オフラインで文字起こしと議事録はできるか
通信を使わずに音声を文字にする方法はあります。ただし端末内で処理する以上、できることに線が引かれます。何が可能で何が無理かを、実際の選択肢と一緒に整理しました。

飛行機の中、電波の届かない現場、そして「録音を社外に出してはいけない」職場。
理由は違っても、通信を使わずに音声を文字にしたいという要求は同じくらいよく聞きます。結論から書くと、文字起こしまでは十分できます。議事録まで求めると、急に選択肢が減ります。
そもそも何が通信を必要としているのか
音声を文字にする処理は、端末の中でもできます。実際、iOS標準のボイスメモは端末内で処理しているので、機内モードでも文字起こしが動きます。試してみると分かります。
では、なぜ多くのアプリが通信を要求するのか。理由は2つです。
モデルが大きい。 精度の高い音声認識のモデルは数GBあります。端末に置くとストレージを食うし、処理も重い。サーバーに置いて共有するほうが、提供する側には都合がいい。
議事録の生成が別の処理だから。 文字起こしと、そこから決定事項や宿題を抜き出す処理は、まったく別の仕組みです。後者は今のところ大きな言語モデルが必要で、これを端末内で動かすのは現実的ではありません。だから線はここに引かれます。
| 端末内でできるか | |
|---|---|
| 録音 | ○ |
| 文字起こし | ○(精度は落ちることがある) |
| 話者分離 | △(対応するアプリはある) |
| 要約・議事録化 | × に近い |
| 固有名詞の学習 | × |
実際の選択肢
1. iOS標準のボイスメモ(無料・オフライン)
いちばん確実です。iPhone 12以降・iOS 18.0以降なら、機内モードでも文字起こしが出ます。
代わりに、話者は分かれません。要約もありません。詳しくは別の記事に書きましたが、「自分のメモをあとから文字で探せるようにする」ための機能です。
録音を社外に出せない要件なら、これがいちばん安全な選択肢だと思います。Appleのサーバーにも送られません。
2. 端末内で完結するアプリ
Whisper Notes のように、100%端末内で処理すると明記しているアプリがあります。話者ラベルにも対応しているとされています。Speechy もオフラインでの音声認識を持っています。
これらは標準機能より対応言語や書き出しの形式が豊富なことが多く、標準では足りないがクラウドには出せないという条件に噛み合います。ただし、私はどちらも実際に長時間の会議で試していません。精度と、長い音声での安定性は、ご自身の音源で確かめてください。端末内処理は機種の性能に左右されるので、他人の評価があてになりにくい領域です。
3. 録音だけオフライン、文字起こしはあとで
いちばん現実的な折衷案かもしれません。電波の無い場所では録るだけにして、戻ってから処理する。
多くのアプリがこの形を取れます。Recoryも録音自体は電波が無くてもできて、通信が戻ってから送る作りです。
ただしこれは「オフラインで使える」とは言えません。音声は最終的に外へ出ます。社外に出してはいけない録音には使えない、という意味では1や2とはまったく別物です。
4. 従来型のICレコーダー
通信という概念がそもそもありません。OM SYSTEMのVoice-Trekが約¥11,878、乾電池2本で約53時間。
文字起こしは付いていないので、そこは人がやるか、あとから別の手段に通すことになります。詳しくはソニーがICレコーダーをやめる話に書きました。
「オフライン対応」の読み方に注意
ここは一度確かめたほうがいいところです。「オフラインでも使えます」と書いてあるアプリの一部は、通信が戻った時点で送信します。録音はオフラインでできる、という意味で書かれていることがある。
社外に出せない録音を扱うなら、確認すべきは「オフラインで動くか」ではなく、「音声がどこへ送られるか」です。プライバシーポリシーの第三者提供の項に、送信先の事業者名が並んでいるはずです。並んでいなければ、それはそれで確認が要ります。
Recoryは、この記事では選択肢に入りません
正直に書きます。Recoryはオフラインでは使えません。
録音は電波が無くてもできますが、文字起こしと議事録の生成はサーバーで行います。音声はSonioxとGoogleへ送られます(送信先はプライバシーポリシーに全部書いてあります)。だから、
- 録音を社外に出せない職場 → iOS標準か、端末内完結のアプリか、ICレコーダー
- 飛行機や電波の無い現場で録るだけ → Recoryでも可(あとで処理される)
- 通信を使わずに議事録まで作りたい → いまのところ現実的な答えが無い
3つ目については、正直に「無い」と書いておきます。端末内で議事録の生成まで実用的にこなすものを、私はまだ見つけていません。数年後には変わるかもしれませんが、いまはそうです。できないことの一覧はRecoryにできないことにまとめてあります。
端末の中だけで完結する範囲は録音の仕方にまとめてあります。外へ出す場合に何が起きるかはAI議事録とは何かのほうで、2段の処理のどちらが通信を必要とするかを分けて書きました。
よくある質問
オフラインで文字起こしはできますか
できます。iOS標準のボイスメモ(iPhone 12以降・iOS 18.0以降)は端末内で処理するので通信が要りません。端末内で完結するサードパーティのアプリもあります。ただし要約や議事録化まで端末内でやるものは、選択肢がかなり限られます。
音声を社外に出せない職場でも使えますか
端末内で完結するものであれば、音声が外へ出ません。ただし「オフラインでも使える」と書いてあるだけのアプリは、通信が戻った時点で送信することがあります。利用規約とプライバシーポリシーで送信先を確認してください。
Recoryはオフラインで使えますか
使えません。録音そのものは電波が無くてもできますが、文字起こしと議事録の生成はサーバーで行います。音声はSonioxとGoogleへ送信されます。通信を使えない要件があるなら、この記事の別の選択肢を選んでください。
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