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場面別の記録術

商談の議事録に何を残すと、次の商談が楽になるか

商談記録は社内共有のためだけの書類になりがちです。次回の自分が使える記録にするために残すべき5項目と、担当者が逆になる事故を防ぐ書き方をまとめます。

商談議事録が、社内報告のためだけの書類になっていないでしょうか。

この記事の内容(17項目)
  1. 商談議事録に何を残すか:次回の自分が本当に必要とするもの
  2. 記入例1:初回訪問
  3. 記入例2:見積提示後
  4. 記入例から読み取れること
  5. 担当が逆になる事故
  6. 対策1:担当を2択で書く
  7. 対策2:発言者に立場を書く
  8. 決裁者・予算・期限を押さえる
  9. 温度を、あとから比較できる言葉で残す
  10. 商談中にメモを取るべきか
  11. 商談中に手元に残すもの、あとで清書するもの
  12. CRMに書くのは、そのあとでいい
  13. CRMに入れる項目
  14. 社内共有の粒度
  15. 次の商談の前に、記録をどう使うか
  16. よくある失敗と直し方
  17. Recoryの場合

上司に見せるために書いて、CRMに貼って、それきり読まれない。次に同じ相手と会う前に読み返して役に立った記憶がないなら、残している項目が間違っている可能性があります。

決まったこと条件と期限決まらなかったことなぜ保留か相手が渋った点温度感次に何が起きたら進むか進む条件相手側の宿題誰も追わないと止まる
3か月後の自分が読み返すとき、必要になるのはこの5つ。

商談議事録に何を残すか:次回の自分が本当に必要とするもの

3か月後、同じ会社との2回目の商談に向かうとします。移動中に前回の記録を開いて、知りたいのは何か。たいてい、この5つです。

知りたいことありがちな記録必要な記録
どこまで話が進んだか「提案を実施」「価格は合意、納期で保留」
なぜ止まったか(書かれていない)「4月納品が必須だが、こちらは6月」
相手の温度(書かれていない)「担当者は前向き、部長が渋い」
誰が決める人か参加者の名前だけ「決裁は部長。担当は稟議を書く側」
こちらの宿題「見積提出」「4月納品の可否を確認して回答(〜3/5)」

左の書き方でも報告書としては通ります。ただ次の商談の準備には使えません。とくに抜けやすいのが「なぜ止まったか」と「相手の温度」です。決まったことは誰でも書きますが、保留の理由と質感は書かれないまま忘れられます。そして次の商談で、同じ論点をもう一度最初から話すことになります。

記入例1:初回訪問

型だけでは書き方が伝わらないので、実際に埋めた例を2本出します。会社名と人名は架空のものです。1本目は初回訪問で、まだ何も提示していない段階の商談です。

【△△商事 商談(第1回)】
日時:2026-09-08 10:00-10:45 場所:先方オフィス
先方:△△商事/購買部 課長 中村様、担当 小林様
自社:営業部 松田

■ 先方の状況・課題
- 現在は他社(B社)の受発注システムを利用中。契約更新が2027年3月
- 月末の締め処理で入力ミスが月に数件発生しており、経理から指摘が続いている
- 決裁は中村課長までで通ることが多いが、金額次第で部長決裁が必要(上限は不明・要確認)

■ 提示した内容
- 条件:概算のみ。デモは次回に持ち越し
- 価格:提示していない

■ 先方の反応
- 前向き。ただし「まずは現行システムの契約更新時期(2027年3月)まで様子を見たい」との発言あり
- 入力ミスの解消には強い関心を示した

■ 決まったこと
- 次回、実際の画面を見せながらデモを行う(9/22予定)
- 入力ミスが起きている業務フローを、先方から資料で共有してもらう

■ 次のアクション
- [ ] 自社:デモの日程調整と、業務フロー資料受領後の提案書作成 / 9/22まで
- [ ] 先方:現行フローの資料を送付 / 9/12まで

