽の録音や環境音の収録を想定した製品群です。非圧縮の形式で録れること、外部マイクをつなげられること、入力のレベルを細かく調整できることが特徴になります。

会議の記録が目的なら、この性能はほとんど使いません。人の話し声を聞き取れる程度の音質があれば足りますし、非圧縮で録るとファイルが大きくなって扱いにくくなるだけです。楽器を録る用途があるなら別ですが、会議のために選ぶ理由はありません。

4つの言葉の関係を、1枚に整理する

ここまでの内容を、包含関係として描き直します。同じ階層にある言葉と、別の階層にある言葉を混ぜて比べていると、いつまでも迷います。

録音する道具の全般ボイスレコーダー=ICレコーダーその中の、iPhone標準アプリという1点ボイスメモは、道具の種類ではなく製品名録るだけでなく文字起こし・要約まで担う一群AIレコーダーは、機能で分かれた別の軸
4つの言葉は、実は2つの階層に分かれている。

「ボイスレコーダー」と「ICレコーダー」は、同じものを指す2つの呼び名です。呼び名が違うだけで、階層としては同じ場所にあります。「ボイスメモ」は、その中に含まれる1つの製品——iPhoneに標準で入っているアプリの名前——なので、範囲としては最も狭くなります。ボイスメモはボイスレコーダーの一種ですが、逆にボイスレコーダーと呼ばれる道具のすべてがボイスメモというわけではありません。

「AIレコーダー」だけは、この包含関係の外に立っています。録る・録らないという軸ではなく、録ったあとに何をするかという別の軸で分かれた呼び名だからです。従来型のICレコーダーもAIレコーダーも「録音する道具」という点では同じ階層にいますが、AIレコーダーは録音のあとにサーバーへ音声を送り、文字起こしと要約までを担います。ハンディレコーダーとリニアPCMレコーダーは、この2階層とはさらに別の軸——録る対象が人の声か音楽かという軸——で分かれた呼び名です。

したがって、買い物のときに立てるべき問いも自然と決まります。「録るだけの道具の中で、どの形が合うか」と「録ったあとの処理まで機械に任せるか」は、別々の質問です。呼び名を1つ選べば済むわけではなく、この2つの問いに順番に答えることで候補が絞れていきます。

店頭とネットで、呼び名が変わる理由

家電量販店の売り場を歩くと「ボイスレコーダー」の棚に「ICレコーダー」と書かれた製品が並び、値札のPOPには「録音機」と書いてあることもあります。検索窓に打ち込む言葉と、店頭で目にする言葉が違うと感じたことがあるなら、それは思い違いではありません。実際に、2つの経路で別々の言葉が定着しています。

店頭の分類は、メーカーが製品ラインアップに付けてきた名前をそのまま引き継いでいます。前に書いたとおり、OM SYSTEMは「ICレコーダー」、ソニーは「ICレコーダー/集音器」という表記を公式サイトで使っており、量販店のPOPやカテゴリ棚もこれに準じます。何十年も前からこの名前で売ってきた棚に、急に別の名前を付ける理由がメーカー側にはありません。

一方、検索する側の言葉は世代と目的で分かれます。長く「ICレコーダー」という言葉に触れてきた人はその言葉で検索し、スマートフォンから録音を覚えた人は「ボイスメモ」や「録音アプリ」で検索する、という傾向があります。加えて、AIによる文字起こしを先に知ってから録音の道具を探し始めた人は、最初から「AIレコーダー」でたどり着きます。同じ売り場、同じ検索エンジンの中に、世代や入り口の違う言葉が同時に存在しているということです。

このことが実務でどう効くかというと、自分がどちらの言葉で検索してきたかに関わらず、比べるべき製品はだいたい同じ棚にあるという点です。「ICレコーダー」で検索しても「ボイスレコーダー」で検索しても、たどり着く製品はほぼ重なります。逆に「AIレコーダー」で検索したときだけ、比べる相手が変わります。文字起こしと要約が要るかどうかで検索語を選び直すと、無駄な回り道が減ります。

