その議事録サービスは、あなたの会議で学習するか
「AIに学習されない」は、どのサービスでも同じではありません。使うと明記している会社、全プランで使わないと決めた会社、上位プランでだけ外せる会社があります。国内外4社の原文を並べました。

「AIに学習されるのが不安」という質問はよく出ますが、答えはサービスごとにまったく違います。しかも、規約には書いてあります。読む場所さえ分かれば、契約前に確かめられます。
この記事の内容(9項目)
読む場所さえ分かれば、契約前に確かめられます。
主語が2つある
ここがいちばん間違えやすいところです。「学習に使いません」という文には、2つの違う意味があります。
| 主語 | 意味 |
|---|---|
| 外部のAI事業者 | 渡した先(OpenAIやGoogleなど)が学習に使わない |
| サービス提供者自身 | そのサービスの会社が、自社のモデルの学習に使わない |
前者だけを書いて、後者について触れていないことがあります。読む側は「学習に使わないと書いてある」と受け取りますが、約束されているのは前者だけ、という状態です。
実際に、両方の書き方があります
公式の原文を2つ挙げます。どちらも各社が自分で公開しているものです。
使うと明記している例。Otter.ai のセキュリティページには、こう書かれています。
Otter uses a proprietary method to de-identify user data before training our models so that an individual user cannot be identified. (Otterは、個人が特定されないよう、独自の方法で利用者のデータを匿名化したうえで自社のモデルを学習させています)
続けて「音声と文字起こしが人手で確認されることはなく、学習データは暗号化されている」とあります。隠していません。明記したうえで、匿名化と暗号化で扱っている、という説明です。使わないと明記している例。tl;dv のプライバシーポリシー9番目の項目にはこうあります。
Tldx Solutions GmbH does not use Customer Content, including meeting recordings, transcripts, notes, files, or other data processed through the Services, to train, fine-tune, or improve foundation models (当社は、会議の録音・文字起こし・メモ・ファイルを含む顧客のコンテンツを、基盤モデルの学習・微調整・改善に使用しません)
同じ「AI議事録サービス」でも、この点は正反対です。
国内のサービスでも、書き方が分かれます
海外の話に見えるかもしれませんが、日本語のサービスでも同じです。Notta のヘルプセンターには「AI学習について」という項目があり、こう書かれています。
Nottaに音声認識エンジンを提供する第三者の国内パートナー企業が、音声データと認識結果データからランダムにピックアップしたデータのみを、機密性に配慮した上で音声認識エンジンの学習(音響学習/言語学習)に利用します。
学習するのはNotta自身ではなく、音声認識エンジンの提供元です。ここが上で書いた「主語」の話にそのまま当たります。続けて、要約などのAI機能については別扱いだと明記されています。
いずれのプランでも音声認識以外のAI機能にAI学習にはデータを提供しておりません
そして、学習させない環境については条件が付きます。
「エンタープライズプラン」および「ビジネス Plus」では、企業のセキュリティポリシーやコンプライアンス要件に応じた「AI学習なし」の環境をご提供しております。
つまり、個人向けのプランでは文字起こしのぶんが学習の対象で、外すには法人の上位プランが必要、という構造です。文字起こしと要約でモデルも送り先も違うことがあるので、規約を読むときはどちらの処理の話かを見分けてください。同ページには、学習ありの場合は音声が日本国内のデータセンターに一旦保管され、学習なしの場合はメモリ上だけで保存されない、という説明も付いています。Rimo Voice は逆の方向へ舵を切っています。2025年10月1日のリリースノートにこうあります。
2025年10月1日より、Rimo Voiceでは、すべてのプランにおいて「AIモデルの学習にお客様データを利用しない」方針を正式に決定しました。
設定画面にあった「機械学習関連情報」の項目は非表示になり、設定のオンオフに関わらず一律オフになったと書かれています。Otolio(旧スマート書記)は、既定では使わないが同意すれば使えるという書き方です。案内ページには「お客様の許可なく機械学習は行っておりません」とあり、利用規約の第16条3項にはこうあります。
前項に定める情報の利用には、機械学習は含まれません。ただし、当社は、契約者の同意を得た場合には、当該情報を機械学習に用いることができるものとします。
LINE WORKS AiNote は、プランで分かれます。公式のプラン比較表では、フリープランの「データの学習利用」があり、ソロ以上がなしになっています。無料で試してそのまま使い続けると、ここに気づきません。
並べるとこうなります
| 学習に使うか | 条件 | |
|---|---|---|
| Otter.ai | 自社モデルの学習に使う(匿名化後) | オプトアウトの記載は確認できず |