■ 次回
日時:2026-09-22(予定) 議題:デモ、価格感のすり合わせ

初回訪問でいちばん重要なのは「先方の状況・課題」の欄です。決裁の流れ(中村課長までで通るか、部長決裁が要るか)を、この段階で聞けるだけ聞いておくと、あとの商談が早くなります。上の例では上限が「不明」のまま残していますが、分からないことを分かったことのように書かないのが実務では大事です。次回までに確認する項目として、そのまま残しておきます。

記入例2:見積提示後

2本目は、見積を提示したあとの2回目の商談です。金額が出てくると、書くべきことが変わります。

【△△商事 商談(第2回)】
日時:2026-09-22 14:00-15:00 場所:先方オフィス
先方:△△商事/購買部 課長 中村様、担当 小林様、システム部 部長 田中様(新規同席)
自社:営業部 松田

■ 先方の状況・課題
- 前回からの継続。加えて、システム部の田中部長が今回から同席(決裁への関与が判明)

■ 提示した内容
- 条件:初期費用33万円、月額5.5万円(50ID)。導入支援込み
- 価格:上記のとおり提示。現行システムとの並行稼働期間は1か月を想定

■ 先方の反応
- 中村課長は前向き。価格は「予算の範囲内」との発言
- 田中部長は保留。「セキュリティ要件(ISMS準拠かどうか)を確認してから」との条件付き
- 決裁は田中部長の承認が必須と判明(前回は不明だった点が確定)

■ 決まったこと
- ISMS準拠の確認資料を自社から送付する
- 価格・導入時期については田中部長の確認待ちで保留

■ 次のアクション
- [ ] 自社:ISMS準拠の証明資料一式を送付 / 9/26まで
- [ ] 先方:資料確認後、田中部長より可否を回答 / 10/3めど

■ 次回
日時:未定(田中部長の回答待ち) 議題:契約条件の最終確認

1回目と比べると、「先方の反応」の書き方が変わっているのが分かります。決裁者が増えたこと自体を、決まったことの欄ではなく状況の欄に明記しています。田中部長が同席した時点で、決裁のルートが変わったからです。ここを書き漏らすと、次回の準備で「なぜ急に話が止まったのか」が分からなくなります。

保留の理由も具体的です。「セキュリティ要件を確認してから」とだけ書けば、次回までに用意すべき資料が自動的に決まります。「保留」とだけ書く記録との違いがここに出ます。

記入例から読み取れること

2本の記入例を並べると、同じ相手との商談でも、回を追うごとに書く内容の重心が変わっていくのが分かります。初回は「状況・課題」の欄がいちばん厚く、情報を集める段階だからです。2回目は「先方の反応」と「決まったこと」が厚くなり、判断を引き出す段階に移っています。

この変化そのものを記録しておく価値があります。決裁者が「不明」から「田中部長」に変わったように、商談が進むと前回は分からなかったことが分かるようになります。逆に言えば、前回の記録に書いた「不明」「未確認」がそのまま残っているなら、その商談は実質的に足踏みしているということです。

もう一つ、2本目の例で「決裁者が増えたこと」を状況の欄に書いている理由も補足します。決まったことの欄に書くと、まるで良いニュースのように読めてしまいますが、実際には確認すべき相手が増えて、商談の難度が上がったという意味です。書く場所を間違えると、次回の準備の優先順位を読み違えます。

型そのものは、議事録のテンプレート8種の商談・アライアンス型と同じです。埋め方の感覚をつかんだら、そちらのひな形をそのまま使い回してください。

担当が逆になる事故

社外の議事録で、実務上いちばん高くつく間違いがこれです。

「じゃあ、その条件で見積もりを出します」

この一文の主語は誰か。自社が出すのか、先方が出すのか。録音を聞けば分かりますが、文字だけでは決まりません。そして間違えると、両方が「相手がやる」と思ったまま2週間が過ぎます。商談では、この2週間が失注の理由になり得ます。