ICレコーダーは、形で3つに分かれます

呼び名では選べませんが、形では選べます。現行の製品を見ると、大きく3つです。OM SYSTEMが公式のラインアップに並べている5機種を例に取ります。

向く場面
スティック型Voice-Trek VP-20(17×130×17mm・37.5g)胸ポケットに挿す、身につける
据え置き型Voice-Trek WS-883 / WS-882(111.5×39×18mm・77g)会議室の机に置く
リニアPCM型LS-P5音楽・環境音の収録

数字を並べると違いがはっきりします。スティック型は細長く、据え置き型は横に広い。この差はマイクの間隔に効きます。横幅が39mmある据え置き型は、2つのマイクを離して置けるので、音の広がりを記録しやすい。17mm幅のスティック型は、そこが詰まります。

一方で重さは37.5gと77gで倍違います。ポケットに挿しっぱなしにするなら、この差は毎日効きます。

会議室の机に置く使い方が中心なら据え置き型、立ち話や移動中も録るならスティック型。リニアPCM型は、会議の記録には過剰です。この使い分けだけ押さえておけば、型番の細かい違いで迷う必要はありません。

「録音アプリ」という言葉も、ときどき見かけます

呼び名の整理をもう1つだけ足します。「録音アプリ」は、スマートフォンにインストールして使う録音のためのソフト全般を指す言葉で、機械の種類を指す「ボイスレコーダー」「ICレコーダー」とは、そもそも階層が1つ違います。

iPhoneのボイスメモも、Androidの標準録音アプリも、そしてPLAUDやNottaが提供するスマートフォン側のアプリも、広い意味ではすべて「録音アプリ」に含まれます。ただし実務上は、標準で入っているアプリと、追加でインストールするアプリを分けて考えたほうが選びやすくなります。標準アプリは追加費用がかからず、多くの場合そのまま文字起こしまで届きます。追加のアプリは、話者分離や要約など、標準にない機能を補うために入れるものです。

「録音アプリ」で検索してこの記事にたどり着いた場合、探しているものが「端末にもとから入っている録音の機能」なのか、「文字起こしや議事録まで作ってくれる追加のアプリ」なのかを、まず自分の中ではっきりさせておくと選びやすくなります。前者は録音の仕方に、後者は録音アプリの選び方に、それぞれ分けてまとめてあります。

「文字起こし」という言葉も、2つの意味で使われています

呼び名の話でいちばん実害があるのがここです。製品ページに「文字起こし」と書いてあっても、自動で文字になるとは限りません。

OM SYSTEMのVoice-Trek VP-20には「文字おこし」モードがあります。トップページの機能紹介は「議事録作成に役立つ『文字おこし』モード」。ところがこの機能は、公式サイトの「充実の再生機能」という見出しの下に置かれていて、詳しい説明はこうなっています。

再生・停止・巻き戻し・早送りの操作をすることが多い、講義のノートや議事録作りなど、音声を聞きながら文章に書き起こすときに便利な「文字おこし」モードを搭載。

人が書き起こすための操作モードです。十字キーの割り当てを変える機能で、音声が文字になるわけではありません。

つまり「文字起こし」という言葉は、自動で文字にする機能と、人が書き起こす作業を助ける機能の両方に使われています。見分け方は単純で、その機能が「録音」の項目にあるか「再生」の項目にあるかを見ることです。再生機能として説明されているなら、文字にするのは人の仕事になります(3系統の比較)。文字起こしのやり方そのものと、機械と人でどれだけ時間が変わるかは文字起こしとはにまとめました。

AIレコーダーだけが、構造的に別物です

ここが本題です。AIレコーダーは、ほかの呼び名とは違う軸にあります。

従来の録音機は、録るところまでを担う道具でした。録れた音声をどうするかは使う人の仕事です。AIレコーダーは、そこから先——文字にする、要約する、話者を分ける——までを担います。そしてその処理の多くは、端末の中ではなく事業者のサーバーで行われます。

録音どちらもできる文字起こしAIレコーダーはここまで担う要約・話者分離事業者のサービス側で処理する
録るだけの機械と、AIレコーダーの違い。下2つがサービス側にある。

この構造から、実務上の違いが3つ出てきます。

1つめは、月々の支払いが発生しうること。文字起こしはサーバーの処理なので、無料の枠を超えると課金されるのが普通です。枠の刻み方は製品によって違い、分数で売るもの、無制限をうたうもの、クレジット制のものがあります。サブスクが要るかどうかの見分け方にまとめました。

