ユーザーローカル音声議事録システム——無料で、音声を保存しない作り
東証上場企業が2020年から無償で提供しているブラウザ型のサービスです。公式に「会議中の音声が保存されることはありません」と明記されています。できることと、会議の記録として使うときの限界を公式の記載で整理しました。

株式会社ユーザーローカルが2020年9月15日から無償で提供しているサービスです。ブラウザで開くだけで使えて、登録も費用もかかりません。
この記事の内容(17項目)
無料の議事録ツールは珍しくありませんが、このサービスには他と違う点があります。公式に、音声を保存しないと書かれていることです。
会議中の音声が保存されることはありません
公式に書かれている5つの注意
サービスのトップページに、注意として5つ並んでいます。そのまま引きます。
- 会議中の音声が保存されることはありません
- このサービスで記録されたテキストデータは削除することが可能です
- Chrome, Edge, Safari ブラウザに対応しています
- イヤホン等の着用を推奨しています(スピーカーの反響音が誤認識の原因となるため)
- 取得したデータをこのサービス以外の目的に使用することはありません
1つめと5つめが、この記事で扱う軸です。音声が残らず、目的外に使わないと明記されている。無料のサービスでここを書いているのは多くありません。
3つめのブラウザ対応も実務では効きます。専用のソフトを入れる必要がないので、会社の端末でインストールの許可が下りない環境でも使えます。
何ができるか
公式の使い方ガイドに書かれている機能を、抜かずに並べます。無料のサービスとしては項目が多い部類です。
| 機能 | 何をするか |
|---|---|
| 会議URLの共有 | クリックでURLがコピーされ、参加者に配ると議事録を共有できる |
| タイトル変更 | 既定は「西暦/月/日(開始時刻)ミーティング」 |
| 名前変更 | 参加時は「User〇〇」。あとから変更できる |
| マイクのオン・オフ | 既定はオン。オフにすると議事録に記録が残らない |
| 文字起こしの編集 | 認識結果を修正できる。他人の発言は修正できない |
| ワードクラウド | 会議中のトピック単語を表示。単語をクリックすると該当箇所が赤くマークされる |
| 感情認識 | 「ポジティブ・ネガティブ」と「5感情(喜び・好き・悲しみ・恐れ・怒り)」の2種類 |
| 単語出現頻度 | 名詞・動詞・形容詞・感動詞の頻度。品詞を切り替えられる |
| CSVダウンロード | 文字起こしされたテキストを書き出せる |
| 議事録の削除 | 文字起こし・ワードクラウド・感情認識・単語出現頻度がすべて消える |
「他人の発言は修正できない」というのが、この作りの性格を表しています。参加者それぞれが自分の発言だけを直せる。誰かが全体を書き換えることはできません。
話者が分かれる仕組みが、他とは違います
ここを取り違えると期待がずれます。このサービスは、音声から話者を推定していません。
やり方はこうです。会議URLを参加者に配り、各自が自分のブラウザで参加する。すると、それぞれのマイクから拾った発言が、その人の発言として記録されます。「User〇〇」という初期名が付き、あとから実名に変更できます。
つまり参加者ごとに別の入口から発言が届くので、誰の発言かが最初から分かっている。Web会議ツールが話者を正確に分けられるのと同じ理屈です。
裏返すと、対面の会議で1台の端末を共有する使い方では分かれません。会議室の中央に1台置いて全員の声を拾うと、すべてが1人の発言として記録されます。対面で使うなら、参加者全員が自分の端末で参加する形になります。
対面が難しい理由そのものは対面の会議をAIで記録するにまとめました。1本のマイクに混ざった音からは、手がかりが失われています。
分析機能は、この分野では珍しい
ワードクラウド、感情認識、単語出現頻度。議事録サービスでここまで分析を持つものは多くありません。
もともとこの会社は、テキストマイニングとSNS分析のツールを提供しています。その技術を議事録に載せた形です。プレスリリースでも特徴として「テキストマイニングによって、会議中にどんな話題が多かったのかひと目でわかる」「ディープラーニング技術で感情やネガポジを時系列で判定可能」と挙げられています。
実務でどう使うかは、目的によります。議事録として決まったことを残す用途では、分析は要りません。一方、次のような場面では効きます。
- 会議の振り返り。どの話題に時間を使ったかが1枚で分かる
- 1on1や面談の傾向を見る。感情の推移を時系列で追える
- 繰り返す論点を見つける。同じ単語が毎回上位に来るなら、決まっていない証拠
ただし感情認識の結果を人事の評価に使うことは避けてください。機械の判定であり、根拠の説明ができません。
実際に始めるまでの手順
公式の使い方ガイドに沿って書きます。登録の手続きがないので、開いてから会議を始めるまでが短いのが特徴です。
- ブラウザで開き、「新しくミーティングを始める」を押す
