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議事録の書き方

AIが書いた議事録は、どこまで信じていいか

AI議事録の間違いは「文字起こしのミス」より「文字起こしは合っているのに要約が間違う」方が多く、しかも読んでも気づけません。危ない箇所の見分け方と、30秒で裏を取る手順をまとめます。

AIが作った議事録を読んで、「よく書けているな」と思ったことがあると思います。読みやすく、章立ても整っていて、決定事項がきれいに並んでいる。

その読みやすさが、いちばん危ないところです。

決定事項担当金額・日付固有名詞
出てきた議事録は、この順で確かめる。5分で終わる。

議事録のAIは、どう間違えるか

「ハルシネーション」という言葉から想像されるのは、存在しない事実の捏造でしょう。会議で一度も出ていない数字が書かれる、といった。これも起きますが、議事録で実際に多いのは別の種類です。文字起こしは正しいのに、そこからの読み取りが間違うタイプ。

間違い方実例
誰の発言か取り違える「こちらで見積もりを出します」の主語が入れ替わる
条件を落として断定にする「予算が通れば4月」→「4月に開始」
話題に出ただけの数字を決定にする「他社は300万らしい」→「予算300万」
保留を決定に格上げする「持ち帰って検討」→「先方が検討することで合意」

共通しているのは、どれも日本語として自然に読めることです。誤字なら目に留まりますが、これらは止まりません。むしろ議事録として体裁が整っているぶん、疑う理由が生まれない。

そして実害が出るのは会議の数日後です。「4月開始で進めていたのに、予算が通っていなかった」と分かる頃には、誰も会議の音声を覚えていません。

いちばん多いのは、担当者の取り違え

Recoryの開発中に実際に踏んだ事故を書きます。社外の打ち合わせの議事録を作ったところ、アクションアイテムの担当が6件すべて逆になりました。参加者の欄には正しい所属が入っているのに、宿題の持ち主が自社と相手先で入れ替わっている。

原因は分かりやすいものではありませんでした。プロンプトで対策しても直りませんでした。

  • 参加者と立場の確定表を渡した → 6件とも逆のまま
  • 「うち・弊社」「御社・貴社」の読み替え表を足した → 変わらず
  • 「推定するな、指定に従え」と明示した → 変わらず

分かったのは、対応表が文書の先頭に1回あるだけだったことです。モデルは会話を読み進めるあいだ、その表をずっと頭の中で保持していなければならない。そして会話の一人称は、「話を進めている側」の視点へ強く引っ張ります。

つまりこれは、指示の書き方の問題ではありませんでした。渡している材料の側の問題です。

なぜこの話をするかというと、これは人が読むときも同じだからです。参加者欄を上に書いて本文を下に置いた議事録は、読む人も同じところで間違えます。読み手に「上に書いてある表を覚えておけ」と要求している構造だからです。

だから、担当が書かれた行そのものに、どちら側かが分かる書き方をする。議事録を人が書くときにも効きます。

確認すべきは4つだけ

全部を疑っていたら、議事録を使う意味がありません。実害の大きさで絞ります。

  1. 数字(金額・数量・パーセント)
  2. 固有名詞(社名・製品名・人名)
  3. 期日
  4. 担当者

この4つは、間違っていても文章が自然に読めて、しかも間違っていたときにいちばん高くつきます。逆に、議論の流れの要約は多少ずれていても後から困りません。「議論が白熱した」が「意見が分かれた」になっていても、実務に影響しない。ここを直す時間があるなら、数字を1つ確認した方がいい。

危ない書かれ方の見分け方

本文の中で、次の表現が出てきたら止まってください。

  • 「〜することで合意した」 —— 本当に合意まで行ったか。保留ではなかったか
  • 「〜が担当する」 —— 誰がそう言ったか
  • 主語のない決定文 —— 「4月に開始する」。誰が開始するのか
  • やけに具体的な数字 —— 会議で明言されたのか、文脈から補われたのか

4つ目が特に厄介です。AIは空欄を嫌います。曖昧なまま残すより、それらしい値を埋める方に傾く。だからいちばん具体的に書かれている箇所ほど、確認する価値があります。

