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議事録の書き方

文字起こしとは——3つのやり方と、それぞれ何時間かかるか

音声を文字にする作業のことです。人が打つ、端末の標準機能を使う、サービスに任せるの3つがあり、かかる時間と費用が桁で違います。日本語で難しくなる理由と、用途ごとに必要な精度まで整理しました。

文字起こしは、録音した音声を文字のテキストに直す作業のことです。会議の議事録、取材記事、講義のノート、動画の字幕。どれも、まず音を文字にするところから始まります。

この記事の内容(27項目)
  1. 3つのやり方と、かかる時間
  2. 自分で打つときの手順
  3. 機械に任せたあと、何を直すか
  4. 日本語で難しくなる3つの理由
  5. 「精度98%」は、何を測った数字か
  6. 機械は、どうやって音を文字にしているのか
  7. 用途によって、必要な精度が違います
  8. 素起こし・ケバ取り・整文
  9. 「文字起こしAI」と呼ばれているものは、2つに分かれます
  10. どの道具を使うか
  11. どこで処理されているかで、確認する項目が変わります
  12. 文字起こしを頼まれたときの見積もり方
  13. 話者が分かれるかどうかは、別の機能です
  14. 会議・取材・講義で、変わるところ
  15. 文字起こしを、そのまま共有しないほうがいい理由
  16. 出てくる形式と、そのあとの使い道
  17. 動画の字幕を作る場合
  18. 英語や、複数の言語が混じる場合
  19. よくある誤解
  20. 用語の対応表
  21. かかる費用の相場
  22. うまくいかないとき
  23. 選ぶときの順番
  24. 溜まった文字起こしを、あとから使う
  25. 保管するときに決めておくこと
  26. 議事録との違いを、はっきりさせておく
  27. この記事から分かれる話

やり方は3つあり、かかる時間が桁で違います。そこから書きます。

自分で打つ3〜5時間費用はかからない標準機能を使う数分無料だが制約ありサービスに任せる数分月額または従量
やり方は3つ。時間と費用が桁で違います。

3つのやり方と、かかる時間

やり方1時間の音声にかかる時間費用
人が聞いて打つ3〜5時間自分でやるなら0円
端末の標準機能数分無料(制約あり)
サービスに任せる数分月額または分単位
外注する数日60分で12,000〜18,000円が相場

いちばん上の行が、この作業の実態です。1時間の音声を人が打つと、3〜5時間かかります。聞いて、止めて、打って、戻して、また聞く。慣れた人でも音声の3倍前後は見ておく必要があります。

理由は単純で、量が多いからです。1時間の日本語の会議は、文字にするとおよそ2.5万〜3.5万字になります。原稿用紙にして60〜90枚ぶん。これを聞き取りながら打つ作業だと考えると、3倍という数字は妥当なところです。

機械に任せると、同じ音声が数分で返ってきます。ただし、そのまま使えるとは限りません。直す作業がどれだけ残るかは、音声の状態と用途で変わります。

自分で打つときの手順

機械に任せない場合の、実際のやり方です。この作業は工夫の余地が大きく、やり方次第で倍近く変わります。

先に辞書登録をします。その音声に出てくる社名・製品名・人名を、変換の辞書に入れておく。これを最初にやるだけで、打つ回数が目に見えて減ります。会議の参加者リストがあるなら、それを見ながら10分で済みます。

