オリンパスのICレコーダーは撤退したのか——OM SYSTEMは新機種を出し、縮んでいるのはソニー
「オリンパスが撤退した」と言われますが、OM SYSTEMの公式ラインアップには現行5機種があり、2026年1月に新機種も出ています。縮んでいるのはソニーのほうです。メーカー別の現況と、移る場合の選択肢を整理しました。

長年ICレコーダーで会議を録ってきた方に、あまり知られていない話から始めます。ソニーはICレコーダーから撤退しつつあります。製品ページと直販の状況を、2026年8月時点で確認したものです。
この記事の内容(22項目)
- 「オリンパスが撤退した」は、事実と違います
- 縮んでいるのは、ソニーのほうです
- いつが「乗り換えどき」か
- メーカー別の現況
- パナソニックのICレコーダーを持っている人へ
- まず、ICレコーダーの何が良かったのかを言葉にする
- 選択肢は3つ
- A. ICレコーダーを続ける(OM SYSTEM)
- B. AIレコーダーに移る
- C. iPhoneのアプリに移る
- 文字起こしに回す前に、録音設定を見直す
- 手持ちの録音を、スマートフォンへどう移すか
- 移行で見落とされやすい2つ
- 「落ちたときにどうなるか」が変わる
- 話者が分かれるかどうか
- 専用機を手元に残したほうがいい人
- 買い替える前に、2年の総額で比べる
- 使い慣れた機種を続けたいなら
- 「安く見える」計算に入っていない費用
- 結局、何を買うか——3つの質問で絞る
- Recoryの場合
- 買う前の最終チェック
- ICD-TX660 / ICD-PX470F / PCM-A10 —— ソニーストアでの販売は終了(製品ページに「本商品のソニーストアでの販売は終了しております」と表示)
- ICD-UX570Fシリーズ —— ソニーストアで買えるのは、いまここだけです。メーカー保証3年つき。同シリーズでも16GBのICD-UX575Fは販売終了。価格は値引きが出ることがあるので購入時に確認してください
2026年8月時点では家電量販店に流通在庫が残っていますが、これが売り切れるとソニーのICレコーダーは無くなります。在庫が細ると、市中の価格がメーカー直販を上回ることがあります。買うつもりなら、価格だけでなく在庫の有無も見てください。長く使ってきた方ほど、次をどうするかを考える時期だと思います。
「オリンパスが撤退した」は、事実と違います
先に結論を書きます。OM SYSTEM(旧オリンパス)は、ICレコーダーから撤退していません。
公式サイトのICレコーダーのラインアップページには、2026年9月5日時点で5機種が「商品を購入する」ボタン付きで並んでいます。
| 型番 | 位置づけ |
|---|---|
| Voice-Trek VP-20 | 2026年1月30日発売の新機種 |
| Voice-Trek WS-883 | 据え置き型・8GB |
| Voice-Trek WS-882 | 同・4GB |
| Linear PCM Recorder LS-P5 | 音楽・環境音向け |
| VN-551PC | 入門機 |
いちばん上が要点です。撤退した会社は、新機種を出しません。VP-20は2026年1月30日発売で、内蔵メモリ8GB、単4形乾電池1本で最大約50時間(MP3 8kbpsモノラル時)という仕様が公式に出ています。
では、なぜ「撤退した」と言われるのか。理由は3つ考えられます。
1つめ、ブランド名が変わったこと。オリンパスの映像事業は2021年にOMデジタルソリューションズへ移り、ブランドは「OM SYSTEM」になりました。「オリンパス」で探すと会社そのものが見つからないので、やめたように見えます。
2つめ、個別の機種が終わっていること。公式サイトには「生産が終了した商品」の一覧ページがあり、多くのボイストレックがそこに並んでいます。1機種ずつ見れば「生産終了」の表示が出るので、それを撤退と読むことがあります。
3つめ、隣で本当に縮んでいる会社があること。このあとで書きます。
縮んでいるのは、ソニーのほうです
こちらは事実です。ソニーストアで購入できるのはICD-UX570Fシリーズだけになりました(メーカー保証3年つき)。同シリーズでも16GBのICD-UX575Fは販売を終了しています。
