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議事録の書き方

議事録のメモが追いつかないとき、その場でできること

会議中にメモが追いつかず手が止まったときの応急処置と、次回から追いつかなくなる前に決めておくこと。あとで直せる部分と、その場でしか拾えない部分を分けます。

会議の途中で、ペンが止まる瞬間があります。

この記事の内容(19項目)
  1. 議事録のメモが追いつかないのはなぜか
  2. 手が止まるのは、遅れるのとは別の話
  3. その場でやること:追うのをやめて、時刻を書く
  4. 録音していないときは
  5. 記号は3つまで
  6. 記号の実演:30分の会議で何が起きるか
  7. あとで埋める前提の型を用意しておく
  8. その場でしか拾えないもの
  9. 録音に頼るときの線引き
  10. 会議中にやらないこと
  11. よくある詰まりどころと直し方
  12. 会議の種類で、対処が変わる
  13. 紙とアプリ、どちらでメモを取るか
  14. 焦って頭が真っ白になったときは
  15. 会議が終わった直後にやること
  16. 自分が進行役も兼ねている会議では
  17. 次回から追いつかなくなる前に
  18. 速記は要らない
  19. 会議に入る前の30秒チェック

さっきの発言をまだ書き終えていないのに、次の話がもう2つ先に進んでいる。慌てて追いかけると、今度は目の前の話が入ってこない。そのまま会議が終わって、手元には途中で切れたメモだけが残る。これ、追いつこうとするほど深くなります。

全部書こうとしている決定と宿題だけ拾う量を減らす言葉を追っている位置だけ記すあとで戻る自分ひとりで抱えている録音に任せる会議に参加する
追いつかないとき、その場でできることは3つ。

議事録のメモが追いつかないのはなぜか

追いつかなくなる場面を分けてみると、だいたい3つのパターンがあります。原因が分かれば、その場での対処もはっきりします。

出だしでつまずくパターン。 会議が始まった直後は、資料を開いたり画面共有を待ったりで手が塞がっています。その数分に出た発言を聞き逃し、あとになって「いつの間にそこまで決まったんですか」と聞き返す羽目になる。これがいちばん多い形です。

途中から加速するパターン。 最初の10分は普通に書けていたのに、議論が煮詰まってくると発言のテンポが上がります。追いつこうとして文字を崩し、会議が終わる頃には自分の字が自分で読めなくなっている。書く速度で対処しようとするほど、この形に近づきます。

脱線から戻れなくなるパターン。 誰かの一言で話が本題から外れ、数分ほど別の話をしたあとに戻ってきます。脱線の前に書いていた内容と、戻ったあとの内容が地続きに見えなくなり、どこで区切ればいいか分からなくなります。

3つとも根っこは同じです。聞くことと書くことを同時にやろうとしているために起きています。この同時進行そのものをやめるという、もう一段手前の対処は聞きながら書けない人のための議事録に分けて書きました。この記事では、そちらへ切り替える余裕がまだない人のために、すでに遅れてしまった、その場でどうするかだけを扱います。

手が止まるのは、遅れるのとは別の話

ここまでの3つは「遅れる」形でした。これとは別に、手が完全に止まってしまう瞬間があります。遅れているだけなら追いつく余地がありますが、止まったときは再開の合図を自分で作らなければなりません。よく聞くのは次の3つです。

知らない言葉が出た。 業界用語、社内の略称、相手先だけで通じる呼び方。意味を考えた瞬間に手が止まり、そこから先の数十秒がまるごと落ちます。その場で意味を調べないでください。聞こえたとおりカタカナで書いて、横に「?」を付けて先へ進みます。正しい表記はあとで確かめれば足ります。会議中に調べると、調べているあいだの話が全部消えるので、損のほうが大きくなります。

体裁を整えようとした。 箇条書きの位置を揃える、字下げを直す、打ち間違いを消す。1回あたりは数秒ですが、そのたびに聞くほうが止まっています。整えるのは会議が終わってからです。乱れたまま進んだほうが、結果として読める議事録になります。

