会議の録音に、外付けマイクは要るか
結論から言うと、多くの会議では要りません。効くのは置き場所のほうです。マイクを足して変わる場面と、足しても変わらない場面を分けて、買う前に試すことを書きました。

結論から書きます。多くの会議では、外付けマイクは要りません。
効くのは置き場所のほうです。マイクを買う前に、置き方を変えて1本録ってみてください。それで解決することが少なくありません。
まず、置き場所を変える
同じ会議室・同じ端末でも、置く場所で結果が変わります。
| 置き方 | 結果 |
|---|---|
| 机の中央、全員から等距離 | いちばん良い |
| 自分の手元 | 自分の声だけ大きく、向かいが遠い |
| 書類の上・書類の下 | 紙の擦れる音が乗る |
| 鞄の中・ポケット | 論外 |
自分の手元に置くのがいちばん多い間違いです。無意識にそうなります。自分の声は大きく入りますが、向かいの席の人が遠くなるので、記録としては使いにくくなります。詳しい置き方は対面の会議で、iPhoneをどこに置くかにまとめました。
マイクを足しても変わらないこと
期待されがちですが、外付けマイクで直らないものがあります。話者の分離です。3人が1人にまとめられる、という崩れ方は、声が聞き取れていないことが原因ではありません。似た声を同じ人だと判断していることが原因なので、入り口の音を良くしても判断は変わりません。
実測でも、同じ録音のビットレートを上げても、エンジンのモデルを5種類替えても、5人が3人にまとまる結果は1行も変わりませんでした(実測)。固有名詞の誤変換も、マイクでは直りません。社名や製品名が化けるのは、音の問題ではなく語彙の問題です。辞書に登録するほうが効きます。
マイクが効く場面
逆に、効く条件もはっきりしています。部屋が広く、話す人が離れている場合です。
- 10人以上の会議室。端の席まで届かない
- コの字型・ロの字型の配置。中央に置いても遠い人が出る
- 常時、空調やプロジェクターの音が入る部屋
- 登壇者と客席が分かれている場(説明会、研修)
この条件では、1台のスマートフォンでは集音の範囲が足りません。複数のマイクを分散させるか、話す人の近くに置く必要があります。
会議室の形ごとに、置き場所を決める
置き場所が効くと書きましたが、部屋の形で正解が変わります。よくある4つを並べます。
| 部屋 | 置く場所 | 避けること |
|---|---|---|
| 4〜6人の小さな会議室 | テーブルの中央 | 資料の紙の上、誰かの手元 |
| 細長い会議室(10人以上) | 中央より、遠い側に寄せる | 上座の端に置く |
| コの字・ロの字の配置 | 中央の空いた部分の縁 | 内側の低い位置 |
| カフェ・オープンな場所 | 話す相手のいちばん近く | 通路側、空調の真下 |
原則は「いちばん拾いにくい人に寄せる」です。声の大きい人の隣に置くと、その人だけが大きく入って他が小さくなります。マイクは近い音を強く拾うので、置き場所がそのまま音量の差になります。
もう1つ、接地面を見てください。テーブルに直接置くと、机を叩く音・ペンを置く音・脚が当たる振動が全部入ります。ハンカチや手帳を1枚敷くだけで、その系統の音は目に見えて減ります。買い足すより先にできる対処として、これがいちばん費用対効果が高い。
距離で、どれくらい変わるのか
数字で持っておくと判断が速くなります。マイクから声までの距離が2倍になると、届く音の強さは大きく下がります。1メートルと2メートルでは、同じ声でもはっきり差が出ます。
会議室で起きているのは、たいてい次のどれかです。
- 端の席の人の声だけが小さい(距離)
- 全員の声が遠く、部屋が響く(部屋の残響)
- 特定の人だけ聞き取れない(声質と距離の組み合わせ)
1つ目なら置き場所で直ります。2つ目は部屋の問題で、マイクを足しても響きごと拾うだけなので改善しません。カーテンのある部屋、椅子に布のある部屋を選ぶほうが効きます。3つ目は、その人の近くに置くか、席を変えてもらうのが早い。
複数台で録るという手もある
外付けマイクを買う前に、手元にあるスマートフォンを2台使うほうが安く済むことがあります。長いテーブルの両端に1台ずつ置けば、遠い側の声も拾えます。
代わりに手間が増えます。ファイルが2本になり、あとでどちらを使うか選ぶことになる。全部を1本にまとめたいなら、この方法は向きません。「遠い側の発言だけ聞き直したい」という使い方に向いています。
2台目は古い端末で構いません。通信が使えなくても録音はできます。引き出しに入っている前の端末が、いちばん安い増設マイクになります。
買うと決めたときの、種類の違い
それでも足すなら、種類で用途が分かれます。会議で使えるのは、上の2つです。
| 種類 | 向く場面 | 注意 |
|---|---|---|
| 平べったい会議用マイク | テーブルの中央に置く | 電源とケーブルの取り回し |
| クリップ型 | 特定の1人の声を確実に録る | 全員は録れない |
| 指向性の強いマイク | 1方向だけ拾う | 会議では向きの調整が要る |