ICD-TX660、ICD-PX470F、PCM-A10は、製品ページに「本商品のソニーストアでの販売は終了しております」と表示されています。2026年7月時点で出荷を終えつつある状況です。
家電量販店の流通在庫はまだ残っているので、いま買うことはできます。ただし新しい機種が出る見込みは、公式からは読み取れません。
いつが「乗り換えどき」か
撤退や縮小の話を読むと、すぐにでも決めないといけない気がしてきますが、実際のタイミングはもう少し具体的な兆候で判断できます。次のどれかに当てはまったときが、実質的な乗り換えどきです。
- いま使っている機種が壊れた、または電池の持ちが目に見えて落ちた。買い直すタイミングは、そのまま乗り換えを検討する好機でもあります
- メーカーの修理サービス期間が終了した。壊れても直せないなら、同じ機種にこだわる理由が薄れます
- 文字起こしや議事録づくりに、毎回まとまった時間を取られていると感じ始めた。録るだけの道具の限界が、作業量として顕在化しているサインです
- 在庫が明らかに減ってきた、または価格が上がってきた。同じ機種を買い増したい場合、判断を先延ばしにするほど選択肢が狭まります
逆に、いま使っている機種が問題なく動いていて、文字起こしも急いで要らないなら、急いで結論を出す必要はありません。この記事はあくまで、次に何かを選ぶ必要が出たときの判断材料です。
メーカー別の現況
3社を並べます。確認できたことだけを書きます。
| メーカー | 2026年9月5日時点の状況 |
|---|---|
| OM SYSTEM(旧オリンパス) | 現行5機種。2026年1月に新機種VP-20 |
| ソニー | ICD-UX570Fシリーズのみ。他は販売終了の表示 |
| パナソニック | 公式サイトに現行のICレコーダーのカテゴリページが見当たらない |
いちばん下は、断定を避けた書き方をしています。パナソニックのICレコーダーの製品ページは、2026年9月13日時点で「ページが見つかりません」になっています(以前はサポート商品の一覧へ転送されていました)。現行の製品ページが無いという観測は事実ですが、「撤退した」という公式の告知は確認できませんでした。確認できていないことを断定はしません。
パナソニックのICレコーダーを持っている人へ
「パナソニックのICレコーダー」で検索してここに来た人は、たぶん2つのどちらかです。まだ買えるのか知りたいか、手元の機種の取扱説明書や修理の窓口を探しているか。前者への答えは上の表のとおりで、2026年9月15日時点で、公式サイトに現行機の製品ページはありません。
後者は、少し面倒なことになっています。同じ日にパナソニックのサポートのトップを開くと、商品カテゴリの一覧に「ラジオ/CDラジオ/ラジオレコーダー」はあっても、ICレコーダーというカテゴリそのものがありません。取扱説明書のページには「品番から探す」という検索欄があるので、手元の機種の品番(RR-XS470、RR-QR220のような形)をそこに入れるのが、いま残っている入口です。確かめられたのは検索欄があるところまでで、品番を入れて説明書が出てくるかまでは確認できていません。出てこなければ、本体に貼られている品番を控えて、パナソニックの窓口に問い合わせることになります。
乾電池で動く小さな機種を使い続けたい人は、この記事の後半の「A. ICレコーダーを続ける」がそのまま当てはまります。同じ形の現行機はOM SYSTEMにあります。
つまり「ICレコーダーは終わる」という話は、メーカーによって当たり外れがあります。乾電池で長時間録れる道具が欲しいなら、OM SYSTEMの現行機を買えば、いまも手に入ります。
まず、ICレコーダーの何が良かったのかを言葉にする
移行先を選ぶ前にこれをはっきりさせておくと、失敗しません。ICレコーダーが強かったのは、たぶんこの4つです。
- 乾電池で数十時間。切れても入れ替えれば続く
- 通信がいらない。電波の届かない場所でも、サーバーが止まっていても録れる
- 音声が外に出ない。端末の中だけで完結する
- 他の用事とぶつからない。電話が来ても録音は止まらない
この4つのうち、どれが自分にとって必須か。そこで移行先が変わります。
選択肢は3つ
A. ICレコーダーを続ける(OM SYSTEM)