2つめは、音声が外部へ渡ること。録るだけの機械なら、音声は本体の中にとどまります。AIレコーダーは、文字にするために音声を送ります。社内の規定で外部への送信が制限されている場合、ここが分かれ目になります。通信しない構成の製品も一部にはあり、iFLYTEKのVOITER SR302 Proがその例です。

3つめは、サービスが止まると使えなくなること。端末は手元にあっても、文字起こしを担うサーバーが止まれば、その機能は失われます。これは製品を買うときには見えにくい部分ですが、数年使うつもりなら考えておく価値があります

買ってから気づく4つの差

呼び名や仕様表だけを見て選ぶと、使い始めてから初めて気づく差があります。ここでは4つに絞って書きます。いずれも、買う前の比較表には出てこないか、出ていても見落とされやすい項目です。

電池——乾電池の入れ替えと、内蔵電池の劣化

従来型のICレコーダーは、多くが乾電池で動きます。電池が切れても、コンビニで単4形を買えばすぐ復帰します。OM SYSTEMのVoice-Trek WS-883なら、MP3の128kbpsで約41時間、電池を替えながら使えば実質的に上限がありません。

AIレコーダーは逆で、内蔵の充電池です。PLAUDの各機種は電池が交換できない内蔵型で、消耗品として2〜3年で劣化すると案内されています。Anker Soundcore Workは本体のみで最大8時間、充電ケースを合わせて最大32時間です。日をまたいで使い続けるほど、充電のタイミングを自分で管理する必要が出てきます。乾電池の「切れたら替えるだけ」という単純さは、AIレコーダーには基本的にありません。

容量——貯めておける量と、1回で録れる量は別

ここは呼び名を問わず混同されやすいところです。「内蔵メモリが大きい」ことと「長く録り続けられる」ことは、別の数字です。

従来型ICレコーダーのVoice-Trek VP-20やWS-883は内蔵8GBで、MP3の128kbpsならおよそ140時間ぶんを貯められます。ただし電池は128kbpsで約27〜41時間しか持たないので、容量より先に電池が尽きます。

AIレコーダーの側は、この2つの数字がはっきり分かれて書かれている機種が多くあります。Notta Memoは「録音時間 約30時間」(貯めておける総量)と「連続録音 最大5時間」(1回で録りきれる長さ)を別の項目として公式が説明しており、両方を混同すると「30時間ぶっ続けで録れる」と誤解します。PLAUDの各機種はローカルストレージが64GBで、連続録音は機種によって20〜50時間です。買う前に見るべきは、内蔵メモリの大きさではなく、1回にどれだけ録れるかの数字のほうになります。

マイクの数——多いほど良いとは限らない

マイクの数は、AIレコーダーの仕様表でよく目立つ項目です。Anker Soundcore Workは2基、PLAUDの上位機Note Proは4基、Comu Action Proは6基(全指向性4・指向性1・骨伝導1)。数だけを見ると多いほうが優れているように思えます。

ただし、マイクの数がそのまま話者の聞き分けに直結するわけではありません。骨伝導マイクは装着者本人の声を体の振動から拾うためのもので、周囲が騒がしい場所でも自分の発話は崩れにくくなりますが、相手の声を聞き分ける精度を上げるものではありません。全指向性のマイクが複数あっても、声質の近い参加者がまとめられる、途中から入った人が既存の話者に吸収される、といった崩れ方はどの機種でも起こり得ます。マイクの数は集音距離や騒音への強さには効きますが、話者の聞き分けを保証する数字ではないと考えておくほうが実際に近いです。

取り込み——直挿しできる機種と、変換が要る機種

録った音声をパソコンやスマートフォンへ移す手間も、機種によって差があります。USB-CのiPhone(15以降)なら、多くのICレコーダーは付属のUSBケーブルで直接つなぐと「ファイル」アプリに外部ドライブとして表示され、そのままコピーできます。LightningのiPhoneでは、Lightning-USBカメラアダプタが要ります。