再生速度を落とします。0.7〜0.8倍あたりが、打ちながら聞ける速さです。等速で打とうとすると止める回数が増えて、かえって時間がかかります。

15秒戻しを使います。聞き逃したときに、スライダーを掴んで探すのは時間の無駄です。ボタン1つで戻れる機能がある道具を選んでください。

一度で完成させようとしないでください。2周に分けるほうが速く終わります。

やること
1周目聞こえたとおりに打つ。分からない箇所は「◯◯」と置いて飛ばす
2周目飛ばした箇所を埋め、読める文章に整える

1周目で悩んで止まるのが、いちばん時間を食います。分からない箇所は必ず戻ってくるので、印を付けて進めてください。

15分ずつ区切ります。1時間を通しでやると集中が落ちて、後半の精度が下がります。区切って休むほうが、結果として速く終わります。

機械に任せたあと、何を直すか

こちらのほうが現実的な使い方です。直す順番が決まっていて、上から潰すと効率がいい。

1. 固有名詞を一括で直す。同じ語は同じように間違うので、置換で一気に直せます。「紅さん」→「ベネさん」のように、1回の置換で全部片付きます。ここがいちばん時間対効果が高い。

2. 数字を確認する。日付、金額、個数。数字の誤りは読んでも気づきにくく、しかも実害が出ます。音声に戻って確認する価値があるのはここです。

3. 話者を割り当てる。話者が分かれている場合は「話者A」を実名に置き換えます。分かれていない場合は、発言の内容から補うことになります。

4. 読める文章に整える。必要なら。用途が「思い出すため」なら、この工程は要りません。

固有名詞を一括置換数字を音声で確認話者を割り当てる必要なら整文
機械の出力を直す順番。上から潰すのが速い。

1と2で止めるのが、実務ではいちばん多い形です。全部を整えようとすると、機械に任せた意味が薄れます。

日本語で難しくなる3つの理由

機械の文字起こしは、言語によって難しさが違います。日本語で特に効くのは3つです。

1つめ、同音異義語。「こうしょう」だけで、交渉・公証・考証・校章と候補が並びます。前後の文脈から選ぶ必要があり、会議のように話題が飛ぶ場面では外れやすくなります。

2つめ、固有名詞。社名、製品名、人名。辞書に無い言葉は、音の似た一般名詞に置き換わります。「ベネさん」が「紅さん」になる、といった形です。ここは自分の会議で必ず出るので、事前に登録できるサービスなら登録しておくと変わります。

3つめ、話し言葉の構造。日本語の会話は主語が省略され、語順も入れ替わります。「で、あれ、どうなりました」のような発言は、音としては正しく拾えても、意味が取れる文章にはなりません。

固有名詞辞書に無い語は音の似た語になる同音異義語文脈で選ぶ必要がある重なった発言2人が同時に話すと混ざる
機械が苦手なところは、この順に多い。

3つ目の「重なった発言」は、道具では解決しません。2人が同時に話した部分は、録音の上で1つの音として混ざっています。人の耳ならある程度分けられますが、1本のマイクで録った音からは手がかりが失われています。

「精度98%」は、何を測った数字か

比較記事や製品ページで見る数字です。測り方が書かれていないことがほとんどなので、そのままでは比べられません。

考えられる測り方だけでも、これだけあります。どれを採るかで、同じ音声の結果が変わります。

何を数えるか同じ音声でも結果が変わる
文字単位の一致率助詞の誤りも1文字として数える
単語単位の一致率固有名詞1つの誤りが大きく効く
読める文章になっているか主観が入る
どんな音声で測ったか静かな1人の朗読か、5人の会議か

いちばん効くのは最後の行です。静かな場所で1人が原稿を読んだ音声なら、どのサービスでも高い数字が出ます。5人が会議室で話した音声では、同じサービスでも大きく落ちます。

だから、公表されている数字を比べるより、自分の会議を1本通してみるほうが早く分かります。多くのサービスに無料の枠があるので、実際の音声で試せます。

機械は、どうやって音を文字にしているのか

仕組みを一段だけ。知っておくと、なぜ特定の場面で崩れるかが分かります。

音声を文字にする処理は、大づかみに言うと2つのことを同時にやっています。音の並びから「何と言ったか」の候補を出すことと、前後のつながりから「どれが自然か」を選ぶことです。

後半があるおかげで、同音異義語が正しく選ばれます。「こうしょうがまとまった」なら、前後に取引の話があれば「交渉」が選ばれる。逆に、前後の文脈が薄いと外れます。会議の冒頭で唐突に出た固有名詞、話題が切り替わった直後の一言。ここが崩れやすいのは、選ぶための材料が足りないからです。