前に書いたとおりソニーは縮みますが、OM SYSTEM(旧オリンパス)のVoice-Trekは現行です。
- WS-882 / WS-883 —— 実売価格は販売店で幅があるので、購入時にご確認ください
- 乾電池2本で約53時間(リニアPCM時)、MP3なら約110時間
- microSD対応
上の4条件を全部そのまま満たします。文字起こしは付いていませんが、「録音は確実に、文字起こしは別でやる」という分業なら、これがいちばん堅い。録音を外に出せない職場なら、実質これ一択です。AIレコーダーもアプリも、音声をクラウドへ送るからです。
続けるなら、どの機種を選ぶか
Voice-Trekの現行5機種のうち、会議の記録に向くのは形の違う2系統です。スティック型のVP-20(17×130×17mm・37.5g)は胸ポケットに挿しておける細さで、外部マイク端子に別売りの電話録音用マイクをつなげば固定電話の通話も録れます。据え置き型のWS-883/WS-882(111.5×39×18mm・77g)は会議室の机に置く形で、横幅がある分マイクの間隔を広く取れるため、音の広がりを記録しやすくなっています。
電池の持ちも系統で変わります。WS-883はMP3の128kbpsで約41時間、8kbpsモノラルなら約110時間と、この2機種の中では長時間側です。VP-20はMP3の128kbpsで約27時間30分、アルカリ乾電池とニッケル水素充電池でも差があり、ニッケル水素は128kbpsで約21時間とアルカリより2割ほど短くなります。立ち歩く場面が多いならVP-20、会議室に据え置くならWS-883という分け方になります。文字起こしの機能そのものは、前述のとおりどちらの機種にも付いていません。
B. AIレコーダーに移る
録音に加えて文字起こし・要約まで自動でやる専用機です。PLAUD(プラウド) Note(¥27,500)、Notta(ノッタ) Memo(¥23,500)、オートメモS(¥19,800)など。引き換えに手放すものが明確にあります。
| ICレコーダー | AIレコーダー |
|---|---|
| 乾電池(入れ替えで無限) | 内蔵電池(20〜50時間で充電) |
| 通信不要 | クラウド必須 |
| 音声は端末内 | 音声を社外へ送信 |
| 月額なし | 多くが月300分の無料枠+超過は月額 |
とくに3行目は、職場によっては決定的です。移る前に社内規程を確認してください。料金の詳細は「サブスク不要のAIレコーダー」を探している人へにまとめました。
どのAIレコーダーを選ぶか
2026年に入って機種がかなり増えました。ICレコーダーからの移行先として比べるときに効く項目だけを並べます。
| 機種 | 本体(税込) | 連続録音 | 無料枠 | 通話録音 |
|---|---|---|---|---|
| PLAUD Note | ¥27,500 | 30時間※ | 月300分 | ○ |
| Notta Memo | ¥23,500〜 | 30時間/5時間※ | 月300分 | Type-C充電モデルのみ |
| Anker Soundcore Work | ¥24,990〜 | 本体8時間/ケース込32時間 | 月300分 | 非対応 |
| Comu Action Pro | ¥39,800 | 最大70時間 | 文字起こし・基本要約は無制限 | ○ |
| HiDock P1 | ¥26,800 | 記載なし | 文字起こしは無制限と明記 | Call Mode |
| iFLYTEK VOITER SR302 Pro | ¥39,600 | 画面消灯・非通信で7時間 | 通信しない買い切り | 記載なし |
※連続録音時間はカタログ値です。価格・仕様は各社公式ページの表示によります。
いちばん見るべきは「無料枠」の列です。月300分(1時間の会議で5本ぶん)がこの分野の標準で、超えると月額のプランが必要になります。Comu Action Proだけは文字起こしと基本要約を無料の無制限に置き、代わりに「会議のあとの仕事」を担う機能のほうに上限(エージェントクレジット)を設ける、という別の作りです。録る量が多く、要約を読むところまでで足りるなら、この形が合います。
