1on1の記録は、「誰が見られるか」を先に決める
1on1をAIで記録すると、普通の会議とは違う問題が出ます。録音を伝えるべきか、記録を誰が見られるようにするか、どこまで残すか。実際に困る順番で整理しました。

1on1をやっている人なら、この感覚は分かると思います。
話を聞きながらメモを取ると、話が浅くなる。相手が言いにくそうにしていることを引き出そうとしている最中に、手元を見て書く。それだけで、相手は「記録されている」と意識します。1on1でいちばん大事な部分ほど、書こうとすると逃げていく。
だからAIで記録したくなる。それは正しい方向だと思います。ただ、1on1は普通の会議と違うところがあって、そこを先に決めておかないと後で困ります。
普通の会議と、何が違うか
決定的な違いはひとつです。1on1には、その場から出てはいけない話が入ります。
体調のこと。家庭の事情。他のメンバーへの不満。ひどいときは、転職を考えているという話。
普通の会議の議事録は、共有されることが前提です。1on1の記録は、共有されないことが前提です。同じ道具で扱うと、この前提がすり替わります。そして、すり替わったことに誰も気づかないまま運用されて、半年後に事故になります。
順番を間違えないでほしいところ
道具を選ぶ前に決めることがあります。順番はこれです。1. 誰が見られるか
これを最初に決めてください。既定は「上長と本人だけ」。
人事や部門長も見られる形にするなら、それは設計の判断なので、本人に先に伝える必要があります。あとから閲覧範囲を広げるのは、実質的に約束違反です。ここを曖昧にしたまま始めると、たいてい「見られる人が少しずつ増える」ほうへ流れます。
- どのくらい残すか
半年から1年が現実的だと思っています。長く持つほど、異動や評価の場面で「過去の発言」として使われる可能性が上がります。1on1の目的は次回の1on1をよくすることなので、それに必要な期間だけあれば足ります。「いつか役に立つかもしれない」で無期限に貯めるのは、いちばん危ない持ち方です。3. 録音を伝えるか
伝えてください。ここは迷わなくていいと思います。
法律の話をすると、個人情報保護委員会は、自分が参加している会話の録音について、録音していること自体を相手に伝える義務までは負わないという整理を示しています(同委員会「ガイドラインに関するQ&A」1-10)。ただし個別の判断が要る場面は弁護士にご確認ください。伝えなくても違法にはならない。
でも1on1では、あとから知られたときに失われるものが大きすぎます。「あの人は黙って録っていた」が広まった時点で、その人の1on1は二度と機能しません。
伝えると本音が出ない、という問題
ここが実際に困るところです。伝えれば信頼は守れる。でも、録音していると分かった相手は、本当のことを言わなくなります。これは実感としてあると思います。答えは「両立させる」ではなく、録らない選択を残しておくことだと思っています。
具体的には、この2つです。
冒頭に一言。「メモが追いつかないので録らせてください。見るのは私だけです」
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途中で止められるようにする。「ここからは記録を止めます」と言って、実際に止める
2つ目が効きます。止められると分かっている人は、最初から警戒しません。逆に「一度始めたら最後まで録られる」だと、全部の発言が構えたものになります。実際、いちばん大事な話は「ちょっとこれは記録しないでほしいんですけど」から始まることが多いです。その一言を言える関係かどうかが、1on1の質そのものだったりします。
何を残すか
全文を残す必要は、たぶんありません。1on1で次回までに要るのは、この3つだけです。
1on1 ◯/◯ ◯◯さん
■ 本人が言っていたこと
- (事実として言われたことだけ。解釈は書かない)
■ 次回までに私がやること
- (上長側の宿題)
■ 次回、必ず聞くこと
- (前回の続き)
「本人が言っていたこと」に解釈を書かないのが要点です。
「モチベーションが下がっているように見える」と書いた記録は、本人が読んだときに事故ります。閲覧範囲を「本人も見られる」にするなら、本人が読んでも成立する文章しか書けません。そしてそれは制約ではなく、そのほうが1on1が良くなります。解釈をメモに書くと、次回それを検証しにいく会話になる。事実だけ残しておけば、次回は聞くところから始まります。
AIに任せるとき、期待しないほうがいいこと
正直に書いておきます。1on1の要約は、普通の会議より難しいです。
理由は、決定事項が無いからです。AIの議事録は「決まったこと」「宿題」を抜き出すのが得意で、1on1にはそれがほとんど無い。出てくるのは「近況の共有」「業務についての意見交換」のような、何も言っていない要約になりがちです。
なので、1on1では要約より文字起こしのほうが役に立ちます。あとから読み返すのは要約ではなく、相手が実際に使った言葉のほうだからです。「しんどい」と言ったのか「ちょっと大変です」と言ったのかは、要約すると同じになります。その差が全部だったりします。
道具の選び方
上の3つ(誰が見られるか/どのくらい残すか/止められるか)で選ぶと、実質2つに分かれます。組織で入れる場合は、タレントマネジメントの製品になります。閲覧権限を人事が管理できて、異動しても引き継げる。1人あたり月数百円〜数千円で、導入は情シスと人事の仕事です。
上長が自分の道具として持つ場合は、普通の議事録アプリで足ります。見られるのは自分だけ、という状態が既定になるからです。
どちらが正しいということはありません。ただ、後者を選んでおいて「あとで組織展開しよう」と考えているなら、それは最初に本人へ伝えた条件と違う話になります。そこだけ気をつけてください。
Recoryは後者です。個人の道具なので、記録は録った本人のものになります。人事が横断して見る仕組みも、異動時に引き継ぐ仕組みもありません。組織で入れる道具ではない、というのははっきり書いてあります。
上長が自分用に持つなら、音声が既定14日で自動的に消える(7日まで縮められる)のは、この用途だと素直に効きます。あとは録音を途中で止められること。上に書いた「ここからは記録を止めます」が、実際にできます。
記録の型そのものは議事録の書き方とテンプレートに、録るときの断り方はこの記事の文例をそのまま使ってください。
録音を伝える文面は録音の同意書のひな形にあります。社内会議のほうは営業会議の議事録に別途まとめました。
よくある質問
1on1を録音するとき、相手に伝える必要はありますか
個人情報保護委員会はQ&Aで、録音していること自体を相手に伝える義務までは負わないという整理を示していますが、1on1では伝えてください。あとから知られたときに失われる信頼のほうが、記録の価値より大きいです。「メモを取るのが追いつかないので録らせてほしい」と伝えて、断られたら録らないのが実務的です。
1on1の記録は誰が見られるようにすべきですか
既定は「上長と本人だけ」です。人事や部門長が見られる形にする場合は、その範囲を最初に本人へ伝えてください。あとから閲覧範囲を広げるのは、事実上の約束違反になります。
1on1の記録はどのくらい残すべきですか
半年から1年が現実的です。長く持つほど、異動や評価の場面で「過去の発言」として使われる可能性が上がります。目的は次回の1on1をよくすることなので、それに要る期間だけ持つのが筋です。
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