- タイトルを変える(既定は「西暦/月/日(開始時刻)ミーティング」)
- 自分の名前を変える(既定は「User〇〇」)
- 「会議URLを共有」を押して、参加者にURLを配る
- 参加者がURLを開くと、その人の発言も記録され始める
2と3を先にやってください。あとから変えられますが、参加者が増えてから「User03」がどこにいるか探すことになります。
マイクは参加時に既定でオンです。「マイクON」と書かれたボタンを押すと、議事録に記録を残さない設定に切り替わります。発言したくない場面では、ここを切ることになります。
終わったら、画面右上のダウンロードボタンからCSVで書き出す。残す必要がなければ、同じく右上の削除ボタンで消せます。削除すると文字起こし・ワードクラウド・感情認識・単語出現頻度がすべて消え、以降は閲覧できません。
イヤホンの推奨は、実は重要です
注意書きの4つ目に軽く書かれていますが、結果に直結します。守らないと、話者が分かれる利点が失われます。
イヤホン等の着用を推奨しています(スピーカーの反響音が誤認識の原因となるため)
このサービスは参加者ごとにマイクから発言を拾う仕組みです。だから、拾う音が混ざると仕組みが崩れます。スピーカーで音を出すと、他の参加者の声が自分のマイクにも入ります。そうすると、他人の発言が自分の発言として記録されてしまう。
結果として起きるのは2つです。同じ発言が複数の参加者の欄に重複して並ぶ、そして誰の発言か分からなくなる。話者が分かれるという利点が、そこで失われます。
参加者全員にイヤホンを使ってもらうのが前提です。1人でもスピーカーで参加すると、その人の欄が他の人の発言で埋まります。会議の前に一言伝えておくほうが確実です。
会議の記録として使うときの限界
正直に書きます。このサービスだけで議事録を完結させるのは難しい場面があります。理由は4つです。
1つめ、音声が残りません。これは利点でもありますが、あとから聞き直して確認できないという意味でもあります。文字起こしを疑ったとき、元の音に戻れません。「言った言わない」の確認には使えません。
2つめ、要約が付きません。公式の機能一覧に、要約や議事録の自動生成はありません。文字起こしと分析までで、決まったことを抜き出す作業は人がやります。
3つめ、参加者全員の協力が要ります。話者を分けるには全員が自分の端末で参加する必要があります。「録る人が1人いれば済む」形ではありません。
4つめ、ブラウザのタブに依存します。ブラウザ型のサービス共通の弱点で、タブを離れると止まることがあります。長い会議では、録音を別に確実に取っておくほうが安全です(ブラウザで文字起こしする)。
提供している会社について
無料のサービスを使うときは、誰が提供しているかを見ておく価値があります。続く見込みが変わるからです。
株式会社ユーザーローカル。プレスリリースによれば、2019年に東証一部へ上場した技術ベンチャーで、証券コードは3984。所在地は東京都港区芝、代表取締役社長は伊藤将雄氏です。
主力はこの議事録サービスではありません。Web解析(User Insight)、SNS分析(Social Insight)、AIチャットボット、AIテキストマイニング、法人向け生成AIツールが並んでいます。議事録は、その技術を使った無償のサービスという位置づけに見えます。
これは判断材料になります。主力事業で収益を上げている会社が、技術の応用として無償で出している。個人が趣味で運営しているサービスとは、続く見込みの立て方が違います。
とはいえ、無償のサービスが終わらない保証はありません。CLOVA Note βは累計登録者100万人でしたが2025年7月31日に終了しました。長く残す記録は、CSVで書き出して手元に置いておくほうが確実です。
向く場面・向かない場面
向く
- 無料で試したい。登録も費用もかからない
- 音声を保存されたくない。公式に保存しないと明記されている
- オンライン会議で、参加者全員が自分の端末を持っている
- 会議の傾向を分析したい。ワードクラウドと感情認識が付く
- 端末にソフトを入れられない職場。ブラウザだけで動く
向かない
- 対面の会議で、1台の端末を共有する。話者が分かれません
- あとから音声を聞き直したい。音声が残りません
- 要約や議事録の形まで欲しい。文字起こしと分析まで
- 長時間の会議。ブラウザ型の弱点が出ます
- 記録を長く保管したい。CSVで書き出す運用が要ります
どういう場面で、このサービスが選ばれるか
指名検索で来る方は、すでに一度は使ったことがあるか、使っている人から聞いた方が多いはずです。どんな場面で選ばれているサービスなのかを、ここまでに書いた特徴から整理します。
1つめ、社内の決裁を通さずに今すぐ試したい場面。費用がかからず、ブラウザを開くだけで始まります。有料サービスの導入には決裁が要る職場でも、無償のサービスなら試すこと自体に許可が要りません。
