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議事録の書き方

議事録の要約は「短くする」ではなく「捨てる」——手順で書く

3万字の文字起こしを5行にする作業は、圧縮ではなく取捨選択です。何を残し、何を捨て、どの順で書くか。AIに任せる部分と人がやる部分を分けた、実際の手順をまとめました。

「議事録を要約して」と言われたときの正しい理解は、長い文章を短くすることではありません。

翌週に要らないものを捨てることです。この違いで、やり方が全部変わります。圧縮だと思うと全体をまんべんなく薄めることになり、「価格について意見交換が行われた」のような、何も言っていない要約ができあがります(そうなる理屈は別記事に書きました)。捨てる作業だと思えば、手順に落ちます。

残す種類を決める全部拾わせる人が捨てる形に流し込む
要約は「短くする」ではなく「捨てる」。手順で分ける。

手順0. 残す種類を先に決める

要約を始める前に、残すものの種類を決めます。会議の記録で翌週に使われるのは、実務ではこの3つだけです。

  1. 決まったこと(金額・期日は原文のまま)
  2. 決まらなかったこと(何が保留で、なぜか)
  3. 宿題(誰が・いつまでに・何を)

逆に言うと、経緯・雑談・検討の途中経過は捨てると最初に決めてしまう。ここを決めずに文字起こしを頭から読むと、全部が大事に見えてきて縮みません。

手順1. AIに「全部拾わせる」

最初の1周はAIにやらせます。ただし頼み方が要点です。

次の3つだけを箇条書きで抜き出してください。 1. 決まったこと(金額・期日・数量は原文のまま) 2. 決まらなかったこと・保留(なぜ決まらなかったかも1行) 3. 宿題(誰が・いつまでに・何を) 該当が無い項目は「なし」と書く。決まっていないことを決まったと書かない。

「要約して」との違いは、捨てる基準を渡していることです。この段階では多めに拾わせて構いません。長さを気にするのは次の工程です。

手順2. 人が「捨てる」

AIの出力を見ながら、残すか捨てるかを判断します。基準は1つで足ります。

翌週の自分(または受け取る人)が、これを読んで動けるか。

  • 「単価は据え置きで合意」→ 残す
  • 「単価について活発な議論があった」→ 捨てる(動けない)
  • 「◯◯さんが慎重な姿勢」→ 「コスト増の懸念が出た(未解消)」に書き換えて残す

3つ目が要約のいちばん大事な判断です。人ではなく論点に変換する。誰が言ったかを残すと角が立ち、論点を落とすと次の会議で同じ議論をやり直します。

実際に捨ててみる

言葉だけだと伝わらないので、実物を出します。文字起こしの一部(15行)と、そこから残るものです。

[14:18] 話者A: えーと、じゃあ次、価格の件なんですけど
[14:19] 話者B: はい
[14:19] 話者A: 前回、5%下げてほしいというお話をいただいて
[14:20] 話者B: そうですね、社内の稟議の関係で
[14:20] 話者A: あー、なるほど
[14:21] 話者B: 正直、そこがネックでして
[14:22] 話者A: うちも持ち帰って検討したんですが
[14:23] 話者A: 結論から言うと、単価は据え置きでお願いしたく
[14:24] 話者B: うーん
[14:25] 話者A: ただ、数量がまとまるなら別途ご相談は可能です
[14:26] 話者B: あ、それは助かります
[14:27] 話者B: じゃあ数量の見込みをこちらで出しますね
[14:28] 話者A: お願いします。いつ頃いただけますか
[14:29] 話者B: 来週の水曜までには
[14:30] 話者A: 承知しました

残るのは、この3行です。

■ 決まったこと
・単価は据え置き。ただし数量がまとまる場合は別途協議

■ 宿題
・[先方] 数量の見込みを提示(〜来週水曜)

捨てた行に、理由を付けるとこうなります。

捨てた行理由
「はい」「うーん」「あー、なるほど」相槌。情報がない
「前回、5%下げてほしいと」経緯。前回の議事録に書いてある
「うちも持ち帰って検討したんですが」前置き。結論の行に含まれる
「正直、そこがネックでして」迷うところ。今回は捨てた