この仕組みから、苦手な場面が決まります。どれも文脈が足りないところで起きます。

場面なぜ崩れるか
会議の冒頭文脈がまだ無い
話題が切り替わった直後前の文脈が邪魔をする
専門用語が続く辞書に無い語が連続する
複数人が同時に話す音の並びが混ざっている
早口・小声音の手がかりが足りない

このうち自分で改善できるのは、下2つです。録音の置き場所を直す、司会が「一人ずつ」と促す。上3つは道具の側の話なので、辞書登録で補うか、人が直すことになります。

用途によって、必要な精度が違います

ここを決めないと、道具選びが終わりません。すべての用途で高い精度が要るわけではないからです。

用途必要な精度直す手間
自分が思い出すため8割で足りるほぼ不要
社内で共有する議事録固有名詞と数字だけ正確に部分的に直す
取材記事の素材発言の意味が変わらない程度整文が要る
契約や証拠として残す人が全部確認する全文の確認

上2つが多数派です。「思い出すため」なら、多少の誤りは問題になりません。読んだ本人が何の話か分かればいいので、機械の出力をそのまま使えます。

一方でいちばん下の行は、機械だけでは終わりません。人が音声と突き合わせて全部確認することになるので、時間は結局かかります。ここを機械で済ませようとすると事故になります。

素起こし・ケバ取り・整文

外注するときに出てくる言葉ですが、自分でやる場合もどこまでやるかを決めておくと迷いません。3段あります。

段階何をするか
素起こし聞こえたとおりに全部書く(「えー」も含む)
ケバ取り「えー」「あのー」などを削る
整文読みやすい文章に整える(語順を直す、重複を削る)

下へ行くほど手間がかかり、外注なら料金も上がります。機械の文字起こしが返してくるのは、多くの場合ケバ取りの手前か、フィラー除去の機能を使えばケバ取りの状態です。整文は判断の仕事なので、そこから先は人が引き受けることになります。

外注する場合の相場と、段階ごとの費用はテープ起こしの相場にまとめました。頼む前に、どの段階まで必要かを決めておくと見積もりが早く出ます。

「文字起こしAI」と呼ばれているものは、2つに分かれます

この分野で「AI」と言うとき、指しているものが2つあります。混ざったまま比べると、価格も精度も噛み合いません。

何をするAIか出てくるもの
音を文字にするAI音声認識。波形を文字へ変換する発言がそのまま並んだ文章
文章を整理するAI大規模言語モデル。文字を読んで要約・分類する決定事項、宿題、章立て

「文字起こしAI」という言葉は前者を指すことが多いのですが、製品として売られているものは、たいてい後者も一緒に付いています。価格の差は、後者が付くかどうかで生まれます。音を文字にするところだけなら安く、そこから議事録の形まで作るなら高い。

見分け方は単純で、出てくる画面に「要約」「決定事項」「タスク」の欄があるかです。無ければ前者だけの道具で、文字起こしから要点を抜く作業は自分に残ります。あるなら後者まで含まれていて、そのぶん料金に乗っています。

もうひとつ、精度の話も分かれます。前者の精度は「聞き取れているか」で測り、後者の精度は「要点を外していないか」で測ります。前者が良くても後者が雑ということはあり得ます。試すときは、この2つを別々に見てください。

どの道具を使うか

3つのやり方それぞれに、具体的な入口があります。費用のかからない順に並べます。

端末の標準機能——追加の費用がかからない範囲です。iPhoneのボイスメモには文字起こしがあり、機種と言語の条件を満たせば使えます。Wordにもトランスクリプトの機能があり、Googleドキュメントには音声入力があります。それぞれ枠や制約が違うので、無料でできる範囲はこちらに整理しました。

録音済みのファイルを渡す——すでに音声がある場合です。MP3、m4a、動画ファイルなど、形式によって受け付けるサービスが変わります(音声ファイルから文字起こしする)。