2つめ、音声を外部に残したくない場面。公式に「会議中の音声が保存されることはありません」と明記されているので、録音データが手元にも相手にも残らない前提で会議に臨めます。機密性の高い商談より、むしろ「録音そのものを避けたい」という社内規程がある職場で選ばれやすい性質です。
3つめ、オンライン会議で、参加者全員が自分の端末を持っている場面。会議URLを配って各自が参加する仕組みなので、全員がパソコンやスマートフォンでオンライン会議に入っている状態と相性がいい。逆に、会議室に集まって1台のマイクを囲む場面では、この記事の前半に書いたとおり話者が分かれません。
4つめ、会議の傾向を分析したい場面。ワードクラウドや感情認識は、議事録を作るためではなく、会議そのものの振り返りに使う機能です。決まったことを文書として残すのではなく、「今回はどんな話題に時間を使ったか」を見たいときに選ばれます。
逆に、選ばれない場面もはっきりしています。あとから音声を聞き返して確認したい人、対面の会議が中心の人、決定事項と宿題を自動で整理してほしい人には、このサービスの設計そのものが合いません。ここは欠点というより、「音声を残さない」という設計を選んだことの裏返しです。向く場面と向かない場面は表裏一体で、どちらか一方だけを見ても実態はつかめません。
導入の前に、見ておくべき観点
無料だからといって、確かめずに使い始めると、あとで期待とずれることがあります。契約が要らないサービスほど、自分で観点を持って見る必要があります。
| 観点 | このサービスでの答え | 見る理由 |
|---|---|---|
| 誰が使うか | 参加者全員が自分の端末を持てるか | 対面1台では話者が分かれない |
| 何を残したいか | 文字起こしと分析まで。要約や議事録の形は無い | 決定事項の整理は自分でやる前提になる |
| 音声を残したいか | 残らない仕組み | あとから聞き直す用途には使えない |
| 誰が運用するか | 個人の判断で始められる | 長く使うなら保管の運用も個人任せになる |
| 続く見込みがあるか | 主力事業の技術を無償で提供する形 | 無償のサービスは終わることもある |
上の3つは、使う前に自分で答えを持てる項目です。下の2つは、使いながら見えてくる項目になります。とくに「音声を残したいか」は、あとから変えられません。録っている最中に判断を変えることはできないので、使い始める前に決めておく必要があります。
「続く見込みがあるか」を見るときの判断材料は、決算の発表ではなく、無償のサービスが本業の技術を使って出されているかどうかです。この記事の後半に書いたとおり、この会社の主力はWeb解析やSNS分析で、議事録サービスはその技術の応用として無償で提供されています。個人が趣味で運営しているサービスや、単体の収益化を狙って始まったサービスとは、続く見込みの立ち方が違います。とはいえ、CLOVA Note βのように累計登録者100万人のサービスでも終了した例があるので、無償だから安心と決めつけず、長く残す記録は都度CSVで書き出しておくのが確実です。
観点を持てたら、あとは10分で確かめられます。
- タイトルと自分の名前を、参加する前に変えておく。あとから探すときに楽になります
- 1人でテストの発言をしてみる。文字起こしがどの程度の精度か、自分の会議で使う言葉で確かめます
- CSVでダウンロードしてみる。書き出しの形式と中身が、自分の用途に合うかをここで見ます
- 削除ボタンの位置を確認する。残したくない会議のあと、消し忘れないためです
この4つは、本番の会議の前に済ませておける確認です。無料のサービスは仕様が変わることもあるので、契約が要らないからこそ、使う前の10分を惜しまないほうがいいと思います。
他の無料の選択肢と比べる
無料で文字起こしをする道は、これ以外にもあります。性質が違うので、目的で選び分けてください。
| 上限 | 話者 | 音声の扱い | |
|---|---|---|---|
| ユーザーローカル | 記載を確認できず | 参加者ごとに分かれる | 保存しない |
| iPhone ボイスメモ | 時間の制限なし | × | 端末に残る |
| Word トランスクリプト | 月300分 | ○ | クラウドへ |
| Notta 無料 | 月120分・1回3分 | ○ | クラウドへ |
いちばん右の列が、このサービスの独自性です。他は音声がどこかに残りますが、ここは残らないと明記されています。
なお1回あたりの上限については、公式ページに記載を確認できませんでした。長い会議で試す場合は、途中で切れないか確かめてから本番に使ってください。サービスを横断した比較は文字起こしアプリの比較にまとめました。
他の選択肢と、どう並べて考えるか
「ユーザーローカル音声議事録システム」を指名で探している方は、すでに候補として何かを持っている方が多いはずです。同じ枠で比べられる相手を、性質ごとに並べます。
同じ「無料・音声を残さない」という条件で比べるなら、代わりはほとんどありません。上の表のとおり、無料の文字起こしはいくつもありますが、「音声中心・保存しない」ことを明記しているサービスは多くありません。ここが、他社と競合するというより独自の立ち位置になっている理由です。似た条件のサービスを探すより、この立ち位置に合っているかどうかで判断したほうが早く決まります。