裏を取るのに、全部聞き直す必要はない

ここが実務の分かれ目です。「確認が大事なのは分かるが、そのために1時間の音声を聞き直すなら議事録を自分で書いた方が早い」——そのとおりです。全部聞き直す前提なら、AI議事録は時短になりません。必要なのは、疑わしい1行から、その瞬間の音声へ直接飛べることです。

1時間の会議で、上の4項目に当たる箇所はふつう 3〜5か所。1か所30秒で確認できるなら、全体で2〜3分です。これなら成立します。

そのためには、議事録の記述に音声の時刻が紐づいている必要があります。紐づいていない議事録は、疑わしい箇所を見つけても確かめる手段がありません。確かめられない議事録は、結局そのまま信じるしかなくなります。

道具を選ぶときは、要約の上手さよりこの一点を見た方がいいと思います。要約は各社そこそこ上手いので差が出ません。差が出るのは、間違っていたときに気づけるかどうかです。

「※要確認」を出せるかどうか

もう一つ、判断材料になるのが自信のなさを表示できるかです。音声が聞き取りにくい箇所、複数の解釈がありうる箇所を、黙って埋めずに「※要確認」と書く。これができる道具は、できない道具より信用できます。自信がない箇所ほど、断定的に書かれると危ないからです。

Recoryの場合

Recoryでは、この記事の内容にこう対応しています。

  • 議事録の一行ごとに [mm:ss] の出典が付きます。触れると、その瞬間の音声が再生されます。疑わしい行だけを30秒で確認できます
  • 聞き取りに自信のない箇所は ※要確認 と明示します。黙って埋めません
  • 文字起こしの各行に立場を書き込んでから議事録を作ります。上の6件の事故への対策です
  • 社外の会議では、アクションの担当を「自社」「相手先」の2択で出します。選択肢が2つなら、逆になっていても一目で分かるからです
  • 間違いを見つけたら、話し言葉で直せます。「4月開始じゃなくて、予算が通ればという条件付きです」で通ります。直すときも文字起こしを根拠にします

議事録をClaudeなどの外部AIから読ませる場合、元の議事録に間違いがあれば、それを読んだAI側の回答にも同じ間違いが伝わります。行ごとに出典が付いていれば、その回答も元の音声まで遡って確かめられます。繋ぎ方はClaudeのコネクタ一覧に、議事録アプリが入っていないに書きました。

正直に書くと、Recoryも間違えます。上の4項目は、うちの議事録でも確認してください。違うのは、確認が2〜3分で終わることです。

AI議事録の価値は「読める文章が出てくること」ではなく、「間違っていたときに、すぐ気づけること」にあると思っています。要約の精度を競う話ではなく、検算できるかどうかの話です。

信じてよいかを判断する前に、そのAIが中で何をしているかを知っておくと、疑う場所が絞れます。文字起こしの誤りと要約の歪みは別々に起きるので、確かめ方も分けたほうが早い(AI議事録とは何か)。


会議の種類ごとにそのまま使えるプロンプトは別記事に置いてあります。プロンプトで直せる範囲と直せない範囲も分けて書きました。

よくある質問

AI議事録はハルシネーション(もっともらしい嘘)を起こしますか

起こします。ただし議事録で多い失敗は、事実の捏造よりも「言われたことの取り違え」です。誰の発言かを間違える、条件付きの発言を断定に変える、話題に出ただけの数字を決定事項にする。どれも文章として自然なので、読み返しても気づけません。

AI議事録のどこを重点的に確認すればよいですか

数字・固有名詞・期日・担当者の4つです。この4つは間違っていても文章が自然に読め、しかも間違っていたときの実害が最も大きい。逆に議論の流れの要約は、多少ずれていても後から困りません。

確認するのに毎回全部聞き直す必要がありますか

ありません。議事録の記述に音声の時刻が紐づいていれば、疑わしい行だけをその場で聞けます。1時間の会議で確認が必要な箇所はふつう3〜5か所なので、2〜3分で済みます。時刻が紐づいていない議事録は、この確認ができません。

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