対策1:担当を2択で書く

アクションアイテムの担当を、「自社」「先方」の2つだけで書きます。

■ 次のアクション
- [ ] 自社:4月納品の可否を確認して回答 / 〜3/5
- [ ] 先方:稟議の起案 / 〜3/10

「営業部の田中」「先方側」「先方の法務」のように粒度を混ぜると、読み返したときに関係が追えません。2択なら、逆になっていても一目で分かります。

対策2:発言者に立場を書く

文字起こしから議事録を作るときは、発言者の行に立場を書き込んでからまとめます。

話者A(自社):納期は6月を想定しています
話者B(先方):4月でないと厳しいです

参加者の欄に正しい所属が書いてあっても、本文を読み進めるあいだにそれを覚えていられるとは限りません。これは読む人でも、AIに要約させる場合でも同じです。会話の一人称は「話を進めている側」に強く引っ張るので、上に書いてある表より、直前の文脈のほうが強い。行の頭に「(先方)」と書いておけば、覚えておく必要がなくなります。

なお一人称の読み替えにも注意が要ります。先方の発言の「うち」「弊社」は先方を指し、「御社」「貴社」は自社を指します。ここを機械的に置き換えると、宿題の持ち主が入れ替わります。

決裁者・予算・期限を押さえる

商談の記録で、次回の自分をいちばん助けるのはこの3つです。決裁者は誰か。予算はどれくらいか。いつまでに決めたいか。この3つが埋まっていれば、あとの項目が多少粗くても商談は前に進められます。

聞き方には順番があります。初回からいきなり「ご予算はおいくらですか」と聞くと、身構えられることが多いです。効くのは、課題の深掘りから自然につなげる聞き方です。

押さえる項目聞き方の例書き方
決裁者「この件は、どなたまでご確認いただく流れになりますか」役職と氏名。「〜部長の承認が必要」まで具体的に
予算「概算でも構いませんので、目安があれば教えてください」金額のレンジ。「未確認」なら未確認と明記
期限「導入したいタイミングはございますか」具体的な日付や時期。「検討中」も理由付きで残す

決裁者は、1回の商談で確定するとは限りません。上の記入例2のように、2回目になって初めて別の決裁者が登場することがあります。だから「決裁者:中村課長」と一度書いて終わりにせず、商談のたびに「これは変わっていないか」を確認する項目として扱ってください。

予算も同じです。初回で聞けなくても、見積を出す段階では必ず一度は話題になります。「予算については言及なし」と書いておくのも記録です。空欄にすると、あとで「聞き忘れたのか、聞いたけど教えてもらえなかったのか」が分からなくなります。

期限については、相手の期限と自社の期限を分けて書くことが要点です。「先方が導入したい時期」と「こちらが返答すべき期限」は別のものなので、同じ欄に混ぜると、どちらの締め切りか分からなくなります。記入例の「次のアクション」欄で、自社と先方を分けて期限を書いているのはこのためです。

聞いても答えてもらえないことはあります。とくに初対面では、予算や決裁の話を警戒されることがあります。その場合は無理に聞き出そうとせず、「現時点では確認できず」と正直に記録してください。空欄より、確認できなかったという事実のほうが、次回の自分にとっては情報です。次に会うときに、もう一度同じ聞き方を試すか、別の角度から聞くかを判断する材料になります。

温度を、あとから比較できる言葉で残す

「前向き」「保留」「渋っている」。商談の記録では、こうした言葉をよく使います。ただし、これだけでは3か月後に読み返しても、前回と今回のどちらが良い方向に進んだのかが比較できません。

比較できる記録にするコツは、温度そのものではなく、温度の根拠になった発言や態度を書くことです。「前向き」と書く代わりに、「価格は予算の範囲内という発言があった」と書けば、次回読んだときに「今回は何が根拠で前向きと判断したか」を同じ基準で比べられます。

回を重ねる商談では、温度の記録を並べて見るだけでも、案件の進み方が分かります。1回目「様子見」、2回目「前向きだが決裁者待ち」、3回目「決裁者の懸念が解消」——このように並べれば、どの段階で何が動いたかが一目で分かります。逆に、毎回「前向き」とだけ書いていると、3回目でもまだ何も進んでいないのか、実は着実に進んでいるのかが記録からは判断できません。