集中が切れた。 自分に関係の薄い議題が続くと、数分ほど意識が離れることがあります。これは気合いの問題ではなく、長い会議では起きるものとして扱ったほうが早い。戻ってきたことに気づいた時点で、時刻だけ書いて先へ進みます。飛んだ区間は録音の側に残っているので、あとから戻れます。

3つに共通しているのは、止まった原因をその場で解決しようとしていることです。分からない言葉は分からないまま、崩れた体裁は崩れたまま、飛んだ数分は飛んだまま先へ進む。解決を後ろに送れるかどうかが、最後まで書き切れるかどうかを分けます。

その場でやること:追うのをやめて、時刻を書く

いちばん効くのは、書き取るのを一度あきらめることです。代わりに時刻だけ書きます。

14:20 価格の話
14:35 納期でもめた
14:48 持ち帰りになった

これだけ。中身は書きません。

録音さえしていれば、あとでその時刻に戻れます。全部を書き取ろうとして全部を落とすより、時刻の目印が3つ残っているほうが、あとの作業はずっと楽になります。

これを覚えると、会議中の焦りがかなり減ります。書けなくても、位置さえ分かればいい、と思えるようになるからです。

録音していないときは

時刻の代わりに単語だけ拾います。文にしないのがコツです。

価格 据え置き
納期 4月 → 無理そう
稟議 先方

助詞を書こうとした瞬間に遅れます。名詞と数字だけ。あとで文にするのは、いくらでもできます。

記号は3つまで

メモを速くする方法として、記号や略語を決めておくやり方があります。◎=決定、☆=ToDo、?=要確認、→=流れ、○=賛成、×=反対——調べると7個も10個も並んでいる表が出てきます。

多すぎます。記号を10個持つと、書くたびに「これはどれか」を選ぶことになる。それは減らしたかった同時進行が、形を変えて戻ってきただけです。録音があるなら、3つで足ります。

14:20 価格 据え置き ◎
14:35 納期 4月?
14:48 見積 先→
  • = 決まった
  • = あとで聞き直す
  • = 相手の宿題(自→ なら自分)

書き取る前提の記法は、あとから読んで意味が通る必要があるので種類が要ります。録音がある前提なら、印は「時刻に貼る目印」で足りる。中身は音声の側にあるからです。4つ目を作りたくなったら、それは録音に任せられる情報です。

記号の実演:30分の会議で何が起きるか

型だけ見てもピンと来ないと思うので、架空の打ち合わせで実際にどう書くかを再現します。相手は取引先、議題は価格改定と納期の相談です。

会議が始まって2分、雑談が終わって本題に入ります。ここでまず時刻を書きます。

14:02 本題スタート

3分後、相手が価格の希望を切り出します。数字だけ拾って、判断が出たら記号を足します。

14:05 単価 現行+3%希望
14:08 弊社 検討します ?

「検討します」は前向きとも後ろ向きとも取れるので、判断を保留する「?」を付けています。ここで文章にしようとすると、次の発言を聞き逃します。数字と記号だけで止めるのがコツです。

14分、話題が納期に移り、少しもめます。声が大きくなった、というような空気の変化は書きません。決まったかどうかだけを見ます。

14:14 納期 4月希望 ↔ 弊社5月案
14:19 保留 → 見積後に再検討

「↔」は対立を表す即席の記号です。3つに絞ったはずの記号が増えていますが、これは会議の場で思いついた印であって、次回も使う正式な記号ではありません。その場限りで増やす分には構いません。あとで読めれば十分だからです。禁止しているのは、事前に10個も20個も覚えて臨むことです。

24分、脱線して雑談に入ります。ここは何も書きません。29分、雑談から本題に戻り、最後の確認が入ります。

14:29 次回 ◎ 来週水曜

会議が終わった時点で、手元に残っているのはこれだけです。

14:02 本題スタート
14:05 単価 現行+3%希望
14:08 弊社 検討します ?
14:14 納期 4月希望 ↔ 弊社5月案
14:19 保留 → 見積後に再検討
14:29 次回 ◎ 来週水曜

30分の会議に対して、書いた行は6行だけです。これで議事録が書けるのか、と不安になるかもしれませんが、書けます。録音があれば、この6つの時刻がそのまま目次になります。14:08に戻れば「検討します」と言ったときの声の調子まで確認できますし、14:19に戻れば保留になった経緯を聞き直せます。メモの役目は内容を残すことではなく、あとで戻る場所に印を付けることです。