| ヘッドセット | 自分の声だけ | 相手が入らない |
いちばん下は会議に向きません。自分の声だけがはっきり入り、相手の声は遠いままになります。オンライン会議で自分の声を送るための道具であって、部屋の会議を記録する道具ではありません。
接続の形も見てください。USBのものはパソコン向けで、iPhoneに繋ぐには変換が要ることがあります。買う前に、自分が録るときに使う端末で使えるかを確かめてください。
買う前に確かめること
外付けマイクを検討するなら、次を先に見てください。1. その端末に繋がるか。iPhoneはLightningかUSB-Cで、機種によって端子が違います。変換アダプタが要る場合、会議のたびに持ち歩くことになります。
- アプリが外部入力を拾うか。繋いだのに内蔵マイクで録れていた、という事故が起きます。本番前に短く録って確かめてください。
- 電源が要るか。電源が必要なマイクは、会議室の席まで電源が届くかに依存します。
- 持ち歩けるか。いちばん現実的な問題です。良いマイクでも、鞄に入れて毎回持ち出すかというと、たいてい続きません。
録れた音を、あとで聞き取りやすくする
録る側で手を尽くしても、遠い声は遠いままです。録ったあとにできることもあります。
- 再生の速度を落とす。0.75倍にすると、潰れて聞こえた語が拾えることがあります
- ヘッドフォンで聴く。スピーカーより小さい音の差が分かります
- 文字起こしにかけて、文字と音を行き来する。聞き取れない箇所だけ音に戻る
3つ目がいちばん効きます。全部を耳で追う必要がなくなるからです。文字が出ていれば、怪しいところだけ音に戻ればいい。1時間の会議を最初から聴き直すのと比べると、かかる時間がまったく違います。
一方で、人の耳で聞き取れない音は機械にも聞き取れません。録音の段階で潰れていたら、あとから復元はできないという前提は変わりません。だから置き場所が効く、という話に戻ります。
話者が分かれるかどうかは、マイクの数では決まらない
「マイクを増やせば誰が話したか分かる」と考えている人がいますが、そうとは限りません。話者を分ける処理は、音の届く方向ではなく声の特徴で判定するものが多いので、マイクの本数とは別の話になります。
会議室で話者が混ざりやすいのは、次の条件が重なったときです。
- 声質が似ている人が複数いる
- 相づちや短い発言が多い
- 同時に話す場面がある
- 部屋が響いて、声が回り込む
このうちマイクで改善できるのは最後だけです。残り3つは、録り方では変わりません。話者を分ける必要があるなら、その処理が得意な道具を選ぶほうが確実です。分かれ方の実測は話者分離の実測に書きました。
会議室に据え置くなら別の話
自分の持ち物としてではなく、会議室の設備として置くなら、話が変わります。据え置きなら持ち歩きの問題が消え、電源も確保できます。オンライン会議用のスピーカーフォンを置いている会議室なら、その入力を録音に使えることがあります。ただし、Web会議に使っている機器を同時に録音へ回せるとは限りません。1つのアプリが使っていると、別のアプリからは掴めない場合があります。ここも本番前に試してください。
イヤホンで録らない
最後に、やりがちな失敗を1つ。AirPodsなどのイヤホンマイクで会議を録らないでください。口元に近いので自分の声はよく入りますが、そのぶん相手の声が相対的に小さくなります。1対1の口述には向きますが、複数人の会議には向きません(理由)。
順番
- 置き場所を変えて1本録る(今日できる・無料)
- それで足りなければ、部屋の条件を確かめる(広さ・配置・騒音)
- 条件に当たるなら、据え置きを検討する
- 持ち歩きの外付けマイクは、続くかどうかを正直に考えてから
1で解決する人がかなりいます。順番を飛ばさないほうが、結果的に安く済みます。
外付けを検討する前に、本体のマイクでどこまで録れるかを確かめてください(録音の仕方)。置き場所で解決できることも多いので、会議の録音の手順を先に試してください。専用機に替える選択肢はボイスレコーダーはどれを買うかにまとめました。
話者が分かれないときにまず見るところは別記事にまとめました。
よくある質問
会議の録音に外付けマイクは必要ですか
多くの会議では不要です。6人程度までの会議室であれば、スマートフォンを机の中央に置くほうが、手元に外付けマイクを置くより結果が良くなります。マイクを足す前に、まず置き場所を変えて1本録ってみてください。
外付けマイクを足すと話者分離は良くなりますか
良くなりません。話者が同じ人にまとめられる崩れ方は、声が聞き取れていないことが原因ではなく、似た声を同じ人と判断していることが原因です。入り口の音を良くしても判断は変わりません。
どんな場面なら外付けマイクが効きますか
部屋が広く、話す人が離れている場面です。10人以上の会議室、コの字型の配置、常時空調の音が入る部屋。この条件では集音の範囲が足りなくなるので、複数のマイクを分散させるか、話す人の近くに置く必要があります。
対面の会議で、iPhoneをどこに置くか
会議の録音にAirPodsを使わないほうがいい理由
AIレコーダーで話者が分かれないときに、まず見るところ