AIの要約が「意見交換が行われた」になるのはなぜか
中身は濃かったのに、出てきた要約が当たり障りのない文章になる。これはモデルの性能ではなく、要約という作業の性質から来ています。原因と、実際に効いた直し方を書きます。

商談の録音を文字起こしして、AIに要約させる。出てきたのがこれです。
価格について意見交換が行われ、今後の進め方について認識をすり合わせた。
間違ってはいません。でも、これでは何も分かりません。
実際の会議では、先方が単価を5%下げてほしいと言い、こちらが数量次第だと返し、来週までに数量の見込みをもらうことになった。その全部が「意見交換」に畳まれています。これはモデルが賢くないからではありません。要約という作業の性質から来ています。要約以外の原因はAI議事録が「使えない」と言われる5つの理由に分けて書きました。
要約は「短くする」であって「選ぶ」ではない
ここが本質だと思っています。要約を頼まれたモデルがやるのは、全体をまんべんなく圧縮することです。60分の会話を5行にするなら、各話題を均等に縮める。結果として、どの話題も「〜について話した」になります。
一方、人が議事録を書くときにやっているのは、圧縮ではありません。捨てる作業です。
雑談を捨て、決まらなかった話を捨て、残った3行だけを書く。この「捨てる」判断は、会議の外側の事情でやっています。この案件がいくらの商談か、社内で誰が次に動くか、前回何を約束したか。
文字起こししか渡されていないモデルは、この事情を知りません。だから捨てられない。捨てられないから、全部を均等に薄めることになります。性能の問題ではなく、情報の問題です。
だから、抜くものを名指しする
直し方は単純で、何を残すかをこちらが決めて渡すことです。「要約して」ではなく、こう書きます。
次の3つだけを箇条書きで抜き出してください。
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1. 決まったこと(合意した内容。金額・期日は原文のまま) 2. 決まらなかったこと(保留・持ち帰りになったもの。なぜ決まらなかったかも) 3. 誰がいつまでに何をするか(担当者・期限つき)
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決まっていないものを「決まった」と書かないでください。 該当が無い項目は「なし」と書いてください。
これだけで、冒頭のような文章はほぼ出なくなります。
「なし」と書かせるのが地味に効きます。項目を固定すると、埋まらなかったところが空欄として見えるからです。「決定事項:なし」と出てきた会議は、本当に何も決まらなかった会議です。それが分かるだけでも価値があります。
金額と期日は「原文のまま」と書く
上の指示に入れてある一行ですが、これは実務でかなり効きます。要約させると、数字が丸められます。「5%程度」が「若干」になり、「来週の水曜まで」が「近日中」になる。読みやすくしようとした結果です。
丸められた数字は、議事録として使えません。あとで見返す理由の大半が、金額と期日の確認だからです。「原文のまま」と一言入れるだけで、ここは守られます。
一度に書かせようとしない
もうひとつ、効果が大きかったやり方があります。2回に分けます。
- 1回目:文字起こしを渡して、内容を全部拾わせる。長くていい
- 2回目:1回目の出力だけを渡して、読みやすく整えさせる
書くことと整えることを、同時にやらせないということです。一度でやらせると、たいてい分量の指示が守られません。「2,000字程度で」と言っても倍以上になったり、逆に箇条書きが数個で終わったりする。内容を拾うことに気を取られると、形が崩れます。
分けると、両方きれいになります。2回目は文字起こしを読み直す必要がないので、手間もそれほど増えません。
見出しを自分で決めておく
会議の型が決まっているなら、見出しごと指定してしまうのがいちばん速いです。商談なら「先方の状況」「提示した条件」「先方の反応」「宿題」。定例なら「前回の宿題」「今回の決定」「新しい宿題」。
見出しを固定すると、毎回同じ形で溜まります。これは読み返すときに効きます。3か月分の商談記録を見返すとき、全部が同じ並びだと、探している項目に直接飛べる。
型は議事録のテンプレート8種に置いてあります。商談で何を残すかは商談記録の書き方にまとめました。
それでも埋まらないもの
正直に書いておくと、指示を工夫しても埋まらない部分があります。「言っていないこと」は拾えません。
商談でいちばん大事な情報が、先方が答えなかったことだったりします。予算を聞いたのに話題を変えられた。決裁者を聞いたのに曖昧にされた。これは文字起こしには「別の話をした」としか残りません。
AIには、聞かれたのに答えられなかった、という構造が見えないのです。少なくとも、いまのところは。
ここは人が書くしかありません。会議の直後に一行だけメモを足すのが現実的だと思います。「予算は明言を避けられた」。この一行が、3か月後にいちばん役に立ちます。
無料のAIで議事録を作る手順はChatGPTで議事録を作るに書きました。Recoryでは上の型を選んで保存しておけるので、毎回指示を書き直す必要はありません。ただし「言っていないこと」を拾えないのは同じです。そこは一行足してください。
よくある質問
AIの要約が薄くなるのはモデルの性能が低いからですか
違います。要約は「短くする」作業であって「重要なものを選ぶ」作業ではないためです。何が重要かは会議の外側の事情で決まるので、文字起こしだけを渡されたモデルには判断できません。指示で何を抜くかを決めれば、同じモデルでも結果は変わります。
どう指示すれば具体的な要約になりますか
抜くものを名指ししてください。「要約して」ではなく「決まったこと・決まらなかったこと・誰がいつまでに何をするか、の3つだけを箇条書きで。決まっていないものは決まっていないと書く」と指定します。項目を固定すると、埋められない項目が空になるので、抜けにも気づけます。
一度で良い要約が出ないときはどうすればよいですか
2回に分けてください。1回目は内容を全部拾わせ、2回目でその出力だけを渡して整えさせます。書くことと整えることを同時にやらせると、どちらも中途半端になります。文字起こしを読み直させる必要はないので、2回目は軽く済みます。
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