自分の業種や会議の癖に合わせて、単語だけは入れ替えて構いません。営業なら「単価」「納期」、社内会議なら「予算」「人員」というように、よく出てくる名詞を先に決めておくと、とっさに書くときに迷いません。記号の数は3つのまま、単語の中身だけを自分用に調整する、と考えてください。

あとで埋める前提の型を用意しておく

その場のメモが時刻と単語だけになるのは前提として、会議が終わったあとに何を埋めるかを先に決めておくと、埋める作業自体が速くなります。白紙に向かうと何を書けばいいか毎回考えることになりますが、欄が決まっていれば当てはめるだけで済みます。

会議に持ち込む紙、あるいはメモアプリの1ページに、あらかじめこの形を作っておきます。

【会議名】    日付:

■ 時刻ログ(会議中に書く)


■ 決まったこと(あとで埋める)


■ 宿題(あとで埋める)


■ 次回(あとで埋める)

会議中に触るのは「時刻ログ」の欄だけです。ほかの3つは空欄のまま持ち帰り、録音を聞き直しながら、あるいは文字起こしを読みながら埋めます。空欄が先に見えていると、聞き直すときに「決まったことを探す」「宿題を探す」という目的がはっきりします。目的がない聞き直しは最初から最後まで漫然と聞くことになり、時間がかかります。

この型のポイントは、会議中と会議後で使う欄を完全に分けていることです。会議中の自分は時刻だけ書けばよく、判断は何もしません。会議後の自分は、時刻という手がかりを使いながら判断だけをします。同じ紙の上でも、やっていることは別の作業だと割り切ってください。

その場でしか拾えないもの

ここは正直に書きます。録音があっても復元できないものが、いくつかあります。

決まった瞬間。 議論が続いていたのに、誰かの一言で空気が決まる瞬間があります。録音を聞き返すと、その一言はごく普通の発言に聞こえる。場にいた人にしか分かりません。

渋られたかどうか。 「検討します」が前向きなのか、断りの言い換えなのか。声の間や表情で分かることは、テキストには残りません。

誰が黙っていたか。 発言していない人の存在は、録音からは見えません。決裁者が終始無言だった、というのは重要な情報です。

だから会議中に手で押さえる価値があるのは、この3つだけだと思っています。逆に言うと、発言の中身を書き取る作業は、丸ごと後回しにしていい

録音に頼るときの線引き

ここまで「録音があれば戻れる」という前提で書いてきました。ただし、その前提が崩れる場面もあります。線引きをはっきりさせておきます。

録音を始める前提そのものが崩れることがあります。許可を取っていない、社内規程で禁止されている、相手が難色を示した——こうした場合は、そもそも録音に頼れません。断られにくい頼み方は商談で録音の許可をもらう言い方にまとめてあるので、先に一言添える習慣にしておくと、この前提が崩れる回数自体を減らせます。

録音していても、あとから使えない場合があります。電池が切れた、空き容量が足りずに途中で止まっていた、外部マイクの接続が外れていた。会議が終わってから気づく失敗で、いちばん痛手が大きいものです。長い会議を録るときほど、開始時に「録れているか」を一度確認しておくと安心です。たとえばRecoryは1回の録音を最長4時間まで(無料のお試しは60分)受け付ける作りなので、それより長い会議を録る予定があるなら、使っているプランの上限を先に確かめておいてください。標準のボイスメモを使う場合の操作はこちらにまとめました。

録れていても、聞き取れない場合があります。複数人の発言が重なった瞬間、換気扇の音が大きい部屋、参加者がマイクから離れて話す場面。人が聞いても聞き取りにくい音声は、あとで文字にしても同じように聞き取りにくいままです。これは録音の限界というより、収録環境の限界です。重要な発言が出そうな場面では、話す人にマイクを向けるくらいの気配りをしておくと、あとで助かります。

3つとも、会議中に気づけるものと、気づけないものが混ざっています。だからこそ、決まったこと・宿題・次回の3つだけは、録音の出来に関係なく手で書いておく価値があります。録音が万全でも欠けていても、この3つさえ紙に残っていれば、議事録としては成立します。

