法人の議事録は、種類ごとに義務が違う——条文で確かめた一覧
一般社団法人、社会福祉法人、NPO法人、管理組合。それぞれ根拠の条文も、保存年数も、閲覧できる人も違います。e-Govの条文原文から確かめて表にしました。NPO法人だけは作成義務の条文が見当たりません。

「議事録は10年保存」と一括りに言われますが、法人の種類と会議体で条文が違います。保存年数も、閲覧できる人も、署名が要るかどうかも変わります。同じ法人の中でさえ、総会と理事会で扱いが分かれます。
e-Govの法令検索から条文の原文を取って確かめました。この記事は法的助言ではなく、どの条文に何が書いてあるかの索引です。個別の判断は所管の官庁か専門家へ。
一覧
| 法人 | 会議体 | 作成義務 | 備置き(主たる事務所・本店) | 従たる事務所・支店 |
|---|---|---|---|---|
| 一般社団法人 | 社員総会 | 法人法57条1項 | 10年 | 5年・写し(免除あり) |
| 一般社団法人 | 理事会 | 法人法95条3項 | 10年(97条1項) | 規定なし |
| 社会福祉法人 | 評議員会 | 社福法45条の11第1項 | 10年 | 5年・写し(免除あり) |
| 社会福祉法人 | 理事会 | 社福法45条の14第6項 | 10年(45条の15) | 規定なし |
| 株式会社 | 株主総会 | 会社法318条1項 | 10年 | 5年・写し(免除あり) |
| 株式会社 | 取締役会 | 会社法369条3項 | 10年(371条1項) | 規定なし |
| NPO法人 | 総会 | 条文で確認できず | — | — |
| 管理組合 | 集会 | 区分所有法42条1項 | 保管義務あり・年限の定めは確認できず | — |
理事会・取締役会には従たる事務所への備置き規定がありません。総会系だけが写しの備置きを求められる構造です。支店に理事会議事録を置いていないこと自体は、条文に反しません。
従たる事務所への写しは、免除される場合がある
見落とされやすい点です。3つの法律とも、同じ形のただし書が付いています。原文を引きます。
ただし、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合であって、従たる事務所における次項第二号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっているときは、この限りでない。 (一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 57条3項)
会社法318条3項も社会福祉法45条の11第3項も、ほぼ同じ文言です。電子で作っていて、支店や従たる事務所から閲覧・謄写の請求に応じられる仕組みがあれば、写しを置かなくてよいという趣旨になります。
閲覧できる人が、会議体で違う
ここが実務でいちばん効きます。誰に見せる義務があるかで、保管の仕方も変わるからです。
| 会議体 | 誰が | 条件 |
|---|---|---|
| 社員総会(一般社団) | 社員及び債権者 | 業務時間内はいつでも |
| 評議員会(社会福祉法人) | 評議員及び債権者 | 業務時間内はいつでも |
| 株主総会 | 株主及び債権者 | 営業時間内はいつでも |
| 理事会(一般社団) | 社員 | 裁判所の許可が必要(97条2項) |
| 理事会(一般社団) | 債権者 | 責任追及に必要なとき・裁判所の許可 |
総会系は誰でも見られるが、理事会系はハードルが高いという設計です。理事会の議事録を「社員から請求されたから出す」という運用をしていると、条文の建て付けとずれます。なお一般財団法人では、197条の読み替えによって評議員は裁判所の許可なしに理事会議事録を閲覧できます。一般社団法人の社員とは扱いが違うので、同じ「法人法」でも混同しないでください。
NPO法人だけ、作成義務の条文が見当たらない
特定非営利活動促進法と同施行規則を全文で調べました。条文中の「議事録」の出現箇所を、すべて数えた結果です。
- 法律に「議事録」は 5か所。すべて所轄庁への提出書類としての言及
- 施行規則に「議事録」は 0か所
- 28条(事業報告書等の備置き)が挙げる書類に、議事録は含まれていない
つまり、総会議事録の作成義務・記載事項・備置き期間を定める条文が見当たりません。11条1項7号が定款の絶対的記載事項として「会議に関する事項」を挙げており、運営ルールは各法人の定款に委ねられる構造です。とはいえ、実務では作ることになります。議事録の謄本を求められる場面が5つあるからです。
