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議事録の書き方

取締役会・株主総会の議事録——法定の記載事項と、AIに任せてよい範囲

会社法が作成と10年の備置を義務づけている議事録は、普段の会議メモとは別物です。記載事項の整理と、小さな会社がひとりで回すときの実務、AIを使うならどこまでかをまとめました。

普段の会議の議事録は、書き方を会社が自由に決められます。取締役会と株主総会は違います。会社法が作成を義務づけ、記載事項と保存期間まで決めている、法律上の文書です。

登記や紛争の場面で「無い」「書いてない」が発覚すると、そこから遡って作ることはできません。小さな会社ほど後回しになりがちな場所なので、実務の形に整理します。なお、これは実務の整理であって法的助言ではありません。登記に使う議事録の細部は、司法書士か法務局に確認してください。

株主総会議事録本店10年・支店に写し5年(318条)取締役会議事録本店10年のみ(371条)記載事項議事の経過の要領及びその結果署名取締役会は必要・株主総会は不要
会社法の議事録。備置きの場所と年数が違う。

まず、義務の全体像

根拠保存
株主総会議事録会社法318条本店に10年・支店に写しを5年(※免除あり)
取締役会議事録会社法369条(作成)・371条(備置)本店に10年

※ 支店への写しの備置きには免除の定めがあります。会社法318条3項にただし書があり、 議事録を電磁的記録で作成していて、支店で閲覧・謄写の請求に応じられる措置 (会社法施行規則227条2号。本店のサーバーへ支店の端末から接続して閲覧できる仕組み) をとっていれば、支店への備置きは要りません。 なお取締役会議事録には支店備置きの規定がそもそもありません(371条は本店のみ)。

取締役会を置いていない会社でも、株主総会の議事録は要ります。役員が家族だけの会社でも同じです。「実際に集まっていないから書くものがない」は通りません——決議があったことにするなら、その手続き(書面決議など)にも議事録・記録が要ります。

記載事項——チェックリスト

条文と施行規則で決まっている中身を、実務のチェックリストに直すとこうなります。株主総会議事録

  • 開催の日時・場所
  • 議事の経過の要領と、その結果
  • 出席した役員等の氏名
  • 議長の氏名
  • 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

取締役会議事録

  • 開催の日時・場所
  • 議事の経過の要領と、その結果
  • 決議に反対した取締役がいれば、その旨(異議をとどめない出席者は賛成と推定されます
  • 出席した取締役・監査役の署名または記名押印(電磁的記録なら電子署名)

「議事の経過の要領」は全発言の記録ではありません。どの議案が、どう審議され、どう決まったかが追える程度の要約です。逐語の文字起こしを添付する必要はありません。

小さな会社の実務——3つだけ守る

上場企業の法務部がやることを全部やる必要はありません。ひとりで回すなら、この3つです。

1. 開催のたびに、その場で日付を確定する。 あとから思い出してまとめて作る運用は、日付の整合が崩れた時点で全部が疑わしくなります。

2. 決議の結果だけは一言一句を確定させる。 「承認可決」「賛成◯名・反対◯名」。経過の要領は要約でよくても、結果は解釈の余地なく書きます。

3. 備置場所を決める。 10年ぶんを「探せば出てくる」状態にしない。紙ならファイル1冊、電子なら決まったフォルダに、年度順で。

AIに任せてよい範囲

録音から議事録を作るAIを、この用途で使うなら、線引きはこうなります。任せてよい:日時・場所・議事の経過の要領の下書き。録音を聞き直して経過をまとめる作業は、AIがいちばん速い部分です。

人が必ず確認する:決議の結果・異議の有無・出席者。ここは法的効果に直結します。とくに「誰が異議を述べたか」は、役員会のような同性・年齢の近い数人の会議では話者分離が崩れやすい(うちの実測でも、この条件で5人が3人に畳まれました)。発言者の特定が要る箇所は、機械の出力を信じずに人が確定してください。

そもそもの前提:音声を外部に送ってよいか。取締役会は、会社でいちばん機密度の高い会議です。ほとんどのAI議事録サービスは音声を外部のサーバーで処理します(Recoryも同じで、送信先6社を公開しています)。社内の機密区分で外部処理が許されないなら、この用途では使わない——それだけの話です。確かめ方はセキュリティを自分で確かめる5つの質問に書きました。

署名・押印・備置は、言うまでもなく人の仕事です。AIが縮めるのは「経過の要領」の下書きまでで、この文書の法的な部分は最初から最後まで人が持ちます。

会社以外の団体——町内会・自治会・マンションの管理組合——については別記事に分けました。管理組合だけは法律に規定があります。

法定ではない、一般的な会議の議事録については議事録とはにまとめました。要件の有無で書き方が変わります。


普段の会議の議事録の型はテンプレート8種に。決議まわりで揉めないための会議の終わり方は言った言わないは、会議の終わり方で防ぐにあります。

よくある質問

取締役会議事録は何年保存する必要がありますか

本店に10年間備え置く義務があります(会社法371条)。株主総会議事録も本店に10年、支店にはその写しを5年です(会社法318条)。ただし318条3項にはただし書があり、電磁的記録で作成し支店から閲覧できる措置をとっていれば支店への備置きは不要です。「サーバーのどこかにある」ではなく、備置場所を決めて誰でも出せる状態にしておくことが実務の要点です。

取締役会議事録は電子データでもよいですか

電磁的記録での作成が認められています。その場合、出席取締役・監査役の署名または記名押印に代えて電子署名が必要です。紙で作るなら出席取締役・監査役の署名か記名押印が要ります。登記に使う場合の要件は司法書士か法務局に確認してください。

法定の議事録をAIで作ってもよいですか

下書きまでなら実務的です。日時・場所・議事の経過の要領を録音から起こす作業はAIが速い。ただし決議の結果、異議の有無、出席者の確定は法的効果に直結するため必ず人が確認し、署名・押印はもちろん人の作業です。機密度が高い会議なので、音声を外部サービスへ送ってよいかは社内の判断が先です。

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