これは1人の担当者が長く同じ相手を追いかける商談ほど効きます。半年、1年と続く大型の商談では、記録を読み返す頻度そのものが増えるので、根拠までセットで書いておく手間は、あとで何倍にもなって返ってきます。担当が途中で交代する場合はなおさらです。後任は温度の記録だけを頼りに引き継ぐことになるので、根拠が書かれていないと、前任者に聞き直す以外に手段がありません。経緯を引き継ぎにどう使うかは引き継ぎ資料に足りないのは経緯に分けて書きました。

商談中にメモを取るべきか

取らない方がいい、というのが私の意見です。商談で相手を見ていない時間は、そのまま情報を落とす時間です。相手が言い淀んだ瞬間、資料のどのページで前のめりになったか、価格を出したときの表情。これらは記録に残らないうえ、いちばん価値があります。

手を止めて聞いた方が、相手にもよく伝わります。代わりに録音します。商談の冒頭で、

「記録を取りたいので、録音させてください」

と伝えれば、断られることはめったにありません。むしろ丁寧な印象になります。録音そのものについては、個人情報保護委員会がQ&Aで、伝える義務までは負わないという整理を示しています。ただし相手先の入館規則や自社の規程が優先しますし、個別の判断は弁護士にご確認ください。詳しくは対面の会議を記録する方法に書きました。

それでも断られることはあります。渋る相手に食い下がる必要はありません。素直に引いてメモに切り替え、会議の最後に決定事項を読み合わせるのが安全です。録音していい会議とやめておく会議の線引きは録音していい会議・やめておく会議の線引きにまとめてあります。

商談中に手元に残すもの、あとで清書するもの

商談中にメモを取らないほうがいいと書きましたが、何も書かないという意味ではありません。相手の目を見ながらでも書ける量に絞れば、メモと傾聴は両立します。

商談中に手元に残していいのは、数字と固有名詞だけです。金額、日付、担当者の名前、決裁のルート。これらは記憶で復元しようとすると、いちばん誤りやすい情報でもあります。相手が口にした瞬間に、単語だけメモしておきます。

それ以外——先方の反応や温度感、状況の背景——は、商談が終わった直後に思い出しながら書くほうが、かえって正確になります。相手の表情や間合いは、話を聞きながら同時にメモできるものではなく、あとから振り返って初めて言語化できることが多いからです。この考え方は議事録が苦手なのは、聞きながら書こうとしているからに詳しく書きました。

清書のタイミングは、商談の直後がいちばん精度が高くなります。移動の電車の中でも、次の予定に入る前の5分でも構いません。時間が経つほど、「前向きだった」の記憶は薄れて、「まあまあだった」に均されていきます。

CRMに書くのは、そのあとでいい

「商談記録はCRMに直接」と決めている組織は多いと思います。最終的にはそれが正しい。

ただ、商談直後にCRMのフォームを開いて埋めるのは負担が大きい。項目が多く、選択肢を選ばされ、必須欄が埋まらないと保存できない。結果として移動中には書けず、夜に思い出しながら書くことになります。記憶が薄れた状態で書いた記録は、必ず情報量が落ちます。

順番を変えます。まず議事録の形で残し、そこからCRMへ転記する。転記は5分ですが、書き起こす作業とは負荷がまったく違います。

CRMに入れる項目

CRMへ転記するとき、何を書けばいいか毎回悩む人は多いと思います。答えは、この記事の冒頭に挙げた5項目と同じです。決まったこと・決まらなかったこと・相手が渋った点・次に何が起きたら進むか・相手側の宿題。この5つをCRMの入力項目としてそのまま使えます。

CRMの項目元にする欄入れる中身
商談ステータス決まったこと/決まらなかったこと「見積提示済み・決裁待ち」のように、状態が分かる形で
決裁者・関係者先方の状況・課題役職と人数。決裁者が変わったら更新する
予算感提示した内容金額のレンジ。「未確認」も値として残す
導入時期・期限次のアクション相手の希望時期と、自社の回答期限を分けて
保留の理由先方の反応「渋った点」をそのまま。理由の質感まで残す
次のアクション次のアクション担当(自社/先方)と期限をセットで

