AIレコーダーで話者が分かれないときに、まず見るところ
PLAUDでもオートメモでも、3人の会議で話者が区別されないことがあります。録り方で直るものと、どうやっても直らないものを切り分けます。

2〜3万円出して専用機を買ったのに、3人の会議で話者が分かれない。
これ、けっこう起きます。PLAUD(プラウド)の公式FAQにも重なった発話は苦手だと書かれていますし、利用者からは「3名の会議なのに区別が付かない」という報告も出ています。オートメモでも似た相談を見ます。
故障ではありません。そして、直せるものと直せないものがはっきり分かれます。
用語を1つだけ整理しておく
製品ページでは「話者分離」と「話者識別」が入り混じって使われています。厳密には、
- 話者分離:音声を「別の人の発言」に切り分けること。AとBが別人だと分かる(誰かは分からない)
- 話者識別:切り分けたうえで誰なのかを当てること(田中さんの声だ、まで)
多くの製品が実際にやっているのは前者で、名前を付けるのは人の作業です。「話者識別対応」と書いてあっても、事前に声を登録する仕組みが無ければ、実態は分離です。この記事で扱う「分かれない」問題は、前者の段階の話です。
まず、どちらに外れているかを見る
対処法が正反対なので、ここを先に確認してください。参加者より少ないラベルしか出ていない(5人の会議に3ラベル)。これが「潰れ」です。
参加者より多いラベルが出ている(5人の会議に6ラベル)。これが「割れ」です。
割れているなら、話は簡単です。「話者Eと話者Fは同じ人だ」と分かればまとめるだけ。読み手が判断できます。多くのアプリに話者名の一括変更があるので、同じ名前を付ければ済みます。
潰れているほうが厄介で、あとから直せません。話者Aの発言のうちどれが別の人のものだったか、その情報が出力に残っていないからです。丁寧に読み返しても復元できません。この2つの違いは実測した記事に詳しく書きました。
録り方で直る可能性があるもの
潰れている場合、次の条件に心当たりがあれば、録り方で改善する余地があります。遠い席の人がいた。 声が小さいと、他の人と同じラベルにまとめられやすくなります。テーブルの端に置いていたなら、次は中央寄り、それも遠い人の側に置いてみてください。
発言が重なっていた。 2人が同時に喋った区間は、どんな機種でもほぼ復元できません。マイクの性能でも、AIの賢さでも解けない。1本の入り口に2つの声が混ざって届いた時点で、情報が混ざっています。
空調やプロジェクターの風が当たっていた。 低い連続音が全体に乗ると、声の特徴が取りにくくなります。天井の吹き出し口の真下は避けてください。
置き方の話は別にまとめました。スマートフォンでも専用機でも、効く条件は同じです。
録り方では直らないもの
一方、これらは録り直しても変わりません。声質が似ている。 同性で年齢が近い3人以上の会議は、いまの技術ではよく畳まれます。PLAUDのドキュメントにも、声の特徴が似ていると精度が落ちると書かれています。
相槌しか打っていない人がいる。 「はい」「なるほど」だけの人は、独立した話者として立ちません。声のサンプルが足りないためです。
途中から入室した人がいる。 前半に声が無いと、別人として数えられないことがあります。
音質を上げても、たぶん変わらない
「ビットレートを上げれば直るのでは」と考えるのは自然です。私もそう思って試しました。同じ会議の録音を、ビットレートを上げて録り直したところ、5人が3人にまとまる結果は1行も変わりませんでした。
理由ははっきりしていて、声は聞き取れているからです。文字起こしの本文自体は正しく出ている。聞こえているのに、似た声を同じ人だと判断している。だから音を良くしても効きません。
高いマイクを足すのも、同じ理由で期待できません。声が届いていない場合には効きますが、すでに聞き取れている音声の話者判定は変わりません。
モデルを替えても変わらないことがある
もうひとつ試したことがあります。同系統のエンジンの非同期モデル5種類すべてに、同じファイルを通しました。
全部同じ3ラベルでした。行数の内訳まで一致。
モデルを替えても1行も動かないということは、話者の判定がモデルの選択より外側で決まっているということです。「別のモデルを選び直せば直る」という期待は、少なくともこのエンジンでは成立しませんでした。
打てる手が残っているとすれば
潰れてしまった録音に対して、現実的な手はひとつだけです。同じ音声を、別系統のエンジンに通し直す。
私が試したときは、別系統に通すと6ラベルに分かれました。5人に対して6なので正確ではありませんが、割れは人が統合できます。潰れたまま止まるよりは扱える状態になります。
問題は、多くの専用機がこれをできないことです。1回処理して終わり、という設計になっている。買う前に確認する価値があるのはここだと思っています。「話者分離に対応」ではなく、外れたときに打ち直せるか。
Recoryには「ハイブリッドで聞き直す」があって、通常の経路で潰れたときに別のやり方で聞き直して作り直せます(有料プラン・時間を3倍消費します)。上に書いた「1→3」の乗り換えを、利用者の操作でできるようにしたものです。
必ず直るとは限りません。上の実測は1本の録音での結果で、すべての会議で同じようになるとは限らない。時間を3倍消費するので、無料のお試しでは使えません。合わない条件はまとめてあります。
道具を選び直す段になったら4つの質問を使ってください。
買う前に機種を比べているなら、PLAUDとオートメモ、どちらを買うかに価格と条件を並べてあります。話者分離については、どちらも過信しないほうがいいというのが正直なところです。
よくある質問
PLAUDで話者が分かれないのは故障ですか
故障ではありません。声質が近い、発言が重なる、遠い席の声が小さい、といった条件で分離が崩れます。PLAUDの公式FAQでも重なった発話は苦手とされていますし、「3名の会議でも区別が付かない」という利用者の報告があります。
設定で直せますか
多くの機種に話者数を指定するつまみはありません。設定で直せる範囲は限られていて、効くのは主に録り方のほうです。マイクの位置と、同時に話さない進行で改善することがあります。
録り直せない会議はどうすればよいですか
同じ音声を別のエンジンに通し直せる仕組みがあるなら、それが唯一の手です。無い場合、複数人が1つのラベルにまとまった状態からは復元できません。誰の発言だったかという情報が出力に残っていないためです。
話者分離が外れる2つの壊れ方。片方は直せて、片方は直せない
対面の会議で、iPhoneをどこに置くか
PLAUDとオートメモ、どちらを買うか
ACES Meet——話者の声を貯めて識別精度を上げる、という設計