通話録音の可否も、機種によってはっきり分かれます。ICレコーダーで固定電話の通話を外部マイクから録っていた人にとって、ここは移行先を選ぶ決め手になりやすい項目です。PLAUDのNoteとNote Proはスマートフォンの背面に貼って本体の振動を拾う方式で通話を録れますが、同じPLAUDでもNotePinシリーズは対応していません。Anker Soundcore Workは公式に「通話録音には対応しておりません」と明記されています。機種名だけで判断せず、通話録音の行を必ず確認してください。
音声を外部へ送りたくない場合の選択肢もあります。iFLYTEK VOITER SR302 Proは「文字起こしの際に一切通信を行いません」と明記されている完全オフライン機で、月額の概念そのものがありません。ただし対応言語は5言語にとどまり、AI要約やToDoの自動抽出についての記載も確認できませんでした。文字にするところまでで、議事録の形に整えるのは別の手段が要ると考えておくのが実際に近いはずです。
長く使うつもりなら、総額でも比べておく価値があります。月に会議5本以内(無料枠に収まる量)で3年以上使うなら専用機の買い切りが有利になる分岐点はおおむね28か月あたりで、逆に週2本以上の会議があるなら無料枠を超えるため、2年の総額は本体代の差がそのまま残る計算になります。細かい試算はサブスク不要のAIレコーダーを探している人へにまとめました。
C. iPhoneのアプリに移る
すでに持っている端末で済ませる方法です。本体費用がかかりません。ICレコーダーからの移行で引っかかりやすいのはここです。長年の習慣と、端末の性格が違います。標準の録音アプリでできることとできないことはボイスメモの使い方にまとめました。
- 電池:4時間の録音でiPhoneの電池をそれなりに使います。充電しながら録るのが前提
- 他の用事とぶつかる:録音中に地図を開いたり資料を見たりすると、電池も容量も食う
移行先を機種から選ぶ場合はボイスレコーダーはどれを買うかに、従来型・AIレコーダー・スマートフォンを同じ表で並べてあります。
- 通話は録れない:録音アプリでは通話の音声は録れません。iPhoneの標準の通話録音は「電話」アプリの機能で、別の道具になります。始め方とアナウンスの扱いはiPhone標準の通話録音にまとめました。ICレコーダーで通話を録っていた方は、ここが埋まりません(録音アプリの選び方で、目的ごとの分かれ方を整理しました)
逆にICレコーダーより良くなるのは、文字起こしと議事録が自動で付いてくること、そして録音の受け渡しが要らないことです。ICレコーダーからPCへ移して、サービスに上げて、というあの往復が消えます。
文字起こしに回す前に、録音設定を見直す
分業にせよ買い替えにせよ、文字起こしへ回す前提があるなら、ICレコーダー側の録音設定も一度見直しておく価値があります。「非圧縮だから高音質」とは限らないためです。
会議の記録が目的なら、MP3の128kbps前後で足ります。非圧縮のリニアPCMは音を削らずに記録できますが、ファイルが数倍から10倍以上大きくなり、文字起こしのサービスへアップロードする時間も伸びます。人の話し声を聞き取る用途では、そこまでの音質は基本的に要りません。逆に「とにかく長く録りたい」からと8kbpsモノラルのような軽い設定にすると、上の帯域が大きく削られ、聞き返したときの明瞭さが落ちます。形式の選び方はPCM録音とはに数字つきでまとめました。
手持ちの録音を、スマートフォンへどう移すか
すぐに買い替えなくても、いま持っているICレコーダーの録音をスマートフォンへ移して文字起こしにかける、という中間の使い方があります。経路は機種と端末で変わります。
USB-CのiPhone(15以降)なら、いちばん簡単です。ICレコーダーに付属のUSBケーブルでつなぐと、多くの機種は「ファイル」アプリに外部ドライブとして表示され、そのままコピーできます。LightningのiPhoneでは、Lightning-USBカメラアダプタが要ります。電力が足りずに認識しない場合は、電源付きのアダプタを使うか、次のパソコン経由に切り替えてください。
いちばん確実なのは、パソコンを経由する方法です。ICレコーダーをパソコンにUSBでつなぎ、外部ドライブとして開いてフォルダから音声ファイルをコピーし、iCloud DriveやGoogleドライブへ置いてからiPhoneの「ファイル」アプリで開きます。遠回りに見えますが、メーカーが動作を保証していない直結よりも失敗しません。microSDに録るタイプなら、カードを抜いてカードリーダーで読むのが最速です。