会議中にやらないこと

ここまでは「やること」を書いてきました。同じくらい効くのが、「やらないと決めておくこと」です。

文章にしようとしない。「〜については、〜という方向で」のように助詞まで含めて書こうとすると、その数秒で次の発言を聞き逃します。名詞と数字だけで止めてください。文にするのは会議のあとの仕事です。

その場で誰の宿題か決めつけない。「たぶん先方がやる話だっただろう」で書いてしまうと、あとで録音を聞き直したときに答え合わせをする発想自体が消えます。自信がなければ「?」を付けて保留にし、あとで確認してください。

書く道具を会議の途中で変えない。紙からアプリに持ち替える、アプリを切り替える、ペンを持ち替える。切り替えている数十秒は、まるごと聞き逃す時間になります。使う道具は会議が始まる前に1つに決めておきます。

遅れを取り戻そうとして、直前の発言を書き直さない。書き漏らした行が気になっても、戻って直すのはあとにします。今の発言を聞くほうを優先してください。過去の行は、あとで録音を聞けば直せます。今の発言は、今しか聞けません。

手が止まっていることを気にしない。メモを取っていないと聞いていないと思われる、という不安から、意味のない線を引き続けてしまう人がいます。何も書かず顔を上げて聞いているほうが、話し手にはよほど伝わります。会議の冒頭で「記録は録音に任せます」と一言添えておけば、この不安自体がなくなります。

5つとも、根っこにあるのは同じ考え方です。会議中の自分の仕事は、書くことではなく聞くことです。書く量を減らすほど、この原則を守りやすくなります。

よくある詰まりどころと直し方

ここまでの方法を試した人からよく聞く詰まりどころと、直し方を並べておきます。

詰まりどころ原因直し方
決めた記号を思い出せない本番の緊張で頭が真っ白になる紙の隅に凡例を3つだけ書いておく
時刻を書くのを忘れる議論に集中すると手が止まる区切りの発言(「では」「次に」)を合図に書く癖にする
録音の開始を忘れる会議前の準備で手一杯になる入室と同時に録音ボタンを押す、を毎回の手順にする
発言者が多くて誰が話したか分からない名前を書く余裕がない座席順にA・B・Cと決め、あとで名前に置き換える
脱線のあとどこまで戻ればいいか分からない区切りの印を付けていない脱線に気づいた時点で「脱線」とだけ書いておく
メモを取りながら質問のタイミングを逃す書くことに気を取られている分からない箇所は「?」だけ書いて、質問はあとに回す

共通しているのは、どれも「その場で完璧にしようとしない」ことで直ることです。凡例を思い出せないなら数を減らす、時刻を忘れるなら合図を決める、名前が分からないなら記号で仮置きする。完璧な記録を目指すほど、逆に手が止まります。

会議の種類で、対処が変わる

ここまでの方法は、どんな会議にも共通して使えます。ただし会議の形によって、効きやすい対処とそうでない対処があります。

対面の少人数。 いちばんやりやすい形です。声の重なりが少なく、誰が話しているかも目で分かります。記号での時刻メモがいちばんきれいに機能するのはこの形です。

オンラインの少人数。 対面とほぼ同じですが、ひとつ注意があります。画面共有中は、資料に気を取られて時刻を書き忘れやすくなります。資料が動いた瞬間や、話し手が切り替わった瞬間を合図にすると、書き忘れに気づきやすくなります。録画機能があるツールなら、会議の記録としてはそちらも保険になります。

大人数の会議。 発言者が増えるほど、誰が何を言ったかを追うコストが上がります。この記事の方法は「決まったこと」に絞っているので人数が増えても大枠は崩れませんが、宿題の担当だけは慎重に扱ってください。声が重なりやすく、聞き違いが起きやすいからです。自信がなければ「?」を残し、あとで確認します。

社外が入る会議。 対処そのものは変わりませんが、宿題を書くときに一工夫要ります。「弊社」「先方」のどちらの宿題かを、その場で決めつけないことです。特に相手の発言に出てくる「うち」「弊社」は相手の会社を指すので、聞き流していると自社の宿題として書いてしまいます。ここは録音を聞き直して確定させる前提にしておくと安全です。

