AIが書いた議事録の責任は誰が持つか
自動で出てきた議事録に間違いがあったとき、責任はAIにはありません。誰がどこまで確認するのか、社内で先に決めておくべきことと、確認を現実的な手間に収める方法を整理しました。

AI議事録を使い始めた組織で、遅かれ早かれ起きる会話があります。
「この議事録、金額が違ってましたけど」 「AIが自動で作ったやつなので……」
この言い訳は、実務では通りません。AIは道具なので、出力をそのまま配れば、社内では送った人が確認したものとして受け取られます。ワープロの誤変換を「ワープロのせい」と言えないのと同じです。道具を作っている側から書きますが、ここは曖昧にしないほうが、結果的に道具も長く使えます。
間違いは必ず起きる、という前提
まず数字から。文字起こしの精度は日本語で実勢90〜95%です。裏を返すと、1時間の会議で数百か所は間違っているということです。しかも間違い方には種類があり、危険度が違います。
| 種類 | 気づけるか | 危険度 |
|---|---|---|
| 一般語の誤変換(「御社」→「音叉」) | 読めば気づく | 低 |
| 固有名詞の間違い | 気づきやすい | 中 |
| 聞き取れなかった箇所が別の語で埋まる | 気づけない | 高 |
| 話者の取り違え | 気づけない | 高 |
下2つが問題です。空欄になれば気づけるのに、もっともらしい別の言葉が入る。読んでも違和感がありません。話者の取り違えも同じで、「Aさんが引き受けた」と書いてあれば、そう読みます。
だから確認は「読み返す」では足りず、音声に戻って照合する必要があります。
責任の所在を、先に3つに分ける
導入時に決めておくのはこの3つです。曖昧なまま運用すると、事故が起きてから押し付け合いになります。
1. 誰が確認するか。 原則は録音した人・送る人です。会議に出ていない人には確認できません。
2. どこまで確認するか。 全文ではなく、実害の大きい箇所に絞ります。
- 金額
- 期日
- 担当者(誰の宿題か)
- 決定事項の文言
この4つだけです。経緯や雑談の誤字は、間違っていても実害がありません。全部を同じ丁寧さで確認しようとすると、確認そのものが続かなくなります。
3. 出す前に誰かの承認が要るか。 社外に出す議事録と法定の議事録は要ります。社内共有だけなら不要です。承認者を増やすほど出るのが遅くなり、遅い議事録は読まれません。
確認を2〜3分に収める
確認が現実的な手間で終わるかどうかは、道具の側の条件で決まります。議事録の行から元の音声の位置に飛べるなら、疑わしい箇所だけ聞き直せます。1時間の会議で確認が要るのはふつう3〜5か所なので、2〜3分で終わります。
飛べない場合、頭から探すことになります。これは実質的に「確認しない」と同じ結果を招きます。道具を選ぶ段階で、確認のコストが決まっているということです。この観点は精度は3つあるに詳しく書きました。
社外に出す議事録の一手間
取引先に送る議事録には、一文添えるのが安全です。
認識の相違がございましたら、◯日までにご指摘ください。
これは責任逃れの文言ではなく、相手にも確認してもらう仕組みです。双方が確認すれば、片方の見落としが片方で拾われます。期限を切っておくと、確認の督促を毎回しなくて済みます。
なお、「AIが作成しました」と書く必要はありません。書いても読み手の負担が増えるだけで、確認義務が減るわけでもない。道具が何であれ、送った人の文書であることは変わりません。
法定の議事録は、別の話
取締役会や株主総会の議事録は、会社法が作成と保存を義務づけている文書です。ここは決議の結果・異議の有無・出席者を人が確定させる必要があり、AIに任せられるのは経過の要領の下書きまでです。詳しくは法定議事録の記事にまとめました。
作っている側として
Recoryも間違えます。上に書いた数字はそのまま自分たちにも当てはまります。
だから、確認する手を用意することを設計の中心に置いています。議事録・文字起こしの各行から音声に飛べるのは、そのためです。話者が崩れたときに別のやり方で聞き直して作り直せるのも、「間違えない」ではなく「間違えたあとに打てる手がある」という考え方です。
「AIが自動で作るので確認は不要です」とは、うちは書きません。それを書いた瞬間に、上の会話の責任が宙に浮くからです。どこまで信じるかの実務的な線引きはAIが書いた議事録は、どこまで信じていいかにあります。
責任の所在を考えるときは、どこまでが機械の仕事でどこからが人の仕事かを分けておくと整理できます(AI議事録とは何か)。
よくある質問
AIが作った議事録に間違いがあった場合、責任は誰にありますか
実務上は、送った人が持つことになります。AIは道具なので、出力をそのまま配れば、社内では送った人が確認したものとして受け取られます。「AIが間違えた」で済む場面はまずありません。だから確認の工程を誰が持つかを、導入時に決めておく必要があります。
AI議事録は全文を確認しないといけませんか
全文は不要です。実害の大きい箇所——金額・期日・担当者・決定事項——に絞って確認してください。1時間の会議で確認が要るのはふつう3〜5か所で、議事録から音声に飛べる仕組みがあれば2〜3分で終わります。
議事録の承認フローは必要ですか
社外に出す議事録と、法定の議事録には必要です。社内の共有だけなら、作った人が確認して送るだけで足ります。承認者を増やすほど出るのが遅くなり、遅い議事録は読まれなくなるので、増やすなら理由を明確にしてください。
AIが書いた議事録は、どこまで信じていいか
「精度98%」は何の数字か —— AI議事録の精度は3つある
取締役会・株主総会の議事録——法定の記載事項と、AIに任せてよい範囲