途中でつまずきやすいのが形式です。WMA形式や、ソニーの古い機種が使う.dvf・.msvといった独自形式は、そのままではiPhoneで扱えません。パソコンで一度MP3かWAVに変換する作業が挟まります。ソニー機はREC_FILEフォルダ、パナソニック機はMIC_A〜MIC_Dフォルダというように、メーカーごとに録音の入っている場所も違います。細かい手順とメーカー別のつまずきどころはICレコーダーの録音をiPhoneに取り込んで文字起こしするに一式まとめました。
移行で見落とされやすい2つ
「落ちたときにどうなるか」が変わる
ICレコーダーは、電池が切れてもそこまでのファイルが残ります。スマホのアプリは、作りによって全部消えます。録音を1本のファイルに書き続ける作りだと、途中で強制終了したときにファイルが壊れて開けません。3時間録って全部消える、が起こり得ます。移行先を選ぶときは「何時間録れますか」より、「落ちたらどうなりますか」を確認してください。詳しくはiPhoneの録音が途中で止まる8つの原因に書きました。
話者が分かれるかどうか
ICレコーダーはステレオで録れるので、左右の定位で「なんとなく誰か」が分かりました。聞き返すときの手がかりになっていたはずです。文字起こしにすると、この情報は消えます。話者分離のない文字起こしは、改行のない一続きのテキストになります。3人の会議だと、読み返しても誰の発言か分かりません。移行先に話者分離があるかは、実務ではかなり効きます。
専用機を手元に残したほうがいい人
ここまでの内容を、逆から整理し直します。移行しないことが正解になる人も、実際にはいます。
いちばんはっきりしているのは、音声を社外へ一切出せない業務ルールがある場合です。この条件だけは、AIレコーダーもスマートフォンのアプリも基本的に満たせません。文字起こしと要約は事業者のサーバーで処理される仕組みなので、音声はいったん外部へ渡ります。乾電池で動く従来型のICレコーダーは、この一点で今も専用機のほうが確実です。
「AIの機能だけは欲しいが、クラウドは使えない」という中間の要望もあります。この条件に応えられる製品はごく限られますが、iFLYTEK VOITER SR302 Proのように、本体内で文字起こしまで完結させ、通信そのものを行わない機種は存在します。ただし対応言語が5言語にとどまり、AI要約や話者識別についての記載も確認できないなど、クラウド型と比べて機能の幅は狭くなります。文字にするところまでで十分か、議事録の形まで自動で欲しいかで、選ぶべきものが変わります。
そのほかにも、専用機を残す理由になりうる条件があります。
- 通話の記録が主な目的。外部マイク端子から固定電話を録れるのは、いまも従来型ICレコーダーの強みです
- 終日、録りっぱなしにする使い方が多い。乾電池で40時間以上録れる機種は、AIレコーダーにもスマートフォンにもありません
- その会社が3年後も続いているか分からないサービスに依存したくない。本体だけで完結する道具は、事業者の都合で機能が止まる心配がありません
- 手に馴染んだ操作を変えたくない。長く使ってきた機種なら、その安定感自体に価値があります
この4つと、前に挙げた「音声を社外に出せない」を合わせた5条件のうち、1つでも強く当てはまるなら、無理に移行する理由はありません。逆にどれにも当てはまらないなら、文字起こしと要約が自動で付くことの実利のほうが大きくなりやすいはずです。
買い替える前に、2年の総額で比べる
移行先を決める前に、金額も見ておきます。AIレコーダーは本体を買ったあとも月額が乗ることが多いので、本体価格だけを比べると判断を誤ります。
| 選択肢 | 初期費用 | 月額 | 2年の総額の目安 |
|---|---|---|---|
| OM SYSTEM Voice-Trek(続ける) | 実売1万円前後 | ¥0 | 本体代のみ |
| AIレコーダー(月300分に収まる場合) | ¥20,000〜¥40,000 | ¥0 | 本体代のみ(超えると月額が乗る) |