会議の形が変わっても、その場で書くのは時刻と記号だけ、という基本は変わりません。変わるのは、どこに注意を多めに割くかだけです。

紙とアプリ、どちらでメモを取るか

道具の選び方に唯一の正解はありませんが、それぞれ向き不向きがあります。

紙は、切り替えが要りません。 開く、探す、タップするという操作が発生しないので、視線を発言者から外す時間がいちばん短く済みます。欠点は、あとで文字起こしや録音と突き合わせるときに、手で入力し直す手間が発生することです。

アプリは、あとの作業と地続きになります。 書いたメモがそのままデジタルで残るので、議事録を作るときにコピーして使えます。欠点は、ロック解除やアプリの起動という一手間が、紙より遅れの原因になりやすいことです。とっさに開けない状態だと、かえって手が止まります。

迷ったら、会議の直前に開いて準備できるかどうかで選んでください。急に決まった会議なら紙、事前に予定されている会議ならメモアプリを開いておく、という使い分けが現実的です。どちらを選んでも、書く内容は時刻と記号だけという原則は変わりません。

焦って頭が真っ白になったときは

ここまでの方法を知っていても、本番で焦ると全部飛ぶことがあります。そのときのための、最後の手段を書いておきます。

いったんペンを置いてください。 書けなくなった時点で、書こうとすること自体をやめます。1分でいいので、聞くことだけに戻ります。書けなかった1分より、聞けなかった1分のほうが、あとで取り返しがつきません。

再開するときは、いまの時刻からで構いません。 「さっきの部分が書けていない」という焦りは、あとの録音で埋められます。焦って過去に戻ろうとすると、今の発言も逃します。書けなかった部分は、あきらめて手放してください。

焦りそのものは、経験を積んでも完全には消えません。消そうとするのではなく、焦った状態でも実行できる手順を先に決めておくほうが確実です。時刻だけ書く、記号だけ足す。手順が単純なら、頭が真っ白でも手は動きます。

会議が終わった直後にやること

会議室を出た瞬間、あるいはオンライン会議を閉じた瞬間が、実はいちばん重要な2分間です。ここで一手間かけると、あとの作業がかなり楽になります。

時刻の横に、単語を1つだけ足してください。 「14:20」だけだと、あとになって何の話だったか思い出せなくなることがあります。「14:20 価格」のように単語を1つ添えておけば、記憶が新しいうちに最低限の手がかりが残ります。文章にする必要はありません。単語1つで十分です。

この2分は、次の予定に移る前にやってください。 次の会議に移動しながら、あるいはメールを開いてから思い出そうとしても、たいてい間に合いません。人の記憶は、次の作業に意識が移った瞬間から急速に薄れます。会議の余韻が残っているうちの2分が、いちばん費用対効果の高い時間です。

録音があるなら、この2分はもっと短くて済みます。 単語を足す作業すら、録音があれば急がなくて構いません。数時間後、あるいは翌日に聞き直しても、時刻さえ残っていれば同じ場所に戻れます。急ぐ理由があるのは、記憶だけを頼りにしている場合です。

自分が進行役も兼ねている会議では

記録係と進行役を兼ねている場合、対処はもう一段シンプルにする必要があります。両方を完璧にこなす余地は、そもそもありません。

進行を優先してください。 場を回す判断のほうが、その場でしかできません。メモは進行の片手間で構わず、極端な場合は時刻すら書けなくても仕方がないと割り切ります。

開始と同時に、録音だけは必ず押してください。 ほかの何もできなくても、これだけは押せます。進行に追われて記録が0行になっても、録音さえあれば議事録はあとから作れます。

参加者の一人に頼んでおく手もあります。 「今日は自分が進行するので、決まったことだけメモしてもらえますか」と頼んでおくと、進行に集中できます。これは聞きながら書けない人のための議事録で書いた「聞くことと書くことを分ける」を、進行役と記録係の間で分ける形に応用したものです。

