AIレコーダーを買う前に、その会社が3年後もあるか
2025年12月、人気だったAIペンダントが買収され、その日のうちに販売終了しました。地域によってはサービスごと終了し、データの持ち出し期限は2週間でした。ハードを買うときに何を確かめるべきかを整理します。

AIレコーダーを比較する記事はたくさんあります。価格、録音時間、対応言語、話者分離。どれも大事です。
ただ、そこにほぼ書かれていない項目がひとつあります。その会社が、3年後にあるか。2025年12月に起きたことを見てから、この項目を軽く扱えなくなりました。
何が起きたか
Limitlessというアメリカの会社が、首から下げる小さなペンダント型のレコーダーを出していました。99ドル。一日中つけっぱなしにして会話を記録し、あとからAIが要約する、という道具です。評判は良かった。日本語の紹介記事もいくつも出ています。
2025年12月5日、Metaがこの会社を買収しました。チームはReality Labsに吸収されました。
そして同じ日に、ペンダントの販売が止まりました。ここまでは、よくある話です。買収されて製品が終わる。既存の利用者には最低1年のサポートと、有料プランの無償化、データの書き出しが用意されました。対応としては、むしろ丁寧なほうです。
問題はその先でした。
7つの地域では、2週間でした
Limitlessは、7つの地域でサービス提供を終了しました。公式の告知にはこう書かれています。
2025年12月5日をもって、EU・英国・ブラジル・中国・イスラエル・韓国・トルコでの提供を終了します。
対象の利用者に与えられた猶予は、12月19日まで。告知から2週間です。その日を過ぎると、保存されていたデータは完全に削除されます。同社の別サービス(画面と音声を記録するRewind)も同時に終了し、こちらは12月19日のアップデートで記録機能そのものが無効化されました。
つまり、買った道具が、2週間の告知で使えなくなった地域があったということです。本体は手元にあるのに。
公平のために書いておくと、対象外の地域の利用者には「最低もう1年」のサポート継続が表明されています(同社CEOの発言)。「買った翌日に全部止まった」わけではありません。ただし、1年後にどうなるかは書かれていません。そして新規の販売はその日に終わっているので、開発が続く見込みは薄いというのが率直な読みです。
これは特殊な事故ではない
2025年は、日本語の文字起こしサービスが2つ終わった年でもありました。
| いつ | 何が | 告知から終了まで |
|---|---|---|
| 2025年7月31日 | CLOVA Noteβ(累計登録者100万人) | 後継は法人向けの別サービス |
| 2025年10月31日 | AI GIJIROKU(オルツ) | 約1か月 |
| 2025年12月 | Limitless(7地域) | 買収当日に販売終了・持ち出し2週間 |
無料だったから終わった、小さい会社だから終わった、という話ではありません。登録者100万人でも、上場企業でも終わります(CLOVA Noteの件・AI GIJIROKUの件)。「Metaに買収されたから特殊」と思いたくなりますが、構造の問題です。
いまのAIレコーダーは、ほぼ全部が「本体+クラウド」で動いています。本体は音を録るだけで、文字起こしも要約も会社のサーバーでやっている。だから安くて小さい。
その代わり、会社が止まると、本体はただの録音機になります。運が悪ければ、それすら怪しい。アプリの認証がサーバーを見に行く作りなら、アプリが動かなくなった時点で本体から音を取り出せなくなります。
これは欠陥ではなく、この形の道具が最初から持っている性質です。買う側が知っておけばいい話で、隠されているわけでもありません。ただ、比較記事には書かれていない。
買う前に確かめる3つ
私が確認したほうがいいと思うのは、この3つです。どれも購入前に、公式サイトかサポートに聞けば分かります。1. 文字起こしは本体だけでできるか。
クラウド必須なら、サービスが止まった瞬間に文字起こしはできなくなります。本体内で処理できる機種は、精度は落ちますが生き残ります。
- 作った議事録と文字起こしを、まとめて書き出せるか。
1件ずつコピーする方式は、100件たまっていたら実質できません。一括の書き出しがあるかどうかです。上のLimitlessの件でも、2週間で全部を手作業で救うのは無理でした。3. 書き出した形式が、他で開けるか。
独自形式のファイルだけだと、書き出せても読めません。テキスト、Markdown、PDF、DOCXのどれかで出るかを見てください。この3つが揃っていれば、会社が無くなっても記録は手元に残ります。逆にひとつでも欠けていると、その部分が人質になります。
「大手なら安心」でもない
では大手のサービスなら大丈夫か、というと、終わり方が違うだけです。大手は買収で消えるより、「機能の統合」や「提供地域の縮小」という形で止めます。告知期間は長い傾向がありますが、止まるときは止まる。Googleが何をどれだけ畳んできたかを思い出せば、規模と継続性が比例しないのは分かると思います。
結局のところ、会社の大きさではなく、書き出せるかどうかで判断するほうが確実です。それは今日、自分で確認できることだからです。
私たちにも同じことが言える
ここは正直に書きます。Recoryは大きな会社が作っているものではありません。上の基準を当てはめれば、Limitlessと同じ側です。「うちは大丈夫です」と言える立場ではない。
なので、書き出せるようにしてあります。議事録も文字起こしも、Markdownとテキストで出せます。Notionへ投稿する経路もあるので、そちらに貯めていれば、こちらが無くなってもNotionに残ります。
そして本体を買う必要がありません。手持ちのiPhoneで録るので、こちらが終わっても、手元に残るのは使えなくなった機械ではなく、いつものiPhoneです。失うものが月額だけで済むというのは、この文脈では地味に大きい差だと思っています。
それでも、こちらのサーバーが止まれば新しい文字起こしはできません。そこは他と同じです。
結論
専用機を買うこと自体は、悪い選択ではありません。電池の持ちと、置きっぱなしにできる気楽さは本物です。終日の研修や、iPhoneを別の用途で使いたい場面では、専用機のほうが素直に良い。言いたいのは、比較表の下にもう1行足してほしい、ということだけです。
この記録は、この会社が無くなっても手元に残るか。
答えが「はい」なら、あとは好みで選んで問題ありません。
買う前に候補を絞る手順は4つの質問にあります。
月額の考え方はAIレコーダーの月額は何に対して払っているのかに、iPhoneで足りるかどうかはこちらに、端末の標準の録音機能については別の記事に、買い替え先の3系統はボイスレコーダーはどれを買うかに書きました。機種の比較はPLAUDとオートメモにあります。
よくある質問
AIレコーダーの会社が終わると録音データはどうなりますか
多くの機種は本体で録って処理をクラウドで行うため、サービスが止まると文字起こしも要約もできなくなります。すでに作った議事録も、書き出しておかないと取り出せなくなることがあります。2025年12月のLimitlessの事例では、提供が終了した7地域の利用者に与えられたデータ持ち出しの期限は2週間でした。対象外の地域では最低1年のサポート継続が表明されています。
買う前に何を確認すればよいですか
3つあります。文字起こしを本体だけで行えるか(クラウド必須か)、作った議事録をまとめて書き出せるか、そして書き出した形式が他のツールで開けるか。この3つが揃っていれば、会社が無くなっても手元に記録が残ります。
大手のサービスなら安心ですか
終わり方が違うだけで、終わることはあります。大手は買収ではなく「機能の統合」や「提供地域の縮小」という形で止めることが多く、事前の告知期間は長い傾向があります。ただしどちらにせよ、書き出せるかどうかを先に確認しておくのが確実です。
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