同じ「無料」という条件だけで比べるなら、iPhoneのボイスメモが対抗馬になります。ボイスメモは時間の制限がなく端末に最初から入っていますが、話者は分かれず、音声は端末に残ります。話者を分けたいけれど対面が中心という条件なら、ボイスメモよりも端末で録る型のアプリのほうが噛み合います。
「決定事項と宿題まで欲しい」なら、そもそも比べる段が違います。このサービスは文字起こしと分析までで、要約や議事録の形を作る機能はありません。議事録の形まで欲しい場合は、議事録アプリの比較にある、決定事項と宿題まで作る製品と比べることになります。
費用を払ってでも音声を残したいなら、方向性がそもそも逆になります。このサービスの特徴は「残さない」ことにあるので、あとから聞き返す前提の使い方とは相性が良くありません。まず「残すか、残さないか」を決めてから、比べる相手を選んでください。この1点を先に決めるだけで、比較表の残り8割は読まなくても済むようになります。
対面か、オンラインかも、比べる前に決めておく価値があります。この記事の前半に書いたとおり、話者が分かれる仕組みは参加者それぞれが自分の端末から入ることが前提なので、対面が中心の職場ではこのサービスの利点の半分が生きません。対面の会議が多いなら、無料か有料かにかかわらず、端末で録る型のアプリから見たほうが早く候補にたどり着きます。
公式に確認できなかったこと
正直に並べます。探して見つけられなかった項目です。
- 1回あたりの録音時間の上限
- 保存できる議事録の件数の上限
- 文字起こしの対応言語
- 記録されたテキストの保管期間(削除は可能と明記あり)
- 有料プランの有無
このうち最初の2つは、実際に使ってみれば分かる範囲です。長く使う前提なら、テキストの保管期間は問い合わせておく項目になります。
Recoryとの違い
RecoryはiPhoneのアプリで、対面の会議を1台で録ることに寄せています。このサービスとは形が違うので、住み分けを書きます。
| ユーザーローカル | Recory | |
|---|---|---|
| 費用 | 無料 | 月¥980から |
| 入口 | ブラウザ | iPhoneアプリ |
| 対面で1台 | 話者が分かれない | ここが主 |
| 音声 | 保存しない | 保存する(期間はプラン別) |
| 要約・議事録 | なし | あり |
| 分析 | ワードクラウド・感情認識 | なし |
オンライン会議で、参加者全員が端末を持っていて、無料で済ませたいなら、こちらのほうが合理的です。費用がかからず、分析まで付きます。
Recoryが当たるのは、会議室に集まる打ち合わせで、iPhone1台を机に置いて録り、要約まで欲しい場合です。音声を保存するので、あとから聞き直せます。合わない条件はまとめてあります。
機能と注意事項は2026年9月3日時点の公式サイト(voice-dashboard.userlocal.jp)と使い方ガイドの記載、および2020年9月15日のプレスリリースによります。無償のサービスは提供条件が変わることがあります。利用前に公式ページでご確認ください。
よくある質問
ユーザーローカル音声議事録システムは無料ですか
無料です。株式会社ユーザーローカルが2020年9月15日から無償で提供しており、サービスのページのタイトルにも「(無料)」と入っています。料金プランや有料版の案内は、公式ページに記載を確認できませんでした。
音声データは保存されますか
公式ページに「会議中の音声が保存されることはありません」と明記されています。記録されたテキストデータは削除でき、「取得したデータをこのサービス以外の目的に使用することはありません」とも書かれています。ただし音声が残らないので、あとから聞き直して確認することはできません。
どのブラウザで使えますか
公式に「Chrome, Edge, Safari ブラウザに対応しています」と記載があります。専用のソフトを入れる必要はありません。あわせて、スピーカーの反響音が誤認識の原因になるため、イヤホン等の着用が推奨されています。
複数人の発言は分かれますか
分かれます。「会議URLを共有」をクリックして参加者にURLを配ると、参加者ごとに発言が記録されます。ただしこれは音声から話者を推定しているのではなく、参加者それぞれのブラウザから発言を集める仕組みです。対面の会議で1台のマイクを共有する使い方では分かれません。
書き出しはできますか
CSVでダウンロードできます。画面右上のダウンロードボタンから、文字起こしされたテキストを書き出せます。音声ファイルは残らないので、書き出せるのはテキストだけです。
文字起こしアプリの比較——詰まるのは「月の合計」ではなく「1回の上限」です
ブラウザだけで文字起こしする——インストールできないPCでの選択肢と限界
無料で議事録を最後まで作る——成立する3つの組み合わせ