4つ目だけ判断が要ります。先方の社内事情という情報なので、次の交渉で効くかもしれない。私は「決まらなかったこと」に「先方は稟議上、価格に制約あり」の1行として残すことがあります。この判断だけは、会議の外の事情を知っている人にしかできません。この案件がいくらの商談で、次に何を握りたいのか。文字起こししか見ていないAIには材料がありません。

手順3. 形に流し込む

残ったものを、決まった形に置きます。毎回同じ形にするのは、読む側のためです。

【◯◯会議 要約】◯/◯(決定2・保留1・宿題3)

■ 決まったこと
・単価は据え置き。半年後に再協議
・納期は4月末目標。可否は弊社が◯/◯までに回答

■ 決まらなかったこと
・保守範囲(コスト増の懸念が未解消。次回、見積を添えて再協議)

■ 宿題
・[弊社] 4月納品の可否確認(〜◯/◯)
・[先方] 稟議の起案(〜◯/◯)

見出し行に件数を入れると、開く前に量が分かります。共有の仕方は議事録を送るメールの文面にまとめてあります。

やってはいけない捨て方

数字と期日を丸めない。 「5%程度」を「若干」、「水曜まで」を「近日中」にした時点で、要約は読み物にはなっても記録ではなくなります。あとで見返す理由の大半は金額と期日の確認です。

「決まらなかった」を落とさない。 要約から保留議題を消すと、会議の成果が実際より大きく見え、次回に同じ議論を最初からやり直すことになります。決まらなかったことは、決まったことと同格の成果です。発言の抜き書きにしない。 「Aさん『〜』Bさん『〜』」の羅列は、短くなっても要約ではありません。読む側にもう一度取捨選択をさせているだけです。

1回で仕上げないほうが、読みやすくなる

作っている側の実測をひとつ。要約は、書かせてから整えさせるほうが読みやすくなります。分量と体裁を1回の指示にまとめると、モデルはどちらも守りません。「2,000字前後で、箇条書き中心に」と頼んで、6,843字・箇条書き16個が返ってきたことがあります。残りは全部段落で、読み通せる形ではありませんでした。

同じモデルで、書く指示と整える指示を2回に分けたところ、4,114字・箇条書き49個になりました。中身は変えず、形だけを整え直す工程を挟んだだけです。人が要約するときも同じで、捨てる作業と整える作業を同時にやると、どちらも中途半端になります。手でやる場合も、書いてから整える順にすると速いはずです。

全部AIに任せられないのか

手順1をAIに、手順2〜3を人に割り振りましたが、2と3もAIにやらせること自体はできます。できますが、手順2の「翌週の自分が動けるか」は、会議の外の事情(この案件の重さ、社内の力学、前回の約束)で決まる判断なので、文字起こししか知らないAIには原理的に判断材料がありません。だから実務的な分担は、拾うのはAI、捨てるのは人です。1時間の会議なら、手順2〜3は5分で終わります。ゼロにはなりませんが、文字起こしを頭から読むのに比べれば別世界です。

Recoryの場合、録音を止めた時点で決定・未決・宿題に分かれた議事録が出るので、手順1が終わった状態から始まります。そこから先の「捨てる」は、上と同じく人の仕事です。


なぜAIの要約は薄くなるのかはこちら、議事録そのものの型はテンプレート8種にあります。

よくある質問

議事録の要約は何割くらいに縮めるのが適切ですか

割合で決めないでください。1時間の会議の文字起こしは3万字前後ありますが、翌週に要るのは決定・未決・宿題の3種類だけで、たいてい500字に収まります。「元の何割」ではなく「残す種類を決めて、それ以外を捨てる」と考えると迷いません。

AIに要約させるときのコツはありますか

「要約して」と頼まず、残すものを名指しすることです。決まったこと・決まらなかったこと・誰がいつまでに何をするかの3つだけを箇条書きで、金額と期日は原文のまま、該当が無い項目は「なし」と書く——ここまで指定すると、当たり障りのない要約になりません。

要約で消してはいけないものは何ですか

金額・期日・担当者の3つと、「決まらなかった」という事実です。とくに保留になった議題を要約から落とすと、次の会議で同じ議論を繰り返します。反対意見があった場合は、誰がではなく「何の懸念か」を1行残すと、あとで効きます。

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