| AIレコーダー(週2本以上の会議がある場合) | ¥20,000〜¥40,000 | 有料プランが前提 | 本体代+月額×24か月 |
| iPhoneのアプリ | ¥0 | 月額のみ | 月額×24か月(本体は既に手元にある) |
会議の量が月300分(1時間の会議で5本)以内に収まり、3年以上使うつもりなら、AIレコーダーの買い切りに近い使い方ができます。逆に週2本以上の会議があるなら無料枠を超えるので、専用機でもアプリでも月額が発生します。この場合は、本体代がかからないぶんアプリのほうが総額を抑えやすくなります。どちらに転ぶかは、実際に録っている時間を1か月測ってみるとはっきりします。
もう1つ、金額とは別の軸として、その会社が数年後も同じサービスを続けているかも考えておく価値があります。AIレコーダーは本体だけでなく、文字起こしを処理するサーバー側のサービスが止まると使えなくなる構造です。買う前に、作った議事録や文字起こしを一括で書き出せるか、書き出した形式がテキストやPDFなど他のツールでも開けるかを確認しておくと、サービスが終了しても記録だけは手元に残ります。
使い慣れた機種を続けたいなら
正直な選択肢として書いておきます。在庫があるうちに予備機を買っておくのは合理的です。ICレコーダーは構造が単純で、長く使えます。手に馴染んだ機種があるなら、同じものをもう1台確保して、文字起こしだけを別の手段で足す、という組み合わせが現実的です。多くのアプリはm4a / mp3 / wav の取り込みに対応しています。録音はICレコーダー、文字起こしと議事録はアプリ、という分業ができます。
予備機を買うときは、中古や型落ちも選択肢に入ります。このジャンルは新機種の入れ替わりが遅く、数年前のモデルでも実用上の差は小さめです。ただし内蔵充電池の機種は劣化が進んでいるので、乾電池で動く機種のほうが中古では安心できます。専用ケーブルや充電池などの付属品が欠けていないかも見ておいてください。単体で買い直すと割高になります。もう1つ、メーカーの修理サービス期間には終わりがあります。OM SYSTEMは修理サービス期間が終了した製品の一覧を公式サイトで公開しているので、長く使うつもりの機種は型番で確認しておくと安心です。
「安く見える」計算に入っていない費用
前の表で、OM SYSTEMを続ける場合は本体代だけで済むと書きました。ただしこれは、文字にする作業の時間を含めていない金額です。録るだけの道具を選ぶと、その先の作業がまるごと人の手に残ります。
1時間の会議を人が書き起こすと、慣れた人でも3〜5時間かかります。人が打つ・端末の機能・サービスに任せるでどれだけ時間が変わるかは文字起こしとはに整理しました。週2本の会議を自分で書き起こすなら、月に8〜10本、24〜50時間ぶんの作業時間です。これを時給に換算すると、AIレコーダーやアプリの月額をあっさり上回ることがあります。逆に、録音を「記録として残すだけで、あとで必要になったときだけ聞き返す」使い方なら、文字にする作業そのものが発生しないので、この計算は関係ありません。
自分がどちらに近いかは、過去3か月に「録った音声を実際に聞き返した回数」でおおよそ分かります。0回に近いなら、文字起こしへの投資はいったん保留にしても実害が小さいはずです。逆に、会議のたびに文字起こしをして議事録を作っているなら、その作業時間そのものが移行の動機になります。
結局、何を買うか——3つの質問で絞る
ここまでの内容を、選ぶ側の順番に並べ直します。上から順に答えていくと、候補が自然に絞れます。
1つめの質問で「はい」なら、選択肢はほぼ1つです。音声を社外へ出せない業務ルールがある場合、AIレコーダーもスマートフォンのアプリも基本的に条件を満たせません。OM SYSTEMのVoice-Trekを、在庫のあるうちに買っておくか、いま使っている機種を予備機ごと確保しておくのが現実的です。
2つめの質問で「はい」なら、無料枠と通話録音の可否を先に見てください。月300分の無料枠に収まるかどうかで費用の見通しが大きく変わり、固定電話の通話を録っていた人にとっては対応機種が限られます。前に並べた比較表から、自分の使い方に合う機種を1つか2つに絞り込んでから、実際の会議で試すのが失敗しません。