さらに、形式そのものが変換を必要とすることがあります。WMA形式や、ソニーの古い機種が使う.dvf・.msvといった独自形式は、そのままではiPhoneで扱えません。パソコンで一度MP3かWAVに変換する作業が挟まります。逆に、最初からMP3やWAVで録っておけば、この変換の手間はまるごと省けます。取り込みの手間まで含めて比べたい場合は、ICレコーダーの録音をiPhoneに取り込む手順に機種別の細かい違いをまとめました。

4つの差を、まとめると

従来型ICレコーダーAIレコーダー
電池乾電池・入れ替えで無限内蔵充電池・2〜3年で劣化
容量と連続録音8GBで約140時間貯まるが、電池は27〜41時間64GBが多いが、連続録音は機種で20〜50時間
マイク本体の幅で間隔が決まる2〜6基。数は騒音対策で、聞き分けの保証ではない
取り込みケーブルかmicroSD。独自形式は変換が要るアプリへの同期が前提

どの列を選んでも、完璧な組み合わせは存在しません。どこかを立てれば、どこかで妥協することになります。買う前にこの4つのどれを優先するかを決めておくと、店頭やレビューサイトで数字に振り回されにくくなります。

「何時間録れるか」の数え方が、製品で違います

仕様表を見比べるときに、いちばん混乱するところです。同じ「録音時間」という言葉が、2つの別のものを指しています。

数え方何で決まるか表記の例
電池持続時間電池の容量と消費電力「アルカリ乾電池使用時 約41時間」
録音可能時間メモリ容量と録音形式「8GB/最大約5,000時間」

先に尽きるのは、たいてい電池のほうです。8GBのメモリにMP3の128kbpsで録ると140時間前後入りますが、電池は40時間前後で切れます。カタログの大きい数字だけを見ていると、この差を見落とします。

しかも電池持続時間は、録音形式ごとに大きく変わります。OM SYSTEMのWS-883の公式値では、リニアPCMで約53時間、MP3の128kbpsで約41時間、いちばん軽い8kbpsモノラルなら約110時間。同じ製品で2倍以上開きます。

比べるときは、自分が使う設定での値どうしをそろえてください。カタログの最大値は、たいてい実用しない設定での値です。

録音形式の呼び名も、整理しておきます

製品を比べていると、今度は形式の名前が出てきます。ここも意味が分かると迷いません。

呼び名何を指すか
リニアPCM音を圧縮せずにそのまま記録する方式。ファイルが大きい
WAVリニアPCMのデータを収めるファイルの形式
MP3圧縮して記録する方式。ビットレートで音質と容量が変わる
m4aiPhoneのボイスメモが書き出す形式(AACという方式を使う)
ビットレート1秒あたりに使うデータ量。128kbpsなど

「リニアPCMだから高音質」とは限りません。サンプリング周波数という別の数字が同時に効くので、機種によってはMP3の128kbpsのほうが高い帯域まで録れます。実際にOM SYSTEMのVoice-Trek VP-20は、公式の周波数特性でリニアPCMの上限が10kHz、MP3の128kbpsが17kHzです。形式の名前だけでは決まりません(数字の並べ方はこちら)。

会議の記録が目的なら、MP3の128kbps前後を選んでおけば困りません。容量の計算と設定の決め方はPCM録音とはにまとめました。リニアPCMを選ぶ理由があるのは、音楽を録る場合と、あとから音を加工する前提がある場合です。

モノラルとステレオも、呼び名の話です

もうひとつ、仕様表でよく見る言葉です。

モノラルは1つの音の流れ、ステレオは左右2つの流れを記録します。ステレオで録ると、聞き返したときにどちらの方向から聞こえた声かが分かります。会議で複数の人が座っている場面では、この情報が役に立つことがあります。

ただしステレオで録るには、離れた場所に2つのマイクが要ります。本体が小さいとマイクの間隔が詰まるので、ステレオと書いてあっても差が出にくくなります。前に書いた「形で3つに分かれる」話と、ここが繋がります。

そして注意が1つ。文字起こしに回すなら、ステレオである必要はほとんどありません。音声認識は片方の流れを処理するので、ステレオの情報は使われないことが多い。人が聞き返す前提ならステレオ、機械に渡す前提ならモノラルで足ります。

英語での呼び名

海外の製品や、英語のレビューを読むときのために並べておきます。

日本語英語での表記
ボイスレコーダー/ICレコーダーvoice recorder / digital voice recorder
リニアPCMレコーダーlinear PCM recorder / field recorder
ボイスメモ(iPhoneのアプリ)Voice Memos
文字起こしtranscription
話者分離speaker diarization