次回から追いつかなくなる前に

応急処置の話をしましたが、そもそも追いつかない状態は、たいてい会議が始まる前に決まっています。

書く項目を減らしておく。 会社のひな形に「目的」「前提条件」「議論の経緯」「所感」と並んでいると、全部埋めようとして追いつかなくなります。埋まらない欄は、無いほうがましです。項目の決め方は別の記事に書きました。

記録係と発言者を分ける。 「議事録を取りながら議論にも参加しろ」は、構造として無理があります。両方やると、たいてい両方が中途半端になります。

録音する。 一言添えるだけで、たいてい断られません。これで会議中の手が空きます。

アジェンダをもらっておく。 話す順番が事前に分かっていると、話題が切り替わる瞬間を予測できます。予測できれば、その瞬間だけ意識を向けて時刻を書けばよくなり、常に身構えている必要がなくなります。アジェンダの作り方は別の記事にまとめました。

速記は要らない

ときどき「速く書けるようになりたい」という相談を受けますが、業務の議事録に関しては、練習する価値は薄いと思っています。速く書けるようになるより、書く量を減らすほうが確実です。しかも今日からできます。

決まったこと、宿題、次回の日程。この3つ以外は、あとから復元できます。この3つを軸にした書き方は議事録とはにまとめました。

会議に入る前の30秒チェック

ここまでの内容を、会議室に入る前に確認できる形にまとめておきます。すべて数十秒で終わります。

  • 録音アプリ(またはRecoryの赤いボタン)を開いてあるか
  • 使う記号を3つ、頭の中で言えるか(◎・?・→)
  • メモの1行目に、あとで埋める欄(決まったこと・宿題・次回)を用意したか
  • 紙とアプリ、どちらを使うか先に決めているか
  • 進行も兼ねる会議なら、記録を頼める相手がいないか一瞬だけ考えたか

このチェックに30秒かける習慣があるだけで、会議中に「あれ、どうやって書くんだっけ」と考える回数が減ります。考える回数が減れば、それだけ聞くことに使える時間が増えます。追いつかなくなること自体を完全には防げませんが、崩れ方はずっと軽くなります。

この記事はあくまで、その場しのぎの応急処置です。同時進行そのものが常につらいと感じる場合は、応急処置を重ねるより、会議中は聞くことだけに専念する組み立てに変えたほうが、結局は早く楽になります。その具体的なやり方は聞きながら書けない人のための議事録にまとめました。


会議のあとの作業を減らす話は議事録が苦手なのは、聞きながら書こうとしているからに、録音から議事録までの流れはiPhoneで録った音声を文字にする方法にまとめてあります。Recoryを使う場合は、録音を止めると文字起こしと議事録ができます。議事録の各行に時刻が付くので、上で書いた「14:20 価格の話」を自分で書かなくても、同じことが自動でできる形になります。

よくある質問

会議中に手が止まってしまったら、どうすればよいですか

追いかけるのをやめて、時刻だけ書いてください。「14:20 価格の話」と書いておけば、あとから録音のその場所に戻れます。全部書き取ろうとして全部落とすより、はるかにましです。

あとから思い出せる部分と、思い出せない部分の違いは何ですか

発言の中身は、録音があれば復元できます。復元できないのは「決まった瞬間」と「相手の温度」です。誰がどの顔で頷いたかは記録に残らないので、そこだけ手で押さえます。

会議の録音は、相手に伝えずに録ってもよいですか

確実なのは、録音を始める前に一言伝えることです。「記録に残したいので録音させてください」と言って断られる場面はそう多くありませんし、伝えておけば、あとで共有するときにも話が早い。社外の会議や、伝えるかどうかで迷う場面の考え方は会議の録音と同意に整理しました。

AI議事録ツールに任せれば、会議中のメモは要らなくなりますか

大部分は要らなくなりますが、ゼロにはなりません。録音に残らないものが3つあります。決まった瞬間の空気、渋られたかどうか、誰が黙っていたか。この3つは音声には写らないので、会議中に一言だけ書き残す価値があります。逆に言えば、書くのはその3つだけで足ります。

速記の練習をしたほうがいいですか

業務で議事録を書くだけなら、必要ないと思います。速く書けるようになるより、書く量を減らすほうが確実で、身につけるのも早いです。

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