3つめの質問で「はい」なら、まず何も買わずに試せます。すでに持っているiPhoneやAndroid端末の標準の録音機能で1本録ってみて、話者の聞き分けや文字起こしの精度がどこまで足りるかを確かめてから、必要な機能だけをアプリで足す、という順番が無駄がありません。
どの質問にも「いいえ」で行き着いた場合、つまり社外への送信は問題なく、自動化は今すぐ要らず、専用機を増やすことにも抵抗がないなら、急いで決める必要はありません。手元のICレコーダーが動いているうちは、そのまま使い続けて構いません。ソニーの縮小は、いますぐ全員が乗り換えるべきだという話ではなく、次に壊れたときや買い増すときの選択肢が変わった、という話だからです。
Recoryの場合
RecoryはiPhoneのアプリですが、ICレコーダーで録った音声ファイルを取り込めます。上に書いた分業ができます。録音の道具を替えずに、文字起こしと議事録だけを足す使い方です。
- m4a / mp3 / wav などの音声ファイル、mp4 / mov などの動画も取り込み可(音声だけ取り出します)
- 大きいファイルは自動で圧縮し、区間に分けて送るので長時間でも失敗しにくい
- 話者分離あり。まとまってしまったら別のモデルで起こし直せます(有料プラン)
- 議事録の一行ごとに [mm:ss]、触れるとその瞬間の音声が鳴ります
そのまま録る場合は、短い間隔で区切って確定するので強制終了しても直前まで残ります。連続録音は1回4時間まで(無料のお試しは60分)。手放すことになるものも書きます。通信が必要です(録音そのものは電波が無くてもできますが、文字起こしはサーバーで行います)。音声はクラウドへ送られます。通話は録音できません。乾電池の安心はありません。
この4つが必須なら、OM SYSTEMのVoice-Trekを買うのが正解です。無理に移る理由はありません。移行先の候補は4つの質問で絞れます。
買う前の最終チェック
ここまでの内容を、注文する直前に見直せる形にまとめます。
| 確認すること | 見るところ |
|---|---|
| 音声を社外に出せない業務ルールがあるか | あるなら従来型ICレコーダーかオフライン機一択 |
| 固定電話の通話を録る必要があるか | 対応機種は限られる(外部マイク端子付きの従来型、PLAUD Note系など) |
| 月にどれだけ会議を録るか | 300分(月5本)を超えるなら有料プラン前提で試算する |
| 文字起こしを実際に聞き返しているか | 0回に近いなら、自動化への投資は急がなくてよい |
| その会社・サービスは書き出しに対応しているか | 一括で書き出せて、テキストなど他でも開ける形式か |
上から3つは「そもそも移るべきか」を決める質問、下の2つは「移るとして何を選ぶか」を決める質問です。順番に埋めていくと、次に買うものが自然に決まります。
ソニーの撤退は、「録るだけの道具」が役割を終えつつあるという話でもあります。ただ録音の確実さだけは、いまも専用機の方が上です。何を優先するかを先に決めてから選んでください。
生産・出荷の状況は2026年8月時点で確認したものです。流通在庫は変動します。
よくある質問
ソニーのICレコーダーはもう買えませんか
ソニーストアで購入できるのはICD-UX570Fシリーズだけです(メーカー保証3年つき)。同シリーズでも16GBのICD-UX575Fは販売を終了しています。値引きが出ていることがあるので、価格は購入時にご確認ください。ICD-TX660、ICD-PX470F、PCM-A10は製品ページに販売終了と表示されています。家電量販店の流通在庫はまだ残っています。
ICレコーダーとAIレコーダーの違いは何ですか
ICレコーダーは録音だけをします。AIレコーダーは録った音をクラウドへ送って文字起こしと要約まで行います。したがってAIレコーダーは通信が要り、音声が社外のサーバーへ出ます。録音を外に出せない職場では、ICレコーダーの代わりにはなりません。
乾電池で長時間録れる安心を手放したくありません
その要件ならOM SYSTEMのVoice-Trekが現行で残っています。乾電池2本で約53時間、実売1万円前後です。文字起こしは付いていませんが、録音の確実さだけを求めるなら現在も最良の選択肢のひとつです。
AIレコーダーを買う前に、iPhoneで足りるか確かめる
「サブスク不要のAIレコーダー」を探している人へ、2年の総額で比べました