録るところから任せる——会議の記録が目的なら、録音から議事録までを一続きで扱う道具があります。文字起こしはその途中の1工程になります(AI議事録とは)。

どこで処理されているかで、確認する項目が変わります

文字起こしを頼むということは、その音声をどこかへ渡すということです。渡し先によって、確認すべきことが違います。

処理される場所音声はどこへ行くか
端末の中出ない
サービスのサーバー事業者のところへ渡る
外注(人が聞く)作業する人が聞く

いちばん上は、iPhoneのボイスメモの文字起こしなどが該当します。通信せずに端末内で処理する作りなら、音声が外へ出ません。社内の規程で外部への送信が制限されている場合、この違いが決め手になります。

真ん中を選ぶ場合、確認する順番は3つです。どの会社へ渡るか、学習に使われるか、いつまで保管されるか。規約とプライバシーポリシーの両方を見る必要があり、片方だけでは分かりません(確かめる5つの質問)。

いちばん下は見落とされがちですが、人が聞くということは、その人が内容を知るということです。守秘義務の契約を結ぶのが普通ですが、社外に出せない会議なら、そもそも外注できません。

文字起こしを頼まれたときの見積もり方

社内で頼まれる立場になったときのために書いておきます。時間の見積もりを間違えると、自分が損をします。

計算の基本は、音声の長さ×3〜5です。1時間の会議なら3〜5時間。ここに次を足します。

条件追加で見る時間
参加者が5人以上+2割(誰の発言か追う手間)
専門用語が多い+2割(調べる時間)
音質が悪い+5割以上(聞き返しが増える)
整文まで求められる+5割

いちばん効くのは音質です。録音が悪いと、聞き返す回数が跳ね上がります。頼まれたときは、まず音声を5分聞いてから返事をしてください。

機械に任せる前提なら、見積もりは変わります。文字起こし自体は数分で終わるので、直す時間だけを見積もることになります。固有名詞の置換と数字の確認だけなら、1時間の会議で30分前後です。

話者が分かれるかどうかは、別の機能です

文字起こしができることと、誰が話したかが分かることは別です。ここを一緒にすると期待がずれます。

音声を文字にする処理と、「この声は誰か」を推定する処理は、中では別々に動いています。だから「文字起こしはできるが、話者は分からない」道具があります。iPhoneのボイスメモがそうで、文字にはなりますが、3人以上の会議では誰の発言か分からない一続きの文章になります。

話者が分かれるかどうかは、仕様表の別の欄を見てください。そして分かれると書いてあっても、対面の会議では崩れることがあります。崩れ方は2種類あり、片方は人が直せて、片方は直せません(2つの壊れ方)。

会議・取材・講義で、変わるところ

同じ文字起こしでも、何を録ったかで詰まるところが違います。用途ごとに見るべき項目を並べます。

いちばん困るところ対策
会議誰の発言か分からない話者分離、または冒頭で名乗る
取材・インタビュー発言の意味を変えずに整えたい素起こしを残して整文する
講義・研修専門用語が続く事前に辞書登録
商談数字と条件を間違えられない数字だけ音声で確認
電話音質が電話の帯域に制限される録り方を変える

取材の場合だけ、素起こしを残す意味があります。あとで「本当にそう言ったか」を確認する必要が出るからです。整文したものだけを残すと、直した本人しか元の発言が分からなくなります。

商談は、数字の確認に絞るのが現実的です。全文を確認する時間は取れないので、金額・数量・期日だけを音声で照合する。この3つが合っていれば、あとの誤変換は実害になりません。

文字起こしを、そのまま共有しないほうがいい理由

作った文字起こしを、そのまま関係者へ送りたくなります。多くの場合、読まれません。

2.5万字あるからです。会議に出ていない人が、2.5万字を読んで要点を掴むことはまずありません。送った側は仕事をした気になり、受け取った側は開かないという状態になります。