| Notta | 文字起こしはエンジン提供元が使う/要約系は使わない | 外すには上位プラン |
| LINE WORKS AiNote | フリープランは使う/ソロ以上は使わない | プランで分かれる |
| Otolio(旧スマート書記) | 既定では使わない/同意すれば使える | 同意の有無 |
| Rimo Voice | 使わない | 全プラン・条件なし |
| tl;dv | 使わない | 全プラン・既定 |
同じカテゴリの製品で、5通りに分かれています。どれも各社が自分で公開している内容で、隠している会社はありません。書いてあるのに読まれていない、というのが実態に近い。
なお、この表は2026年9月1日時点で各社の公式ページを開いて確認したものだけを載せています。ここに無い会社は「使っていない」ではなく「確認していない」です。
匿名化してあれば十分か
「個人が特定できないよう処理してから学習に使う」という方式は、それ自体が不誠実というわけではありません。明記しているだけ誠実とも言えます。ただし、判断する側としては別の問題が残ります。会議の内容そのものが処理の対象になる点は変わりません。個人名が消えていても、「A社との取引条件」「未公表の製品計画」といった中身は残ります。社外に出せない話が含まれる会議では、匿名化されているかどうかとは別の判断が要ります。
オプトアウトできるかも見てください。学習の対象から外す設定があるのか、あるとしたらプランの条件が付くのか。ここが書かれていない場合、既定で対象だと考えるのが安全です。
確かめる場所
順に見てください。1. プライバシーポリシーで「train」「学習」を検索する。項目が立っていることもあれば、利用目的の箇条書きに1行だけ混ざっていることもあります。
- その文の主語を見る。自社なのか、外部の事業者なのか。
- セキュリティページも見る。プライバシーポリシーには書かず、セキュリティのFAQに書いている会社があります。
- 無料プランの条件を確かめる。有料では学習に使わないが、無料では使う、という切り分けをしているサービスがあります。無料で試してそのまま使い続けると、条件が変わっていることに気づきません。
ついでに、認証の書き方も見ておく
同じページを開いているなら、認証の表記も確かめる価値があります。たとえば Otter.ai のセキュリティページには、こう書かれています。学習の方針と並んで、いちばん誤読されやすい項目です。
Our security policies are created based on the ISO 27001/2 framework. (当社のセキュリティ方針は、ISO 27001/2 のフレームワークに基づいて作られています)
これは「ISO 27001 に基づいて方針を作った」であって、「ISO 27001 を取得した」ではありません。同じページで SOC 2 については「independent auditor(独立した監査人)」による報告書を維持していると書いており、書き分けられています。読む側も、この2つを分けて読む必要があります(確かめる5つの質問)。
うちの場合
Recoryは、文字起こしと議事録の生成に外部の事業者の有料APIを使っています。各社の有料APIでは、送信したデータがモデルの学習に使われません。これは各社の公式ドキュメントで確認できます。
自社のモデルは持っていないので、自社で学習させることもありません。構造上そうなっている、というだけの話です。送信先の事業者名と所在国はプライバシーポリシーに実名で列挙しています。認証は取得していないので書いていません(考え方)。
この項目が効く場面
稟議や社内の情報管理の確認で、いちばん具体的に答えられる項目がここです。「セキュリティは大丈夫か」は答えにくい質問ですが、「会議の内容がベンダーのAIの学習に使われるか」はイエスかノーで答えられます。しかも各社が公開しているので、確認に時間がかかりません。導入の検討を始めたら、まずここを全候補について並べてみてください。それだけで候補が減ります。
情報が外へ出る経路の分類は4つの経路、確認の手順は自分で確かめる5つの質問にまとめました。各社の記載は2026年9月1日時点で公式ページを開いて確認したものです。方針は変わることがあるので、契約前にご自身でもご確認ください。
よくある質問
AI議事録の音声は学習に使われますか
サービスによります。自社のモデルの学習に使うと公式に明記している会社もあれば、一切使わないと明記している会社もあります。「学習に使いません」と書かれていても、それが自社のモデルの話なのか、外部のAI事業者の話なのかで意味が変わります。
「学習に使わない」と書いてあれば安心ですか
どこについての約束かを確かめてください。外部のAI事業者に渡したデータが学習に使われないという意味であって、サービス提供者自身が使わないとは書かれていない場合があります。主語がどちらかで結論が変わります。
匿名化してあれば問題ありませんか
個人が特定されないよう処理したうえで学習に使う、という方式を採る会社があります。会議の内容そのものが処理の対象になる点は変わらないため、社外に出せない話が含まれる会議では、匿名化の有無とは別に判断が要ります。
AI議事録のセキュリティを、自分で確かめる5つの質問
「安全です」と書かないことにした——うちのセキュリティの考え方
AI議事録から情報が漏れる経路は4つ——順に塞ぐ