英語圏では「IC recorder」という言い方をほとんど使いません。日本のメーカーが使ってきた呼び名なので、海外のサイトで探すときは digital voice recorder のほうが見つかります。

いま新品で買えるものは、減っています

呼び名の整理をしたうえで、市場の状況も書いておきます。「録るだけの機械」の選択肢は狭まっています。

ソニーは2026年7月時点でICレコーダーの出荷を終えつつあり、ソニーストアで購入できるのはICD-UX570Fシリーズだけになりました。ICD-TX660・ICD-PX470F・PCM-A10は製品ページに販売終了と表示されています。

一方でOM SYSTEMは2026年1月に新機種のVoice-Trek VP-20を出していて、公式のラインアップには5機種が並んでいます。このジャンルが完全に終わったわけではありません。

とはいえ、選べる幅は明らかに狭くなりました。乗り換えを考えている方向けの整理はソニーがICレコーダーをやめる。次に何を使うかにまとめてあります。

買うときに本当に見る4つ

呼び名の違いでは製品は選べません。会議の記録が目的なら、次の4つで絞れます。

見るところなぜ効くか
話者を分ける必要があるか分かれないと、決まったことの担当が書けない
文字起こしまで要るか要らないなら、録るだけの機械のほうが安く済む
月々の支払いを許容できるかAIレコーダーは枠を超えると課金される
音声を外部へ出せるか社内の規定で決まっていることがある

この4つで方向が決まったら、具体的な機種はAIレコーダーの選び方から見てください。ソニーがICレコーダーの生産を終えるなど、録るだけの機械の側は選択肢が減っているので、乗り換えの考え方も併せてまとめてあります。録音は端末で足りて、文字起こしだけをアプリに任せたい場合の比較は文字起こしアプリの比較にあります。

そして、買う前にいま持っているスマートフォンで一度試すのがいちばん早い道です。標準の録音アプリで会議を録ってみて、何が足りなかったかを見る。足りなかったものがはっきりすれば、買うべき製品も決まります。足りていれば、買う必要はありません。

用途から逆算する

呼び名では選べませんが、「何のために録るか」からなら選べます。代表的な用途ごとに、向く系統を並べます。

用途向く系統理由
社内会議・打ち合わせの議事録AIレコーダー、またはスマートフォンのアプリ話者分離と文字起こしが要る
取材・インタビュー従来型ICレコーダー、またはAIレコーダー長時間・確実な録音が優先。文字にする作業は後回しでもよい
講義・研修の記録従来型ICレコーダー電池が長く持ち、終日録りっぱなしにできる
音楽・環境音の収録リニアPCMレコーダー・ハンディレコーダー非圧縮での記録、外部マイクへの対応が要る
語学学習・発音の確認スマートフォンの標準アプリ短時間の録音で足り、追加の道具は不要
電話商談の記録標準の通話録音機能、または通話録音に対応したAIレコーダー通常の録音アプリでは通話音声を録れない
社外に音声を出せない業務従来型ICレコーダー、または完全オフライン機クラウドを経由しない選択肢が要る

表の中でいちばん誤解されやすいのが「取材・インタビュー」の行です。AIレコーダーの文字起こしがあれば十分と思いがちですが、取材では「録れているかどうか」の確実さのほうが優先順位の高い場面があります。電池が切れて録音が止まっていた、という失敗は取り返しがつきません。乾電池で長時間動く従来型のほうが、この一点では安心できます。文字にする作業は、録った音声を後からいつでも回せます。

「電話商談の記録」の行も補足が要ります。iOSのアプリは、仕組み上サードパーティのアプリで通話音声を録音できません。iPhoneの標準の電話アプリには通話録音の機能がありますが、これは通常の録音アプリとは別の場所にある機能です。PLAUDのNoteとNote Proは、スマートフォンの背面に貼り付けて本体スピーカーの振動を直接拾う方式で、この制約を物理的に回避しています。電話の記録が主な目的なら、この違いを踏まえて機種を選ぶ必要があります。対応機種や、実際に始めるまでの手順はiPhone標準の通話録音に一つずつ書きました。