現実的なのは、こうです。全文を送るのではなく、要点だけを届けます。

  1. 決まったことと宿題だけを、10行にまとめて送る
  2. 文字起こしは、必要な人が見に行ける場所に置いておく
  3. 疑問が出たときだけ、該当箇所を引く

3つ目のために、時刻付きで残しておくと効きます。「何分あたりの話です」と示せると、確認が数十秒で済みます。

要点にまとめる作業をどこまで機械に任せられるかはAI議事録とは何かに、まとめ方の型は議事録の書き方にあります。文字起こしはその前段だと考えてください。

出てくる形式と、そのあとの使い道

文字起こしの結果は、テキストとして返ってきます。そのときに一緒に付いてくる情報が、道具によって違います。

付いてくるもの何に使えるか
時刻(タイムスタンプ)疑わしい箇所で音声に戻れる
話者のラベル誰の発言かを追える
字幕形式(SRTなど)動画に字幕として乗せられる
テキストのみ読むだけ

時刻が付いているかどうかが、実務ではいちばん効きます。文字起こしを疑ったとき、その場所の音声を聞き直せるからです。時刻が無いと、1時間の録音の中から該当箇所を探すことになります。

書き出せる形式は、乗り換えるときにも効きます。テキストで書き出せないサービスは、やめるときに記録を持ち出せません。

動画の字幕を作る場合

用途として多いので分けて書きます。必要なものが1つ増えます。時刻の情報です。

読むための文字起こしは、テキストだけあれば足ります。字幕は「何秒から何秒までに、この文字を出す」という情報が要るので、時刻付きで書き出せる道具を選ぶことになります。

一般的な字幕の形式はSRTとVTTです。どちらも「番号・時刻の範囲・文字」を並べただけの単純なテキストで、動画編集ソフトに読み込ませて使います。

字幕にするときは、読める文章に整える工程も要ります。画面に一度に出せる文字数には限りがあるので、素起こしのままだと収まりません。1行あたりの文字数と表示時間を決めてから整えると、あとで直す量が減ります。

動画から文字を起こす手順そのものは動画から議事録を作るにまとめました。音声だけを抜き出してから渡す方法も含めてあります。

英語や、複数の言語が混じる場合

日本語以外を扱うときの注意です。単一言語か、混ざるかで難しさが変わります。

英語だけの音声なら、日本語より結果が良くなることが多いです。学習に使われたデータの量が違うためだと言われています。専門用語や訛りがあると落ちますが、日本語ほど同音異義語の問題は出ません。

難しいのは混ざる場合です。日本語の会議に英語の固有名詞や短い英文が混じると、そこで崩れることがあります。多くのサービスは「この音声は日本語」と指定する作りになっているので、指定した言語以外の部分が苦手になります。

一度に1つの言語しか扱えないと明記しているサービスもあります。英語の会議が定期的にあるなら、対応状況を先に確認してください(英語の会議を記録する)。

よくある誤解

この分野で繰り返し見る誤解を3つ、事実で置き換えます。どれも道具選びを誤らせるものです。

「文字起こしができれば議事録ができる」——できません。文字起こしは発言をそのまま文字にしたもので、議事録は「決まったこと・宿題」に絞ったものです。2.5万字の文字起こしから、読む価値のある1,000字を作る作業が別に要ります。ここを混同すると、文字起こしを渡された相手が読まずに終わります。

「精度が高いサービスを選べば直す作業が消える」——消えません。固有名詞は辞書に無ければ間違います。どのサービスでも、自社の製品名は最初は知りません。事前に登録するか、あとで置換するかのどちらかになります。

「無料の道具では実用にならない」——用途によります。iPhoneのボイスメモやWordの機能でも、1人が静かな場所で話した音声なら十分な結果が出ます。落ちるのは、複数人が同時に話す会議です。無料か有料かではなく、音声の状態で決まります。