このうち最も削られやすいのが「保留の理由」です。ステータスを「保留」に変えるだけで満足してしまい、なぜ保留なのかを書かないままにする人が多い。CRMの自由記述欄は空けておかず、記入例2の「セキュリティ要件を確認してから」のような具体的な一文を必ず入れてください。

もう一つ、フィールドを増やしすぎないことも大事です。項目を10個も20個も用意すると、埋めるだけで疲れて、結局いちばん大事な「保留の理由」が空欄のまま残ります。上の6項目で足りないと感じたら、まず今の6項目がきちんと埋まっているかを確認してから、増やすかどうかを検討してください。

社内共有の粒度

商談の記録は、共有する相手によって粒度を変える必要があります。全員に同じ量を渡すと、上司には物足りず、チームには重すぎる、ということが起きます。

上司への報告は、結論から。決まったこと・保留の理由・次のアクションの3行で足ります。経緯を全部読ませる必要はありません。上司が知りたいのは「この案件は進んでいるか、止まっているか」であって、商談の流れそのものではないことがほとんどです。

チームへの共有は、次に困る人のために。同じ相手に別の担当者が営業をかけてしまう、という事故を防ぐのが目的です。会社名・決裁者・保留の理由の3つが分かれば十分で、全文を読ませる必要はありません。社内のチャットで共有するなら、議事録が読まれない理由に書いたとおり、決定事項だけを本文に置き、全文は別リンクにする形が読まれやすくなります。

案件を引き継ぐときだけ、全文が要ります。担当が変わるときは、経緯を知らない人がゼロから状況を把握する必要があるため、ここだけは記入例のような詳しい記録がそのまま役に立ちます。逆に言えば、引き継ぎの予定が無い案件に、毎回全文レベルの記録を作る必要はありません。

粒度を決める基準はシンプルです。「この記録を、担当者以外の誰が、いつ、何のために読むか」を先に考えてください。読む人と場面が決まれば、書く分量は自然に決まります。迷ったときは、粒度を細かくする方向ではなく、まず上司向けの3行が作れているかを確認してください。そこができていれば、チームへの共有も引き継ぎ用の全文も、そこに情報を足すだけで済みます。

次の商談の前に、記録をどう使うか

記録は、書いた瞬間より、次の商談の直前に読み返すときに価値を発揮します。移動中の5分で読むとして、順番を決めておくと迷いません。

1. 決まらなかったことから読む。決まったことは覚えていますが、なぜ保留になったかは忘れています。ここを最初に読むことで、今日の商談で最初に触れるべき話題が分かります。

2. 相手の温度を確認する。前回「前向き」だったのか「渋っていた」のかで、今日の切り出し方が変わります。温度が記録されていないと、この確認そのものができません。

3. 自社の宿題が終わっているかを確認する。約束した資料を送り忘れていないか、期限を過ぎていないかは、商談の場で信頼を左右します。相手より先に自分の宿題を確認してください。

4. 決裁者と予算に変化が無いかを確認する。前回の記入例のように、決裁者は途中で増えることがあります。最新の記録が前回のままで止まっていないか、商談の前に一度疑ってください。

この4つを移動中に確認できる状態にしておくには、記録がすぐに開ける形で残っている必要があります。紙のメモやノートに手書きしている場合、この「直前に読み返す」工程がいちばん崩れやすいところです。ノートが手元に無い、どのページだったか探す時間がかかる、といった小さな摩擦が積み重なると、結局は記録を読まずに商談へ向かうことになります。検索できる形で残しておくことが、内容の正確さと同じくらい実務では効きます。