スマートフォンで代用できる境目

専用の道具を買う前に、まず手元のスマートフォンで足りるかどうかを確かめる価値があります。代用できないと判断してよいのは、次のどれかに当てはまるときです。

  • 1日に10時間以上、続けて録る。スマートフォンの電池はこの長さに耐えるようには作られていません
  • 録音中も、地図や資料の閲覧、電話の発着信など、他の用事とスマートフォンを一緒に使いたい。録音がそれらの用事とぶつかります
  • 電話での商談や取材を録りたい。通常の録音アプリでは通話音声を録れません
  • 音声を絶対にクラウドへ出せない業務ルールがある。AIレコーダーもスマートフォンの文字起こしアプリも、多くはクラウドを経由します

この4つのどれにも当てはまらないなら、すでに持っているスマートフォンで同じ結果になることが多いというのが実際のところです。会議室の机に置いて録るだけの使い方なら、専用機を買う理由は薄くなります。逆に言えば、この4つのうち1つでも当てはまるなら、それが専用機を選ぶ具体的な理由になります。何が足りなかったかがはっきりすれば、買うべき製品の系統も自然に決まります。

よくある混同を、一覧にします

ここまでの内容を、間違えやすい組み合わせの形でまとめます。

混同されるもの実際の関係
ボイスレコーダー ↔ ICレコーダー同じもの。呼び名の違いだけ
ボイスメモ ↔ ボイスレコーダーボイスメモはiPhoneのアプリ名。種類の一つ
ICレコーダー ↔ 集音器別の道具。集音器は聞こえを助けるもので、録るためのものではない
リニアPCMレコーダー ↔ ICレコーダー用途が違う。前者は音楽・環境音向け
AIレコーダー ↔ ICレコーダー構造が違う。前者はサービスと繋がっている
「文字起こし」機能 ↔ 自動文字起こし同じ言葉で別の機能。再生の補助であることがある
サウンドレコーダー ↔ ボイスレコーダーサウンドレコーダーはWindowsの標準アプリ名

いちばん下の行を補足します。Windowsには「サウンドレコーダー」という標準の録音アプリがあり、以前は「ボイスレコーダー」という名前でした。アプリの名前が変わっただけで、別の製品ではありません。パソコンでの録り方は録音の仕方にまとめてあります。

この記事から分かれる話

知りたいこと記事
機種を選びたいボイスレコーダーはどれを買うか
AIレコーダーの機種比較AIレコーダーはどれを買うか
買わずに済ませたいiPhoneで足りるか確かめる
端末の標準機能録音の仕方
iPhoneのボイスメモボイスメモの使い方
従来型からの乗り換えソニーがICレコーダーをやめる

この記事は呼び名と製品分類の一般的な説明です。個別の製品の仕様は各社の公式ページでご確認ください。

よくある質問

ボイスレコーダーとICレコーダーの違いは何ですか

中身に決まった違いはありません。ICレコーダーは、カセットテープを使う機械と区別するために「ICメモリに録る」という意味で付いた呼び名です。テープの製品がほぼ無くなったいま、同じものを指す言葉として両方が使われています。

ボイスメモとボイスレコーダーは違いますか

ボイスメモはiPhoneに標準で入っているアプリの名前で、ボイスレコーダーは録音する道具の一般名です。つまり「ボイスメモはボイスレコーダーの一種」という関係になります。Androidの標準アプリは端末によって「レコーダー」「ボイスレコーダー」などの名前が付いています。

ハンディレコーダーやリニアPCMレコーダーとは何が違いますか

音楽や環境音の録音を想定した製品群です。非圧縮での録音に対応し、外部マイクをつなげるものが多くあります。会議の録音が目的なら、この性能はほとんど使いません。

AIレコーダーは何が違うのですか

ここだけは実際に違います。録音した音声を文字にして要約するところまでを担う製品で、そのために事業者のサービスと繋がっています。録るだけの機械と違い、サービスが止まると文字起こしができなくなります。

結局どれを買えばいいですか

呼び名では決まりません。会議の記録が目的なら、話者を分ける必要があるか、文字起こしまで要るか、月々の支払いを許容できるか、の3つで絞れます。まずはいま持っているスマートフォンで足りるかを確かめるのが早道です。

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