用語の対応表

比較記事を読むときに引っかかる言葉です。意味が分かると、仕様表が読めるようになります。

言葉意味
文字起こし/書き起こし音声を文字にする作業
テープ起こしほぼ同じ意味。外注する業務を指すことが多い
素起こし聞こえたとおりに全部書いたもの
ケバ取りフィラー(「えー」など)を削ったもの
整文読みやすい文章に整えたもの
話者分離/ダイアライゼーション誰が話したかを分ける処理
タイムスタンプ発言に付く時刻の情報
フィラー「えー」「あのー」などのつなぎの音
音声認識音を文字にする技術そのもの

「テープ起こし」だけは、いまや物理的なテープと関係ありません。カセットテープで録っていた時代の名残で、外注の業界用語として残っています。

かかる費用の相場

3つのやり方の費用を、1時間の音声あたりでそろえます。単位をそろえないと比べられません。

やり方1時間あたりの費用
自分で打つ0円(ただし3〜5時間)
端末の標準機能0円(枠の範囲内)
月額のサービス月額を使った時間で割った額
従量課金のサービス分単位の単価×60
外注(テープ起こし)12,000〜18,000円が相場

いちばん下と上の差が、この分野の実態です。人がやると高く、機械がやると安い。その代わり、機械は固有名詞を間違えます。

自分の時給を入れて計算すると、判断がはっきりします。時給2,000円の人が3時間かけると6,000円ぶんの時間を使っていることになり、月額1,000円前後のサービスなら1回で元が取れます。

うまくいかないとき

症状よくある原因
全体が崩れている音が小さい、雑音が大きい。録音の置き場所を見直す
固有名詞だけ間違う辞書に登録できるサービスなら登録する
誰の発言か分からない話者分離の機能がない、または崩れている
途中で切れている録音が止まっていた、上限時間を超えた
出力が出ない対応する形式か、ファイルの大きさの上限を確認

いちばん上が根本です。録音の質が悪いと、どの道具を使っても結果は良くなりません。文字起こしで困ったら、まず録り方を見直すほうが早く直ります(会議の録音)。

選ぶときの順番

4つを順に決めると、道具が絞れます。順番にも意味があって、上が決まらないと下は決まりません。

用途を決める必要な精度を決める話者が要るか決める無料枠で1本試す
この順に決めると、選択肢が1つか2つに絞れます。
  1. 何に使うか。思い出すためか、共有するためか、証拠として残すためか
  2. どこまでの精度が要るか。用途で決まります
  3. 誰が話したかが要るか。要るなら、対応している道具に絞られます
  4. 無料枠で自分の音声を1本通す。公表されている数字より確実です

4つ目を飛ばさないでください。同じサービスでも、自分の会議では違う結果になります。録音の環境、話す人数、扱う言葉。そこが人によって違うからです。

溜まった文字起こしを、あとから使う

作った文字起こしは、その場で読んで終わりにされがちです。溜めておくと、あとから効く使い方があります。

1つめ、過去の発言を引く。「あの件はいつの会議で決まったか」を確かめたいとき、記憶ではなく記録で照合できます。時刻付きなら、その場所の音声にも戻れます。

2つめ、同じ話を繰り返していないか見る。同じ論点が複数の会議に出てくるなら、それは決まっていない証拠です。1本ずつ読んでいると気づきませんが、横断して見ると分かります。

3つめ、引き継ぎに使う。担当が変わるとき、議事録だけでは経緯が分かりません。発言そのものが残っていると、なぜその判断になったかを追えます。

ただし溜めるだけでは、探せません。数十本を超えると、どの会議だったか思い出せなくなります。検索できる形で保管するか、AIから読ませる形にしておくかを、溜まる前に決めておくほうが楽です(会議の記録をAIに繋ぐと何が変わるのか)。