よくある失敗と直し方

ここまでの内容を、失敗の形で並べ直します。自分の記録がどれに当てはまるか、書いたあとに見比べてみてください。

よくある失敗何が起きるか直し方
「好感触だった」とだけ書く次回、何が決め手だったか分からない決め手になった発言や条件を具体的に書く
保留の理由を書かない同じ論点を次回もう一度話すことになる「何を確認してから」を必ず添える
担当を「先方側」のように曖昧に書く誰の宿題か分からず、両者とも動かない「自社」「先方」の2択で書く
決裁者の変化に気づかない想定より難度が上がった商談を、前回のまま進めてしまう商談のたびに決裁者の欄を見直す
CRMへの転記を先送りする記憶が薄れた状態で転記し、情報量が落ちる商談直後、記録の形でまず残す

表の中でいちばん見落とされやすいのは、4番目です。決裁者が増えたこと自体は悪いニュースではありませんが、対応を変えないまま進めると、あとになって「なぜ急に止まったのか」が分からなくなります。記入例2で状況の欄にこれを明記したのは、この失敗を避けるためです。5つとも、書く分量を増やす対策ではなく、書く場所と書き方を変えるだけの対策であることに注目してください。負担を増やさずに直せるからこそ、実際に続けられます。

Recoryの場合

Recoryは外回りの商談を想定して作ったiPhoneアプリです。この記事の内容に対応するところを挙げます。

  • 商談・アライアンスの章立てを用意しています。先方の状況/提示した内容/先方の反応/決まったこと/次のアクション、の順です
  • アクションの担当は「自社」「相手先」の2択で出します
  • 文字起こしの各行に立場を書き込んでから議事録を作ります。上に書いた事故への対策です
  • 先方マスタに会社名・担当者・役職を登録しておくと、次回から議事録に実名で出ます。「話者A」ではなく「田中部長」になります
  • 案件ごとに自動で分類されるので、同じ会社の商談が時系列で並びます。次回の準備はここを開くだけです
  • 会議中に「ここまでのまとめ」を出せます(有料プラン)。長い商談の途中で認識を合わせたいときに使えます

できないことも書きます。CRMへの自動連携はありません(Notion・Slackへの自動投稿はできます)。CRMへは書き出したテキストを貼る形になります。また電話での商談は録音できません。iPhoneの標準の通話録音は「電話」アプリの機能で、そちらで録ってから取り込む形になります。対面と、スピーカーから流れている音が対象です。

複数の商談を並行して抱えている場合、案件ごとに記録が分かれていることが前提になります。同じ相手の1回目・2回目・3回目が時系列でつながっていて初めて、上に書いた「温度の比較」や「決裁者の変化」に気づけます。案件をまたいで記録が混ざっていると、この比較そのものができません。

商談の記録は、報告のためではなく次の商談のために残すものです。項目をそう組み替えるだけで、読み返す価値のある記録になります。

商談の場で録る手順は録音の仕方に、残す型は議事録の書き方とテンプレートにあります。

社内の会議も含めた一般的な形は議事録とはにまとめました。商談では求められるものがかなり違います。


商談の記録がそのまま日報の材料になる点は営業日報が面倒なのは、記憶で書いているからに書きました。

よくある質問

商談を録音してもよいですか

個人情報保護委員会は、自分が参加している会話の録音について、録音していること自体を相手に伝える義務までは負わないという整理を示しています(同委員会「ガイドラインに関するQ&A」1-10)。ただし個別の判断が要る場面は弁護士にご確認ください。ただし商談では信頼関係が資産なので、冒頭に「記録を取りたいので録音させてください」と伝えるのが通例です。相手先の入館規則や自社の規程で禁止されている場合はそちらが優先します。

商談記録はCRMに直接書くべきですか

最終的にはCRMに残すのが正解です。ただし商談直後にCRMのフォームを開いて埋めるのは負担が大きく、後回しにされて記憶が薄れます。先に議事録の形で残し、そこからCRMへ転記する方が結果的に情報量が多くなります。

商談の議事録で最も抜けやすい項目は何ですか

「決まらなかったこと」と「相手が渋った点」です。決定事項は誰でも書きますが、保留になった理由と温度感は書かれないまま忘れられます。次回の商談で最初に必要になるのはこの2つです。

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