| 手続き | 条文 |
|---|---|
| 設立の認証申請 | 10条1項6号「設立についての意思の決定を証する議事録の謄本」 |
| 定款変更の認証申請 | 25条4項 |
| 定款変更の届出 | 25条6項 |
| 合併の認証申請 | 34条4項 |
| 2以上の都道府県に事務所がある場合の関係知事への提出 | 52条2項 |
作成義務は無いのに、認証と届出を通すために事実上作らざるを得ない。この構造を知らないと「うちは義務が無いから作らなくていい」と判断してしまい、定款変更のときに困ります。過去にさかのぼって作り直すことはできません。
全文を書く義務は、どこにもない
調べた範囲では、どの法人形態も「議事の経過の要領及びその結果」で足ります。区分所有法だけは法律本体に書いてあります。
議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。(42条2項)
他は府省令です。会社法施行規則72条3項2号が「株主総会の議事の経過の要領及びその結果」、同101条3項4号が「取締役会の議事の経過の要領及びその結果」、法人法施行規則11条3項2号が「社員総会の議事の経過の要領及びその結果」。言い回しまで揃っています。法定の場面で述べられた意見や発言についても、求められているのは「その意見又は発言の内容の概要」です。逐語の文字起こしを添付する必要はありません。
押印について
条文の文言は「署名し、又は記名押印しなければならない」です(会社法369条3項、法人法95条3項、社会福祉法45条の14第6項)。押印だけを求める規定は見当たりませんでした。区分所有法はさらに明確で、押印の語がありません。
前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名しなければならない。(42条3項)
電磁的記録で作る場合は「署名に代わる措置」(同42条4項)が要ります。ただし、登記の添付書面として使う場合は別の要件があります。ここは司法書士または法務局にご確認ください。
AIをどこまで使えるか
法定の議事録でも、「議事の経過の要領」の下書きまではAIが速い部分です。録音から日時・場所・審議の流れを起こす作業がここに当たります。任せられないのは次です。
- 決議の結果。「承認可決」「賛成◯名・反対◯名」は、解釈の余地なく確定させる
- 出席者の確定。誰がその場にいたかは、記録ではなく事実の問題
- 異議の有無。議事録に異議をとどめない者は決議に賛成したものと推定される、という条文があります(会社法369条5項、法人法95条5項、社会福祉法45条の14第8項)
- 署名・押印・備置き
音声を外部のサービスへ送ってよいかも、機密度の高い会議では先に判断が要ります。理事会や評議員会は、内容そのものが外に出せない性質のものが多い(漏れる経路は4つ)。
労働安全衛生法にもとづく安全衛生委員会は、開催の頻度・周知・保存年数が別に定められています(3年保存と周知の義務)。
条文で決まっている種類の議事録でも、当日のメモから起こす手順は共通です(議事録の書き方とテンプレート)。
条文は2026年8月31日時点でe-Gov法令検索から取得した現行版によります。この記事は条文の所在を示すもので、法的助言ではありません。個別の判断は所管の官庁、または弁護士・司法書士へご相談ください。株式会社の取締役会・株主総会については別記事に詳しく書いています。
よくある質問
議事録は何年保存する必要がありますか
法人の種類と会議体で違います。一般社団法人の社員総会は主たる事務所に10年(法人法57条2項)、従たる事務所に写しを5年。社会福祉法人の評議員会も同じ10年と5年(社会福祉法45条の11)。株式会社の株主総会は本店10年・支店に写しを5年(会社法318条)です。
NPO法人の総会議事録に作成義務はありますか
特定非営利活動促進法と同施行規則を全文で調べたところ、作成義務を定める条文は見当たりませんでした。法律に出てくる「議事録」5か所は、すべて所轄庁への提出書類としての言及です。ただし設立の認証や定款変更の届出で議事録の謄本が求められるため、実務上は作成することになります。
議事録に押印は必要ですか
条文の文言は「署名し、又は記名押印しなければならない」で、押印だけを求める規定は見当たりません。区分所有法42条3項は「署名しなければならない」で押印の語がありません。ただし登記の添付書面として使う場合は別の要件があるため、司法書士または法務局にご確認ください。
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