保管するときに決めておくこと

文字起こしは、元の音声より扱いに注意が要ることがあります。検索できてしまうからです。

音声のままなら、聞かないと内容が分かりません。文字になると、キーワードで一気に引けます。便利さと危うさが同じ理由から来ています。

決めておく項目は3つです。

決めること目安
どこに置くか共有フォルダか、個人の端末か。権限を確認する
誰が見られるか参加者の範囲か、部署全体か
いつまで残すか目的が済んだら消す。決めないと残り続ける

とくに人事や、社外の方が入った会議の記録は、置き場所を分けるほうが安全です。全部を同じ場所に入れると、権限をまとめて広げたときに一緒に見えてしまいます。

漏れる経路そのものの整理はAI議事録から情報が漏れる経路は4つにまとめました。個別の判断は社内規程と、必要なら弁護士にご確認ください。

議事録との違いを、はっきりさせておく

最後に、いちばん取り違えられるところをもう一度書きます。文字起こしと議事録は、別のものです。

文字起こし議事録
何が書いてあるか発言をそのまま決まったことと宿題
分量(1時間の会議)2.5万〜3.5万字1,000〜2,000字
誰のために作るか確認したい人会議に出ていない人
読まれ方必要な箇所だけ最初から最後まで
作る難しさ音を正確に拾う何を捨てるかを決める

いちばん下の行が要点です。文字起こしは「拾う」仕事、議事録は「捨てる」仕事です。だから文字起こしが完璧でも、議事録が良くなるとは限りません。2.5万字から何を残すかの判断が、そのまま議事録の質になります。

この判断を機械にどこまで任せられるかは、道具によって差が出るところです。決まったことと宿題を抜き出せるかどうかが実務での分かれ目で、そこができないと、要約が出てきても結局読み直すことになります。

作られ方の詳しい説明はAI議事録とは何かに、書く側の型は議事録の書き方にまとめました。

この記事から分かれる話

知りたいこと記事
無料でどこまでできるか文字起こしを無料でする
録音済みのファイルを渡したい音声ファイルから文字起こしする
外注するといくらかテープ起こしの相場
議事録まで自動で作りたいAI議事録とは何か
iPhoneだけで済ませたいiPhoneで文字起こしする
誰が話したかを残したい話者分離の2つの壊れ方
録音の質を上げたい会議の録音

具体的なサービスを並べた比較は文字起こしアプリの比較にまとめました。11個を同じ条件で並べてあります。


この記事は文字起こしという作業そのものの説明です。個別のサービスの仕様と料金は各社の公式ページでご確認ください。所要時間と文字数の目安は、日本語の会議を対象にした一般的な値です。

よくある質問

文字起こしとは何ですか

録音した音声を、文字のテキストに直す作業のことです。会議の議事録、取材記事、講義のノートなどを作る前段として行われます。「書き起こし」「テープ起こし」もほぼ同じ意味で使われますが、テープ起こしは外注する業務を指すことが多い言葉です。

文字起こしにはどのくらい時間がかかりますか

人が聞いて打つ場合、1時間の音声におよそ3〜5時間かかります。慣れた人でも音声の3倍前後は見ておく必要があります。機械に任せると、同じ1時間の音声が数分で返ってきます。ただし固有名詞の誤りを直す作業は残ります。

1時間の会議は何文字になりますか

日本語でおよそ2.5万〜3.5万字です。話す速さと人数で変わりますが、原稿用紙にすると60〜90枚ぶんになります。この量を人が打つのは現実的ではないので、機械に任せてから直す形が主流になりました。

無料でできますか

できます。iPhoneのボイスメモやWord、Googleドキュメントなど、標準の機能や無料の枠で文字起こしができるものがあります。ただし枠の上限や、話者が分かれないといった制約があります。詳しくは無料でできる範囲をまとめた記事をご覧ください。

機械の文字起こしはどのくらい正確ですか

音声の状態で大きく変わります。1人が静かな場所で話した音声なら実用になりますが、複数人が同時に話す会議や、固有名詞の多い専門的な内容では誤りが増えます。公表されている「精度98%」のような数字は、測った条件が書かれていないことがほとんどなので、自分の音声で試すのが確実です。

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